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鹿児島県立錦江湾高校でのSSH「ダイコン多様性研究コンソーシアム」夏の特別講義・実習「アブラナ科植物の多様性と自家不和合性」(8/18-19)

2009.08.19

 SSH九州地区発信の「ダイコン多様性研究コンソーシアム」(機関校:鹿児島県立錦江湾高校)の指導委員を務めることから、参加校が一堂に会し、研究プロジェクトの発表、評価、指導などを行うと共に、ダイコンの多様性を利用したいくつかの実験を指導し、講義を行ってきました。九州地区からの発信にもかかわらず、西日本全体とも言えるほど、多くの高校が参加しており、長野、岐阜、石川、大阪、奈良、和歌山、広島、愛媛、島根、佐賀、沖縄など14校におよぶSSH高を含む大型プロジェクトです。

 プロジェクトの特徴として、高校生がダイコンの異なる品種を栽培し、成長を調査してみるというのが、1つの骨格にあるところが、注目すべき点でした。小学校では、アサガオ、ヘチマ、イネなどたくさんの植物を育てた記憶がありますが、高校では、そんなことをすることもなく、ひたすら受験勉強に明け暮れたような気がします。そんな高校の時期に、植物の栽培をする、つまり、植物を育てることの大変さ、日々、どのような成長の違いがあるのか、いわゆる、表現型の日々の観察は、将来的には、フェノーム(Phenome)につながる着眼点を育成するよい試みかもしれません。今の高校生が研究者になる頃には、様々な植物・作物で簡単にゲノム配列を決めることができるでしょうし、遺伝子配列を決めることより、その機能をどうやって決めるのか、小さな違いはなぜ起こるのかということを考えることができるのではと思います。また、同じ品種を異なる環境(地方)で育てることで、その差異が生じ、その原因を考えるということは、これからの地球温暖化など、環境への適応を考える上でも大切かと思いました。

 もうひとつの特徴として、ダイコンの持つ形態的多様性、辛味成分の分析に加えて、栽培されているダイコンが自生化したハマダイコンも研究対象にし、耐塩性という点にも着目して、研究を展開するようです。それぞれの参加校で、地方色があり、身の回りの自然を生かした研究があることは、とても評価すべきことではないかと思いました。また一方で、高校SSHならではだと思いますが、DNAシークエンサーを有している高校もあり、ダイコンの多様性を遺伝子レベルで解析しようという、大学での研究かと見間違えるようなものもありました。

 実習では、耐塩性実験とその評価法、辛味成分の化学的分析、遺伝学的実験に欠かせない交配実験が、3つのグループに分かれて、実施され、この日のために準備をされ、プロジェクトを支えている錦江湾高校、鹿児島大学の先生方の配慮に感動しました。また、1日目の夜には、特別講演として、福井県立大の丸山先生から、「辛み成分と健康」ということで、アブラナ科植物が持つ「イソチアネート」系の辛味成分の特徴について話があり、生物と化学の融合研究も十分可能と思いました。

 講義・実習の合間には、それぞれの参加校の先生方・生徒さんたちと多くの議論ができ、秋以降の発展が期待できるプロジェクトであることを実感しました。また、出前講義でお会いできるのを楽しみにしております。

 なお、これらの研究は、近日中に「ダイコン多様性コンソーシアム」のHPで公開されるとか。情報を高校生間、高校生と大学教員の間で交換しながら、HPを成長させていくとか。まさに、ダイコンが生長するというような感じを受けて、とても楽しみになってきました。

http://daikon-c.com/

 12月の成果発表会での成果が今から楽しみです。

わたなべしるす

PS. 鹿児島といえば、桜島。桜島といえば、火山灰。火山灰のお出迎えに会うとは思いませんでした。これも何かのご縁かもしれません。。。。

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