日本土壌微生物学会 (2006年仙台大会)

市民のための公開シンポジウム

「大地の微生物:大いなる未知」

ポスター

場所:東北大学マルチメデイア教育研究棟  日時:2006年6月10日

共催:東北大学生命科学研究科

1.染谷 孝 「土の微生物の働きを探る」(佐賀大学)

2.服部 勉 「ひと粒の土に微生物多様性を探る」(東北大学名誉教授)

二人の講師の先生に聞き入りました。

熱心な質問が続きました。

----当日配布要旨-----

土の微生物の働きを探る

染谷 孝 (佐賀大学・農学部)  土の中には、いろいろな微生物がたくさん住みついていて、私たちが知らないうちに、植物を助けたり、環境をきれいにしたりと、さまざまな働きをしています。今日は彼らの魅力をちょっとだけ紹介します。 1. どんな生き物が微生物? ミジンコは? プランクトンは? キノコは? 蔵王の温泉にも? 2. 食品・お酒をかもす微生物 微生物がつくる食品は? 牛乳・牛肉はまさか? 3. 微生物の働きを探るには・・・培養法と顕鏡法 土壌1グラムに微生物(細菌)は何匹? 4. 植物と助け合う微生物 根粒菌 菌根菌 5. 環境を浄化する微生物 石油を分解する微生物 汚水を浄化する微生物 団子にして海にまくのは効果がある? 6. 生物36億年の歴史 微生物は生物界の大先輩 微生物による地球環境の改造

ひと粒の土に微生物多様性を探る

服部 勉 (アチック・ラボ) 土とは、一体何だろうか?その土には、驚くほどいろいろな細菌が住んでいるという。そんなにも多くの種類の細菌は、どのようにして土に住むようになったのか、また死滅もしないで生きつづけることが、どうして可能なのか。 土と微生物は不可分の関係にある。誰もがそう信じている。しかし土の誕生、土壌細菌の誕生ということになると、研究者の多くはまず岩石の風化がり、そこへ細菌がやってくる、と考える。本当に土と細菌は別 々の起源ルートを辿るのであろうか。 一粒の土にこだわり、こうした問いの解明を試みる。するとこれまで余り問題にされなかったことも、いろいろ出てくる。シルトは一体どんな役割をはたしているのか。ミクロ団粒はどのようにして形成されるのか、等々。いくつもの新しい研究の方向が生まれ、疑問が果 てしなくわいてくる。これが本講演の趣旨で、話の流れは以下のようである。 土の粒を水に沈めると、数秒後飛び散るように崩れる。シルト、ミクロ団粒、有機物片、粘土の濁り、または塊が現れる。まずミクロ団粒に注目し、形、内部構造を調べ、細菌を探す。そして鉱物化した姿MBP(mineralized bacteria particle)にであう。MBPを中心に、ミクロ団粒の崩壊‐形成サイクル、砂‐シルト‐ミクロ団粒連鎖過程、そして地殻-陸圏サイクル(土の形成)へとすすむ。時間スケールは、数年から数万年、数億年におよぶ。空間スケールは、ミリメートルからナノメートルへ、そして逆転し地下数十、数百キロメートル深部巨大空間へ、さらに宇宙空間へと広がる。進化し多様化する細菌の巨大グループがこれらのサイクルにどう合流し、どう生命活動を維持しているのか。探求の夢は広がる。

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