1 根粒菌ゲノムからの共生システムと生存戦略の解明

  


 
 根粒菌はマメ科植物と共生し窒素固定を行うグラム陰性の土壌細菌です。2000年から次々と根粒菌の全ゲノム塩基配列が決定されましたが、その最大の特徴は共生領域がまとまっていることにあります。ミヤコグサ根粒菌やダイズ根粒菌の共生遺伝子は、染色体上のtRNA遺伝子に挿入された共生アイランド上にほとんどが存在しています。アレイで網羅的な発現解析を行うと、共生状態の根粒菌(Bacteroid)では、共生アイランド全体が高く発現していることが分かり、新規の共生関連遺伝子が見つかって来ています。また、ダイズ根粒菌USDA110株のゲノム構造をよくよく見ると共生アイランドと似た構造(trn element)やGC含量の低い領域がたくさんあり、傷だらけに見えます。そこで、DNAアレイでダイズ根粒菌の種々尾菌株ゲノムを比較してみたことろ、予想通 りその傷に見える領域が菌株により激しく変化していました。腸内細菌はファージにより外来遺伝子を獲得しますが、根粒菌は別 の機構により共生アイランドも含んだ外来遺伝子獲得を盛んに行って痕跡が見えます。また、根粒菌の共生システムや生存戦略(生態機能)を知るために、(1)根粒菌ゲノムと共生窒素固定能の菌株毎の比較、(2) 背番号付き変異誘発法(Signature-tagged mutagenesis) による根粒菌の生態機能、(3)ゲノム塩基配列から予想される新規のエネルギー獲得(Thiosulfate oxidation)やリグニンモノマーなどの芳香族化合物の分解系を土壌環境との関わりで調べています。


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