4. 根粒菌脱窒系による地球環境保全と根粒圏微生物の窒素循環コミュニテイー

ー根粒菌のN2Oパラドックスと根粒根圏微生物の窒素循環系の解明ー

  

 ダイズ根粒菌は共生窒素固定細菌ですが、同時に脱窒遺伝子を持っておりが脱窒作用 (異化的硝酸還元: NO3 - NO2 - NO- NO2 - N2)を示します。ダイズ根粒菌は少なくとも、硝酸、亜硝酸、一酸化窒素の還元酵素遺伝子(napAB, nirK, norCB)を必ず保有し、さらにBJ1系統のみがN2O還元酵素遺伝子(nosZ)までの全脱窒遺伝子を保有していることを明らかにしました。脱窒は本来は酸素が欠乏した条件で働く嫌気呼吸系ですが、微好気的な根粒内でも発現しており、BJ1系統の根粒はN2Oを活発に取込むことが分かりました。したがって、ダイズ根粒菌BJ1系統の根粒は、地球温暖化およびオゾン層破壊を行うN2Oガスの土壌からの放出を抑える働きが期待されます。しかし、フィールドでは、ダイズなどのマメ科植物の根粒は逆にN2Oを発生させていることが知られています。このような実験室とフィールドにおける根粒(菌)のN2Oパラドックスは何故起こるのでしょうか。現在その原因としてを根粒圏微生物コミュニテイーの働きが疑われます。N2Oを発生させる微生物の特定を目的として、微生物生態学の新規の手法で研究を進めています。 さらに、 N2O還元活性の高い根粒菌の接種により、nosZ遺伝子がないダイズ根粒菌が多数生息している圃場からのN2Oガス放出を減らす技術への展開研究も行なっています。

 


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