東北大学・探求型「科学者の卵養成講座」(グローバルサイエンスキャンパス協定事業))

東北大学・探求型「科学者の卵養成講座」(グローバルサイエンスキャンパス協定事業)

科学者のひよこ

科学者のひよこ養成講座の活動を記録しています

2022.03.19

後日談(言いたかったこと、言えなかったこと)

 こんにちは、メンターの髙澤直己です。先日の地震、皆さん大丈夫でしたでしょうか? 今回は震源が深かったため3.11ほどの被害とはなりませんでしたが、死者や負傷者が出ました。謹んでお見舞い申し上げます。私は埼玉に居たため被害はありませんでしたが、改めて防災の大切さを実感しました。あの地震があと数日、あと数時間早かったらどうなっていたのか。想像するだけで恐ろしいです。また地震発生後、Twitterでは「人工地震」という言葉がトレンド入りしました(ここをクリック)。これもまた恐ろしいことです。理科教育、科学コミュニケーションの重要性も再認識させられました。

 さて今回で2回目の投稿になります。いやぁ、ついに終わってしまいました、発表会。「今年こそは対面でポスター発表を聞ける!」と思っていたのですが、残念ながら叶わず。。。現場から見守る形となりました。トラブル等で慌ただしい時もありましたが、なんとか発表会を終わらせることができ、良かったと思います。皆さん、お疲れさまでした! 私は司会進行役と、座談会のスピーカーとして参加させていただきました。私自身、あまりシリアスな雰囲気は好きではないので、所々「漫談」の要素を入れてしまいましたが、皆さんはどう感じたでしょうか? 「大学生のリアルを知れて面白かった」「漫談要素はいらない」などいろんなコメントがあると思います。ぜひブログで教えてください。

 この記事では1年間の取り組みを振り返りつつ、座談会での内容を少しだけ整理し直してみようと思います。

 

1)オンラインでの講義

 昨年と同様、この講座のスタートはオンライン形式で行われました。また顔と名前を覚えなきゃなぁと思いつつ、これからの講座がとても楽しみでした。講座が始まって最初の講義は伊藤先生の「DNAと遺伝子組換え植物」でした。高校の「生物」「生物基礎」の授業で遺伝子について学んでいなくても理解しやすかったのでないでしょうか。ディスカッションの時間において、私が担当したグループでは「植物とは何か」について整理しました。

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 ここでは「こんな植物ができたらいいな」と思う植物をデザインするというレポート課題を書く上で、アイデアを引き出すことを目的としました。何か新しい植物を創造するためには、植物が現在もっている特徴を捉え、植物がもっていない特徴を見つける必要があるからです。挙がった特徴に対して、自分の興味関心や問題意識を組み合わせることで、独創的なアイデアを生み出すことが出来ます。例えば「果肉が少ないトマト」とか「1種1株で1日分のビタミンを摂取できる野菜」とか。まぁアイデアが出来ても、それを実現するための科学的な方法を考えないと「絵に描いた餅」なんですけどね。

 ちなみに「植物とは何か」という問いには、2つの意図があります。1つ目はレポート課題を考えやすくするためです。これについては既に説明したので省略します。2つ目は「植物」という言葉が皆さんにとってなじみ深く、曖昧な言葉であるからです。先ほどの図からも分かる通り植物は複数の特徴をもつため、一言で「植物」全てを定義するのは困難です。またこの曖昧性・多義性は、皆さんの意見(正確には素朴概念)を可視化しやすい形式と言えます。つまり、自分がどんな見方で「植物」を捉えていたかを自分で知ることが出来るということです(これをメタ認知と言います)。それを複数人で行なえば、自分の見方を拡大することが出来るでしょう。これが今回の問いの意図です。

 本当は理科の生物分野、特に植物の分類についての単元で扱う問いなのですが、ここでも活用できるかなと思い使ってみました。実際の授業ではこの問いを学習前と学習後に回答してもらって、この単元をどこまで理解しているのか、学習前後で「植物」に対する概念にどんな変容が見られたのかを可視化するために使います。学校の授業でも「今日の授業で一番重要だと思ったこと、一番大切だと思ったこと」をメモする習慣をつけておくと、授業内容が理解しやすくなると思います。

 

2)アイスブレイクでの実践

 第2~5回の講座では、座学の前に受講生とメンターで交流する「アイスブレイク」の時間がありました。そこで私がやったことは大きく2つです。1つ目は自己紹介です。ここでは私がどんな授業を受けたかを一部ではありますが紹介しました。基本的には前回の記事(ここをクリック)と同じです。この記事で触れていないこととしては「指導案」ですかね。実は?皆さんの先生は授業のスケジュールを綿密に立てて各授業をつくったり、教材研究や実験の準備をしたりします。インターネットで調べてみると、いろいろ出てくると思うので教育に関心のある方は調べてみてください。

 2つ目は「すごろくトーク」です。これは発表会の座談会でも挙がりましたね。すごろくトークとは文字通り、すごろくをしながら対話をするというものです。

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すごろくの各マスには、対話のテーマとなる質問が書かれています。この質問は割と適当で、私が皆さんに聞いてみたいことを書いてみたという感じです。ただ意味のある質問もあります。それは4隅に書かれた「話を聴いて質問を一つ」「話を聴いていいところ探し」「話を聴いて共感したこと」の3つです。これはコミュニケーションをより充実したものにする時に重要となる要素です。この点は、皆さんの経験から納得していただけると思います。こうした工夫をして今後のディスカッションなどで皆さんが話しやすい環境づくりを行なっていました。皆さんも学校で実践してみてください。

 

*余談:「アサーション」ってご存知?

 皆さん、「アサーション」という言葉を聞いたことがありますか? アサーションとは、自分も相手も大切にする自己表現のことを言います。このアサーションについて書かれた本の中に、対話する上で心がける5つの事というのがあったので紹介します。この図の中で最も大切なのは、「『話す』ことと『聴く』ことは振り子の関係」だということです。皆さんがイメージする「ぎこちない会話」って、「話す」「聴く」どちらか一方に偏っていませんか? 自分はどっちに偏っているのかをまず知ること、その偏りを真ん中に持っていくためにはどうすれば良いか。そのヒントは日常会話で感じる「モヤモヤ」に隠されていたり。。。

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3)座談会をふり返って

 座談会では各メンターの自己紹介と受講生からの質疑応答がありました。私の自己紹介では、「私のことを覚えている人は、右手を挙げてください」と言った気がしますが、その時たくさんの手が挙がり、とても嬉しかったです。この講座ではメンターに対するアンケートが無いので、なかなか自分の取り組みに対する振り返りがしにくかったのですが、今回の挙手を受けて、ある程度は意味があったのかなと思います。本当は「私のブログ記事を読んだ人は~」と質問するつもりだったのですが、全体の場で個人のブログについて触れるのは良くないかもなと思い、質問内容を少し変えて「ディスカッションの時間では関わっていないのに、私の事を認知している人はいるか」を調べることにしました。ただ思ったより手の数が多くて、全部は見切れず。。。まぁ仕方ないです。(下の写真は事務局から提供していただきました。)

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 最初の方で、「どうしてメンター同士で仲がいいのか」という質問があったと思いますが、これは心理学の視点で考えると、「ピア・グループ」が当てはまるのではと思います。ピア・グループとは、お互いの性別や年齢、価値観、生き方などを尊重し合う関係のことです。このグループにいる人は「自分はどんなことが得意だったり苦手だったりするか」など自分の特性(もっといえば限界)を理解しており、かつ相手と自分とでは同じ部分と違う部分があるということを理解しています。ゆえに他者を意図的に見下したり、異質な人を集団から排除するということはしません。だから「仲がいい」のではないでしょうか。さらにあの4人は発表会中のトラブルを一緒に乗り越えた仲間、「同じ釜の飯を食う」関係だったこともあり、グループとしての意識がより高かったのではと思います。こうした色んな人と関われるというのが、この「科学者の卵養成講座」の魅力の1つですね。

 座談会の最後には、真面目な進路相談がありました。内容は割愛しますが、ああした二者択一のような問題というは割とよくあることかなと思います。そのうえで私が伝えたかったことは、「最初からどちらか一方だけに絞るのはもったいない」ということ、二者択一の根拠が「1人の『本当に大変』という意見」だけというのは危険であるということです。後者に関しては、そうした情報をより多く集めるために質問したと言われたら反論できないのですが、メンターに聞くこと以外にも情報収集をする方法はあります。例えばコレ(ここをクリック)です。これ以外にも学校の進路室や予備校のホームページ(教職員向けのサイトがあり、そこにアクセスするといろんな大学の受験体験記が書かれたレポートが出てくる)があります。たしか。こうしたオープンソースを利用して物事を多面的・客観的に分析しつつ、自分自身が何をやりたいのかも見つめ直すことで自然と答えがでてくるのではと思います。

 実際私は研究活動を続けつつ、受験勉強(面接とセンター試験がある推薦入試の対策)もやるという究極の選択をしました。日々の授業の勉強に加え、研究ポスターをかいたり、過去問を解いたりと常にタスクが積み重なっている状況だったので大変ではありましたが、「自分は今なにが出来ていて、何が出来ていないのか」を常に意識し、「それを効率的に出来るようにするためにはどうすればいいのか」を他の人に聞くなどして模索すれば、両方取ることも不可能ではないです。実際私は合格していますし。n=1だけど。とにかくムダな時間(余暇の時間とは限りません)を徹底的になくしていくことが大切です。ほら、こんなどうでもいい記事なんか読んでないで、はやく問題を解きなさい!

 

4)最後に

 本当に皆さん、1年間お疲れさまでした。約2年間この講座に携わってきましたが、どの受講生も自分が出来る範囲の努力をしていて素晴らしいなと感心しました。何か自分から言えることはないか、何か質問することはないか。私がメンターという仕事を続けられたのは、皆さんのその「学びに対する姿勢」の高さのおかげです。本当にありがとうございます。

 これで今年度の講座は終わりとなりますが、この講座を受ける前と後とで何か変化はありましたか? この講座では「科学」について物理学、薬学、生物学・農学、地学など様々な視点で考えてきました。ぜひレポートなどを見返してふり返ってみてください。

 最後に、私から質問があります。

 

あなたにとって「科学」とは何ですか?

 

 当然ながらこの問いに正解も誤答もありません。思い思いに答えてみてください。その答えの中に、あなたの「みらい」が隠されています。

 

P.S.ちょっと宣伝です。私が所属する埼玉大学では月1ペースで「星空☆観望会」をやっています(ここをクリック)。私も臨時スタッフとしてお手伝いをしています。特に埼玉県・東京都に住んでいる方は1回ぜひお越しください。天文学者とお話できたりします。写真も取り放題です(下の写真はオリオン座にある星雲をスマホで撮影したもの、サイトから引用)。

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投稿者:髙澤直己/ひよこさん1号

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