<具体的な研究テーマ>

I. 先端成長細胞が示す光環境応答反応の細胞生物学的研究


1)フシナシミドロの光屈性 

 フシナシミドロ(Vaucheria)は疎らに分岐する多核の筒状細胞よりなる.
  細胞の太さは50-100 µmで,各枝の先端で典型的な先端成長をする.すなわち,半球状の先端より基部では細胞壁の拡大がおこらないため,先端成長の機構を研究するためのモデル系となる.
 フシナシミドロの光屈性は光強度が低いときは光に向かう正の屈曲,光強度がある値より高くなると,光から逃れる負の屈曲が起こる.このような正負の反応の切り替えは高等植物では見られない. 
  フシナシミドロの光屈性は,光強度に対する応答制御機構を探る絶好の実験系である.
  私たちはすでに,細胞先端で青色光強度に依存して増加するカルシウムイオンの流入が,反応方向と大きさの制御機構に関係あることを示している(Kataoka 1988, 1990, 2000; Kataoka and Watanabe1992, 1993). カルシウムの関与を直接的に確かめ,その調節機構を明らかにする.

 

2)フシナシミドロの光形態形成反応

 フシナシミドロの細胞の一部を青色光で1時間以上照射すると,最短4時間で照射域の中央に新しく成長点が誘導され,原形質のつながった枝となる.これは多核細胞が最適な光条件を求めて生育域を広げることに役立っている.
  照射開始から枝が発生するまでの過程を調べると,a) 葉緑体の照射域への集合,b) 核をふくむ原形質の集合,c) 集合した核による新規遺伝子発現,が順に起こる.
  葉緑体と核の集合機構は異なること,核から微小管束がのびており,この微小管束が核を引っ張って移動することなどが明らかになった(Takahashi et al. 2001

 
http://nacos.com/jspp/,http://www.pcp.oupjournals.org/).
  核を移動させるモーター蛋白の実体や青色光に照射された照射域の核がどのような遺伝子を発現するのかを明らかにしたい.

 現在,フシナシミドロの青色光の光受容体を世界ではじめて発見した。それらが,青色光で誘導される枝発生、つまり光細胞形態形成反応の受容体であることをかを明らかにした。その光受容体は黄色植物で共通に働いているらしい。詳しいことはもうすぐ発表します。
 

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