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  片岡博尚(かたおかひろなお)      Hironao Kataoka, D.Sc.

   E-mail: kataoka@ige.tohoku.ac.jp

last updated: 20100301

NEW

3月: 最終講義 http://ir.library.tohoku.ac.jp/re/handle/10097/41158

2010年2月 東北大学環境科学研究科の環境ウェブラリに登録されました:

http://webrary.kankyo.tohoku.ac.jp/profiles/view/40/41

2009年9月東北大学史料館便り2009年9月号に「ハンス モーリッシュを訪ねて」と言う記事が載りました.

そこに収録されているインタビュー内容モーリッシュの1937年に録音された肉声もここから聞けます.

 

L:2000年頃;M:2007年3月松山での植物生理学会にて;R:2007年9月ドイツRottenburg近郊,Lilo Schide, 大川和秋氏と.

 滋賀県は忍者の里,甲賀市の生まれです(1947).神戸大学理学部生物学科卒(1969).植物細胞の生理学をやりたくて大学院は大阪大学理学研究科の神谷研へ.理学研究科生理学専攻,シャジクモのイオン制御・浸透圧制御を田沢仁先生のもとで研究しましたが,博士課程では神谷宣郎先生に与えられたフシナシミドロ(Vaucheria)の成長と分化の研究を始めました.神谷先生がくださった文献はほとんどすべてドイツ語で書かれたものでした.Oltmanns やSenn,Molisch やSachs から多くを学びました.当時チュービンゲンから阪大に来ていたSchilde夫妻からはドイツの文化や植物について多くを学びました.1975年にフシナシミドロの光屈性と光形態形成反応の研究で理学博士の学位をもらいました.1年余の学術振興会奨励研究員生活を経て,東北大学農学研究所に教務職員の職を得たのは1976年.農学研究所が遺伝生態研究センターに変わり,さらに大学院生命科学研究科に変遷する間に,6年の教務職員,11年の助手を経て助(准)教授に.農学と理学の狭間でもまれながらも,東北の雄大な自然の中で30年余,わが独創の砦であるフシナシミドロの光生物学と先端成長の研究を続けてきました.フシナシミドロは漢字で書けば無節藻.無節藻に節操守って30年,なあんちゃって. 専門分野は植物細胞生理学,光生物学,生物物理学.

 私たちはフシナシミドロの光形態形成反応を司る新奇の青色光受容体を世界で初めて発見しました.この受容体は転写因子bZIPドメインとFMNを結合する光感受ドメインLOVを1個ずつもつ小さいタンパクでした.当初、フシナシミドロにちなんだ名前を考えたのですが,ケイ藻のゲノムや褐藻ヒバマタや黄金色藻オクロモナスなど,他の黄色植物(葉緑体をもち,光合成をするstramenopiles)にもorthologsを見つけたので,黄色植物共通の光受容体にふさわしい名前AUREOCHROMEに改名しました.ラテン語で黄金色という意味のaureusと,ギリシャ語の色素(χρωμα)を結合したのです.この色素タンパクはFMNをクロモフォアとしているため黄色を帯びていますから,名前としてもぴったりでしょう? Aから始まるのもいいよね.2009年現在,大分世界に知られるようになってきましたよ.

 さらに重要なことは,AUREOCHROMEは青色光を吸収すると活性化する転写因子だということです.オーレオクロムは黄色植物に共通に含まれていますが,緑色植物にはありません.逆に,陸上植物(もちろん緑色植物です)の光屈性の受容体として有名なフォトトロピン(phototoropin,PHOT)は黄色植物にはありません.さらにおもしろい展開が期待できます.動物でも植物でも,任意の遺伝子の発現を青色光で制御するナノ分子スイッチをつくることができるかも知れません.望む遺伝子のプロモータに標的配列を導入し,オーレオクロムを働かせればいいはずです(特許2009-50175).日本から世界に発信する光受容体は,2002年にやはり東北大理学部出身の伊関峰生さんたちがミドリムシでみつけたPAC(光活性型アデニルシクラーゼ)以来2度目だと思います. 自分がフシナシミドロで発見し解析した青色光依存分枝誘導(BL-induced branching)の受容体を30年以上たって,自分たちの手で発見できたことは研究者冥利に尽きる喜びです.

 この成果は2007年11月,PNAS Vol.104に掲載されました. ロイター通信から世界中に発信され,日本の新聞やTVでも紹介されました. PNAS 105:7-8 (2008)にはAba LosiWolfgang GärtnerによるCommentary(Shedding (blue) light on algal gene expression)が掲載されています.オーレオクロムの概略は「遺伝」2007年11月号 (61:20-22) にも紹介しました.Peter Hegemann も彼のReview Algal Sensory Photoreceptors (Ann. Rev. Plant Biol. 2008.59:167-189)でAureochromeを紹介してくれています.2008年11月にはChris Bowlerらが羽状目ケイ藻Phaeodactylum tricornatumのゲノム解析を終え発表しましたNature 456:239-244) .彼らはその中で,ケイ藻Phaeodactylum は3つのオーレオクロムのオルソログをもつと書いていますが,3つのうち1つは,不思議なことにbZIPとLOVの位置が逆転しています.でも,それらのオーレオクロムの働きについてはまだなにもわかっていません. 

 私たちは種々の黄色植物のオーレオクロムの遺伝子を詳しく調べ,その系統樹を作りました (Ishikawa et al. 2009, Planta 230:543-552). オーレオクロムの進化を伺わせるおもしろいことが見つかってきました.  ひとつは,調べた全てのオーレオクロムの配列はひとつのクレイドに収まることがわかりました.これはオーレオクロムが,黄色植物の進化の早い時期にでき,それが,あまり変化しないで数億年以上保存されていることを意味します.さらに,オーレオクロムに含まれる青色光センサーであるLOVドメインはどれもよく似ていました.特に,FMNとの結合に必要な11個のアミノ酸残基のほとんどが保存されているので,オーレオクロムは全ての黄色植物で共通の重要な機能していると考えられます.

 さらに,オーレオクロムのLOVドメインは緑色植物の青色光受容体であるフォトトロピン(Phototropin)の2つのLOVドメインのうち,後ろのLOV2ドメインにより近いことがわかりました.LOVドメインはバクテリアにも含まれ,青色光受容体として働いていると考えられています.オーレオクロムもフォトトロピンも同じくLOVドメインを引き継いでいることから,ヒョッとすると,フォトトロピンの祖先はひとつしかLOVドメインをもっていなかったかも知れません.そのような原始的なフォトトロピンが将来どこかで見つかるかも知れませんぞ. オーレオクロムについてのもうすこし専門的な解説は最近発行された蛋白質 核酸 酵素 2009年 3月号(54:267-275)にも掲載されています.

 

L:東北大植物園に生えているVaucheria frigida. R: フシナシミドロの青色光反応, 1:正光屈性,2:負光屈,3:分枝誘導,4:先端膨張,5:赤色光は無効.

L:AUREOCHROMEの構造,青色光を吸収するとDNAの標的配列TGACGTに結合する. R: 褐藻にもAUREOCHROMEはある.左はヒバマタ(Fucus distichus),右はマコンブ(Laminaria japonica).2006年室蘭にて撮影.

L: フシナシミドロにおけるAUREOCHROME機能の仮説. R: 黄色植物(Stramenopile)中の光合成をする仲間にAUREOCHROMEはある.

 多核細胞としてもフシナシミドロは重要なモデルシステムとなります. フシナシミドロは体全体が1つの多核細胞でできています. つまり,細胞と個体の区別が付かないわけです. このような多核細胞内でたくさんの核はいったい何をしているのでしょう?このことに関するおもしろい発見をしています. たとえば,細胞の一部に青色光を照射すると,そこに突起が生じて,やがてそれは新しい枝となりますが,枝が出来るためには核が隣の領域から照射域に集合して,枝を造るために必要な遺伝子が発現するのです.

 ふつう多細胞植物は新しく形を作るために細胞分裂を繰り返す分裂組織(meristem)を作ります. フシナシミドロは次の細胞分裂を待つことなく,核をかき集めることで必要なmRNAの密度を増やしているとは考えられませんか?! 逆の見方をすれば,多細胞植物が分裂組織を作る真の目的は細胞を若返らせるためではなく,実はmRNAの空間密度を高めるためなのかもしれませんよ.  だとすると,フシナシミドロの「核を寄せて形を造る」(Forming a shape by gathering nuclei) というのは多核細胞ならではのすごい芸当でしょう? 10億年以上前にあまりにも完成した設計がなされたために,その後ほとんど修正する必要がなかったのかもしれませんぞ.

 数年前に多核細胞研究会を作りました.現在のメンバーは40人ばかりいます. 協力しておもしろい研究をして,将来は細胞生態学とでも称する学問分野を作るのが夢です. どうです,一緒にやりませんか? 似た研究会に国際細胞共生学会(InternationalSociety of Endocytobiology, ISE) というのがあることに気づき, さっそく入会しました。2007年9月10-14日,オーストリアのSalzburgに近いGmundenという風光明媚な町で10th International Colloquium on Endocytobiology and Symbiosis が開かれましたので,たまらず参加して, 以下のような題で話してきました.  A newly discovered blue light receptor of heterokonts. (Hironao Kataokao, Fumio Takahashi, Mié Ishikawa). 大変愉快な会でしたよ. 日本支部(JSE)は名古屋大の小保方さんや筑波大の石田さんとともに立ち上げようとしているところです.

L: ウイーン大学にあるHans Molischの胸像の前で. Molischは東北大学理学部生物学教室の創始者で,1922に来日,1925まで仙台に滞在. 帰国後ウイーン大学総長となった. 2007年9月21日撮影. M: GMUNDEN 市庁舎(Rathaus)前にて.  R: Excursionで寄ったKonrad Rolenz研究所前にて.ピンクのシャツはCavarier-Smith博士.

L:Abendrotに輝く岩山, Gmundenにて. R: Gmunden郊外, Todesgebirgeでみたメギの一種.

 追記ですが,私の敬愛するドイツ人の先生,Wolfgang Haupt先生が2005年10月に亡くなられました.先生は植物の運動生理学の父とも言うべき大家ですが,先生には大変多くのことを教えて頂きました.生物科学ニュースの2006年4月号HTML版に追悼文全文を載せてあります.2007年9月には故HAUPT先生の遺灰が葬られているKASSELの広大な樹木葬の森(FRIEDWALD)を訪ね, 案内してくれた末息のEike Bovenmannさん夫妻とその大きなブナの木の根本にセツブンソウ(Eranthis)の球根を植えてきました.  Eikeさんはお父さんにとてもよく似ていらっしゃいました。「この根のもとで新しい命が育つ」,と書かれた小さなプレートがブナの幹に打ち付けられているだけなのです. このような葬られ方もいいなと思いました. 

故Wolfgang Haupt先生 の樹木葬の樹, ヨーロッパブナ.

定年退職のご挨拶 20100331

先輩,友人の皆様へ          2010年3月13日             
 この3月末で,1976年6月からほぼ34年過ごした東北大学を定年退職することとなりました.6年間の教務職員時代を経てもずっと動かずに(動けずに)同じ大学で定年を迎えるのは,決してほめられたことではありません.それにはそれぞれ事情がありました.でも後悔はしません.そのときどきの決断が最良であったと信じております.禍福は糾える縄のごとし,です.思えば,小学校に入ったときからすし詰めの教室でした.中学も高校も競走競走の世界でした.大学に研究者として残れただけでも幸運でした.東北大に就職してからも最年少でした.ポストは2−3年上の戦中世代に埋められていましたから,転職の機会はほとんどゼロだったのです.
 赴任した東北大学農学研究所は広瀬川縁に立つ,明治時代は獄舎だったというみすぼらしい建物でしたが,翌年には片平のメインキャンパスの,昔,教育学部だったという建物を改装して引っ越しました.4部門のうち1部門は農業経済で,私の所属は農作災害という部門でした.私を神谷研から拾ってくれたのは,神谷研の初期の卒業生,西崎友一郎先生でした.農研は東北大学に寒冷地稲作を普及させる目的で1939年に設置された付置研究所でしたが,所長は東京に住んで,戦中は一度も仙台に来なかったそうです.1947年に新制農学部ができたとき,職員全部馘首にして解散という決定に対し,職員たちが東北大学最初の職員組合を結成して戦い,何とか存続を許されたと聞いています.それだけに農学に対する思い入れは強く,約20%の理学部出身者は窮屈な思いをしていました.研究所だから学部生はいないし,大学院にもよほどの変わり者でないと来てくれません.理学部出身の学生には園芸学や作物学といった農学研究科の入学試験は大変な障壁でした.自分の研究を宣伝する場もありません.そんな状況でしたから,一人だけでフシナシミドロの生物学という隙間産業で生き抜くしかないと覚悟を決めたものです.しかし,ありがたいことに,赴任後7−8年は何かと応援して下さる人のおかげで,毎年,科研費をいただくことができました(顕微鏡を買うだけの額しかなかったので,顕微鏡を何台も買うことになってしまいましたが).結果として,フシナシミドロを深く掘り下げるには適した境遇であったといえましょう.もし,多くの学生に囲まれ,講義に追われていましたら,Arabidopsisに手を染めざるを得なかったでしょう.そして,過労かノイローゼで今頃は死んでいたかもしれません.
 フシナシミドロとくらした40年の頼りない道を辿ってみたいと思います.自己満足,独りよがりの意見も入っていますが,どうぞ,そのまま受け入れてくださればありがたいと存じます.

神戸大学へ
 私は生来虚弱でしたが,それに加え,小学校高学年ころから斜視が進行し,そのせいもあって運動も苦手な,社会性に乏しい青年になっていました.将来は一人でやれること,科学者でなければ,小説家とか,芸術家になろうと考えたものです.両親の影響もあって植物は好きでしたから,植物学者になりたいと考えたのは神戸大学に入学した頃でした.ただ,競走がきらいでしたから,誰もやらないことをやりたかったのです.大半の学生が目を輝かせた遺伝子マッピングやDNA複製機構には何の興味も湧きませんでした.今思うに,遺伝学がきらいだったのは,斜視が遺伝することを知ったからか,あるいは数学が苦手だったからかもしれません.助教授になった時に斜視を手術しましたら,とたんに顕微鏡やステレオ写真が本当に立体的に見えることに感激しました.それに,性格も明るくなったと言われました.でも何かをなくしたような気もします.
 神戸大学の卒論研究は植物生理学の和田俊司先生につきました.当時の和田さんは厳しいという評判でした.当時の私は結構生意気でしたから,研究者になるのならアメリカ帰りで新進気鋭の和田さんしかいないと思ったのです.細胞壁ヘミセルロースの代謝回転が卒論のテーマでした.IAAがヘミセルロースのグルカン/グルクロン鎖をより高頻度に切断するという仕事です.大阪市大の増田芳雄先生を知ったのはそのころです.研究者になると決めていましたから,大学院選びが次の課題でした.和田先生は,「大阪大学に,原形質コロイドを分子機械とみなした研究をしておられる神谷先生がいる」と,大阪大学を勧めてくれました.
 
大阪大学へ
大阪大学大学院には生物学に生化学専攻と生理学専攻の2つがありました.迷わず,生理学専攻を受験し,豊中に移りました.神戸と同様,豊中も大学は移転したばかりで,砂ぼこりだらけでした.まさに高度成長期だったのですね.生理学専攻は定員10名のうち,阪大卒以外が半数を占めていました.当時は,最初の2ヶ月間は所属研究室を決定できませんでした.1-2週間毎に研究室を回るオリエンテーションの後で所属を決めたのです.私ははじめから神谷研以外に行くことは考えていませんでしたが,何と10人中5人(4人が阪大以外出身)が神谷研を選んだことには驚きました.当時京大はFaculty of Science,阪大はFactory of scienceという悪口がありました.神谷研は多くの死物学に囲まれた中の唯一のFacultyだったと思います.はやりの学問や産学協同から距離を置きたいと言う雰囲気が神谷研にはありました.他の研究室から神谷研は掃きだめだといわれていましたが,私たちは皆,我こそは掃きだめの鶴にならんとしていたのです.(そもそも,阪大の入試科目に生物はなかったのです.教養部に2人ほど分類学の先生がおられただけです.)
 折しも大学紛争の最中です.この世界的な動きは勿論ベトナム戦争が最大の原因だと確信します.日本から発進する米軍がベトナム人を殺しており,日本の産業界は戦争で儲ける死の商人である.そのような業界に就職することは戦争の加害者になるという論理です.私たちはアメリカからもたらされた戦後民主教育を受けた最初の世代です.これまで過酷な競争社会を生きてきて,卒業後はこれから日本の中心的働き手となる自分たちが,この愛憎半ばするアメリカという巨大な国にどう対処していくかという悩みのはけ口であったように思います.日本の大学の古い体制を打破するというよりも.でも,この問題はまた別の機会に考察しましょう.


田澤先生
 神谷先生は1969年当時56歳.遅くとも7年で博士号を取らないと先生は定年退職される;先生の指導を受けるには早ければ早いほどいい;しかし,先生は当時アメリカに招かれて留守になることも多く,帰国後は粘菌の運動を等尺・等張どちらにも切り換えて測定する装置をつくることに凝っておられました.これは私の興味からはやや遠かったため,直接の指導を仰ぐことができませんでした.同級生の吉本康明の話や,セミナーで細胞運動研究グループの隆盛を眺めながら,自らは,田澤仁先生のシャジクモのイオン・浸透圧制御に入れて貰いました.
 他のメンバーは3年上の中川茂男さんでした.修士の最初の一年は封鎖などでつぶれ,実験できたのは正味1年間でした.六甲山へ氷を割ってヒメフラスモ(Nitella flexilis)を取りに行きました.フラスモの節間細胞を縛り取り,transcellular osmosisやvacuolar perfusionをすることにもようやく慣れ,3人での議論にも何とかついて行けるようになりましたが,いかんせん3年上の先輩です.思いついたアイデアも一瞬先に指摘されてしまう.私は悩みました.このままでは芽を出す機会は巡ってこないのではないかと.数学に弱いのも将来を案じた一因です.それにしても,田澤さんは豪放磊落.斗酒尚辞せずと言う酒豪でした.私も酒は強かったのです.同級生の菊山宗弘と吉本康明を甲賀の実家に誘い,父親を交えて,20度以上の原酒を計4本空けたことがあります.後に加わった新免輝男と2代目四天王と名乗っていました.初代四天王は田澤仁,上坪英治,竹内郁夫,岩崎尚彦でした.
 田澤さんは,私たち学生に先生と呼ぶとことを許しませんでした「先生とは神谷先生だけである」ということでしたが,そのような儀礼的遠慮に留まらず,「おっさんと呼べ」と言われるのには,さすがに閉口したものです.でも,それは学生との距離を縮めたいという気持ちからであったことはよく分かります.毎日私たちといっしょに阪急石橋の“一力“でビール,焼き肉をともにし,そのあと,宇治まで帰られる毎日でした.そして翌日ちゃんと9時には大学に来ておられる.当時はコンビニもないので,10時から開店するスーパーで食材を買い,洗濯をすませてから登校すると,既に田澤さんが実験中で,中川さんに「学生が先生より遅く来るとは何事ぞ」,ときつく叱られたものです.でも,博士課程を田澤先生の元で過ごす自信はありませんでした. 
 
フシナシミドロに遭遇
 1971年,博士課程進学を機に,意を決して神谷先生の指導を受けたいと申し出ました.先生曰く,「えっ君,これからテーマを変えたいって? 困ったね.ふつうはある程度目処をつけたテーマを学生に与えるのだけど...もし,本当に一人だけでもやる覚悟があるんだったら,ここに昨年,アメリカから持って帰ったフシナシミドロという変わった藻類がある.皿で飼っておくと,水が蒸発するにしたがって何度も原形質分離が起こって,プロトプラストがどんどん小さくなる.最後にどうなるんだろう? この藻を使って何か見つけてみるかい? 日本でもアメリカでも知られていないが,ドイツ語で書かれた文献ならたくさんある.何か分かれば,いつでもいいからすぐ聞かせてくれたまえ.」 
 このようにして,私は神谷先生からD論のテーマでなく研究材料としてフシナシミドロを渡された1971年から,フシナシミドロにとりつかれて今日まで参りました.無菌化に成功し,青色光による分枝誘導をaccidentally に発見したのは1972-3年頃でした.当時,同じ大部屋にいた田澤先生が,「君,ようやく芽が出たな」とほめてくださった笑顔を今もよく覚えています.ふつう自分の所から逃げていった学生に目をかけることはないと思っていた私には,大変嬉しいことでした.神谷先生にその間具体的な指導をいただいた記憶はほとんどありませんが,神谷研にいるということ自体が喜びであり,興奮する毎日でした.神谷先生の一言,一言にPfeffer,Ku¨sterから引き継いだドイツ生物学の正統を感じたものです.田澤先生,永井玲子先生など先輩から聞く伝説となった神谷先生の言行にも興奮しました.私は仙台に来てからも,講義ではいつも神谷先生の研究の意義を話すことにしています.

フシナシミドロの光反応
 フシナシミドロの正光屈性の解析は先端成長細胞では最初のものでした. 細胞先端を参照光と試験光の2種類の単色光で照らし分け,どちらへも曲がらない時の試験光の強度から作用スペクトルを求める方法(縦半照明法と平衡法)を考えつきました.後で調べて見ると,1920年代にJ. Buderが似た方法を報告していましたが, Haupt先生やBriggs先生,古谷先生など,多くの先輩には独自に考えついて,新たな知見を得たと好意的に評価していただきました.青色光による分枝誘導も当時高く評価されましたが,その評価は神谷研の仕事だと見なされたためでもあります.Haupt先生は1978年のゴードン会議(GRC)に招待してくださり,世界の光生物学者引き合わせてくださいました.国際的な光生物研究者とみなされた自覚はその後のどん底時代にもフシナシミドロを続けて行く大きな心の支えになりました.この青色光による分枝誘導,つまり,光細胞形態形成反応の研究が,32年後にオーレオクロムの発見につながったのです.
 PCP 1975に2本の論文(これがD論です)を書くとき,神谷先生は自分のお名前を入れることを許してくださいませんでした.私はすこし不満でした.でもその時,先生は,「これは,君が一人で見つけ,解析してまとめた仕事だ.私は何も指導していない.指導しない仕事に名を連ねないことはドイツではあたりまえのことだ」といわれました.しかし一方で,原稿の校正から英語まで,原稿が真っ赤になるほど直して下さいました.たぶん,神谷美恵子先生もお家で直してくださったのではないかと思います.彼女の著作中に“Nの学生の英語を直した”と言う記述があります.(昨年11月30日,天皇・皇后両陛下と一言お話しする機会がありました.私は皇后陛下に神谷美恵子先生のことを話しましたら,美智子様のお顔が急に輝いて,すばらしく暖かいご家族でした.懐かしいです,とおっしゃいました) 当時神谷研に滞在していた故James CW Chen (Univ. PEN)も論文作成を助けてくださいましたが,acknowledgeすることを頑強に拒否されました.彼も神谷先生を崇敬する一人でした.
 
東北大へ
 神谷研はそんな雰囲気でしたから,神谷研出身の西崎先生に拾って貰ったとき,西崎先生も「折角出た芽をつぶしてはいけない.あなたは自分の科学を伸ばすべきである」と,フシナシミドロを続けることを応援してくださいました.あとは皆様ご存じのとおりで,曲折を経ながら今日に至りました.その間には,光屈性にcAMPが関与することの発見,モーターと黒プラスチック製下敷きで作った回転翼をつけた間欠照射装置とデジタルIC 7400や7407 などで自作したタコメーターを使って,フシナシミドロ光屈性における“閾値下刺激の累積効果”や“記憶”を調べたり,ドイツKarlsruheに行ってWeisenseelさんとの振動電極法を使った共同研究で,先端成長の青色光による一時的促進がCa2+流入によることを見つけたこと,正から負への光屈性の逆転がやはり,Ca2+の過剰流入によることを基礎生物学研究所の渡辺正勝さんと研究したりしたことがありました.どれもまだ道半ばではありますが.
 1996年から2000年まで私のところでフシナシミドロの核の運動と分裂波を研究し,博士号をとった高橋文雄君は基礎生物学研究所を兼担しておられた和田正三先生に拾われ,シダの研究の傍ら,フシナシミドロからLOVドメインを取ることを勧めてもらいました.その結果,多くの方の助けを得ておかげでオーレオクロムの発見ができたのです.和田先生とは古いつきあいですが,次の様なことを思い出しました.1987年,Berlin(当時まだ,西ベルリンでしたが)での国際植物学会議(IBC)の最中,和田先生と地下鉄ホーム でいっしょになったとき,「僕はずっとシダをメインに生きていきたい」と言われたことを思い出します.「君もフシナシミドロを続けなさい」という意味だったのだと信じています.
 Briggs先生も1963年ころから,陸上植物の光屈性の研究を続け,ほぼ,40年後にフォトトロピンを発見されました.昨年12月,Winslow Briggs先生の国際生物学賞受賞記念シンポジウム(京都)の折,1978年(GRC, Santa Barbara)以来,久しぶりにゆっくりとBriggs先生と話すことができました.そして,2人で,自分の発見した反応の光受容体を自分たちで見つける幸運と幸福を喜び合いました.彼は「You still have 20 years」と言われましたが.

これからのこと
 定年後の行く先は決まっておりません.自然科学分野では定年後研究を続けることは事実上無理でしょう.Briggs先生は,「君はずっと若者だと思っていたのに,もう定年とは!私は日本の定年制は間違っているとかねがね思っているんだよ.でも,古谷さんや和田さんのように定年後もactiveに研究している人もいるじゃないか.外国へ行くのもアリじゃないかね」と言ってくださいます.でも,現実は厳しいですね.
 私の最もやりたいことは多核細胞の生物学です.フシナシミドロ以外にも多くの多核細胞があります.いったい,多核細胞は

1)どのようにして維持されているのか? 2)どう進化したのか? 3)どのような生態的有利性をもっているのか? 4)単核細胞とどこが違うのか? 5)細胞質分裂の機能を捨てたのか,保持しているのか?

といった疑問が湧きます.こうした疑問は,どうしたら解けるのでしょうか? いくら,多細胞生物を研究しても多核細胞のしくみは解けません.逆に,多核細胞の研究から,多細胞生物の気づかれない謎がとけるかもしれません.例えば,マメの茎の伸長域では,柔組織の円盤が重なっているとみなせます.その円盤の放射方向には原形質連絡が発達しています.つまり,機能的な多核細胞となっているのです.フシナシミドロが獲得した多核細胞ならではのつぎのような生きるしくみがあります.

1)核集合による形態形成--核を寄せて形を作る(分裂組織を作る必要がない),2)非常に低い水透過性--低い膨圧とともに傷害修復に必須(水が急速流入しないので細胞は破裂しない)3)核分裂波(mitotic wave)(先端の若い核がリーダーシップをにぎる).

1)は面白い仮説を含んでいます.多細胞植物が新しい形を作るには分裂組織を作らないといけません.その真の理由は,必要なmRNA密度を確保するには,核をかき寄せることができないので,仕方なく細胞分裂をしているのだと解釈できないでしょうか? 私の英文のHPに“多核細胞は共和制か封建制か,独裁体制か”と書いたのを読んだイギリスの人が,「面白い!」とメールくれたことがあります.さすがイギリス人ですね.現段階では茫洋とした話で,とても科学の俎上にのせられる代物ではありませんが,20年後には重要なテーマになっているかも知れません.いえ,テーマにしてくださるのは皆様かも知れません.
 もう一つ家ででもできることですが,Gustav Senn 1908“Die Gestalts- und Lageveränderung der Pflanzen-Chromatophoren” (葉緑体の変形と移動)とG.Haberlandt 1901 “Sinnesorgane im Pflanzenreich - zur Perzeption mechanischer Reize”(植物の感覚器官)を翻訳したいと考えています.筆が遅ければ急かしてください.


3月13日のこと
 科研費班員に入れていただいたり,貴重な物品を貸していただいたり,研究会に呼んでいただいたり,有益な技術,科学的知識の供与,酒の相手,果てには救急車に同乗していただいたりと,皆様は私にとって大恩人です.何とお礼を申し上げてよいやらわかりません.私をこれまで支えてくださった全ての方に心から感謝申し上げます.もし口が利ければ,フシナシミドロからも感謝申し上げることでしょう.私から皆様のもとに駆けつけ,お礼にお伺いすべきところですが,お許し下さい.
 高橋文雄君は3月までしか仙台におられません.その後の行き先が決まっていないのが何とも心掛かりですが,その彼が私の昔の友人と研究室の卒業生を中心に呼びかけて,3月13日に“片岡をしのぶ会“か”生前葬”を企画してくれました.多忙な時期に遠方からお出でくださった方には申し訳ない気持ちで一杯です.田澤先生や和田俊司先生など,もっと昔からお世話になった大先生たちを呼びつける無礼はしたくありませんので,声をおかけしなかった先生方は,そのあたりの事情をどうかご斟酌下さいませ.
 Das ist nur einmal, das kommt nicht wieder という歌がありましたね.“会議は踊る(Der Kongress tanzt)”でしたっけ? 皆さんに一堂のもとでお会いするのはこれが最初で最後になるかも知れません.今日の科学の現状を見るにつけ,私と同様の隙間産業に生きながら,only oneの科学を創ってこられた方々が集まる機会はそうざらにはありません.その意味で皆さんは高橋文雄・石川美恵はじめ,数少ない片岡研出身の若い人達の希望の星として,大きな心の支えになることでしょう.どうぞ彼らを今後ともよろしくご指導いただきたいと願っております.
 お金のないときに私の部屋に来た学生さん(BremenからやってきたDetlev Henschel君も)や,中国青島から数ヶ月来られた段徳麟さんにはほとんど何もしてあげられませんでした.お許し下さい.でも,神谷研ではこう言ったものです:「既製品の装置を使ったのでは既製品のデータしか得られない」と.あるいは「足らぬ,足らぬは工夫が足らぬ」と.おっと,これはあの愚かな戦争中の軍部のポスターでしたね. 銃後の守りとされた女性たちに“工”の字を消されたという.

  長々とおつきあいさせてしまいました.お後がよろしいようで.5月には神谷先生が1939年ドイツを離れる直前に実習で滞在されていたバルト海のHiddennseeという島に行く機会ができました.神谷先生の著書”なにわ塾叢書”をもっていきます.
片岡博尚


  最後に田澤先生の訳になる私の好きなPfefferの言葉を挙げておきましょう.
現象の多様性の上にできるだけ大きく視野を広げることは,常に,さらにより深く掘り下げるための最も重要な手段である(W. ペッファー)
Die Ausdehnung des Gesichtkreises auf eine möglichst grosse Mannigfaltigkeit der Erscheinungen ist stets eines der wichtigsten Werkzeuge, um tiefer und tiefer einzudringen (W. Pfeffer)

共同研究者(2009年度)

 

2009年 6月Düsseldorfにて 左より石川美恵,高橋文雄,Detlev henschel,片岡博尚

 

高橋文雄 (Takahashi, Fumio) PD   
 

千葉県成田市出身.1995年山形大学大学院理学研究科修士課程修了,1年間片岡の研究室での研究生を経て1996年4月-2000年3月まで東北大学農学研究科博士後期課程に在籍.農学博士号取得.博士論文は「多核細胞における細胞形態形成反応の解析」.その 後,理化学研究所フォトダイナミクスセンター研究員,基礎生物学研究所PD (和田正三先生),東京大学理学部の野崎久義先生のもとでのPDを経て2006年4月古巣にPDとして帰ってきました.特定領域研究「黄色植物で発見された新奇bZIP-LOV蛋白質の構造と機能の解明」に4年間の予定で参加します.武者修行中に分子生物学と分子系統学をマスターしました.オーレオクロムを日本から発信できてとても幸福です. 真核生物の進化を光受容体の進化からみるとおもしろい研究分野になるだろうと,今,とても燃えてます. これからが大変だけどやりがいがあるだろう.  研究の場を与えてください.

石川美恵 (Ishikawa, Mie)D2 (JSPS 特別研究院 2010年4月-12月までドイツMühlheimのMax Planck Institutに滞在)
 

宮城県登米市出身.2006年山形大学理学部卒業.二次共生藻にひかれて東北大の片岡研へ来ました.2006年4月より修士課程.褐藻Fucusや黄金色藻オクロモナス, ラフィド藻 にもオルソログがあることを見つけて,とても興奮しています.卵菌にはなさそう.これってすごく面白くない?オーレオクロムはいつどこで生まれたんでしょう? 修士論文 Occurence of a blue-light receptor, AUREOCHROME in Stramenopiles.  2008年4月から博士課程.幸い学振D1に採用されました.親のすねかじりからしばらく(?)脱却できてうれしい.博士課程ではオーレオクロムがストラメノパイルの生活のなかでどんな働きをしているかを探りたいですが,さらに視野を広げて,新しい,誰も気づかなかったような世界にこぎ出したいな.

これまでの学生

 

山岸隆博 (Yamagishi, Takahahiro) 2001-2004 博士課程に在籍
  生粋の山形っ子.2001年山形大学大学院理学研究科修士課程修了,2004年3月 博士(生命科学)取得 博士論文は「Nuclear reprogramming in Bryopsis plumosa as demonstrated by artificial fusion of gametophytic and sporophytic protoplasts」.ハネモの配偶体と胞子体の形が違うのはエピジェネティックな遺伝子発現制御によることを見つけました.神戸大理学部川井教授のところで,褐藻の鞭毛のマスチゴネマタンパクを単離し解析しています.最近、川井研で助教になりました。
山口公志 (Yamaguchi, Koji)2002-2004  修士課程に在籍   
  山梨県出身.2002年山形大学理学部生物学科卒業,修士論文は「フシナシミドロの低い水透過性とその水チャンネルの特徴づけ」.2004年4月から草野教授のラボへ移動.2007年3月Dr取得.植物の耐干性とポリアミンの役割を探っています.2007年10月から奈良先端大でPD.
山形大輔 (Yamagata Daisuke) 2002-2004 同 修士課程に在籍
  秋田県角館出身.2002年山形大学理学部生物学科卒業,修士論文は「黄色植物(Vaucheria terrestris sensu Goetz) の青色光受容体の探索」.現在は秋田県で公務員.いつか研究生活に戻ることを考えていたりして..

具体的な研究テーマ

I. 先端成長細胞が示す光環境応答反応の細胞生物学的研究
II. フシナシミドロやハネモなどを含む多核細胞の生物学
III. 浸透制御に用いるイオン種から見た黄色植物と緑色植物の系統関係 です.

多核細胞の生物学についてもっと知りたい方は

無節藻の生物学と多核細胞研究会および,
フシナシミドロの光屈性と光形態形成
(英語版は Phototropism and photomorphogenesis of Vaucheria をお読みください.
 

原著論文リスト

  1. Nakagawa, S., Kataoka, H., Tazawa, M. 1974. Osmotic and ionic regulation in Nitella. Plant Cell Physiol. 15:457-468. 
  2. Kataoka, H. 1975a. Phototropism in Vaucheria geminata I. The action spectrum. Plant Cell Physiol. 16:427-437.
  3. Kataoka, H. 1975b. Phototropism in Vaucheria geminata II. The mechanism of bending and branching. Plant Cell Physiol. 16:439-448.
  4. Kataoka, H. 1977a. Phototropic sensitivity in Vaucheria geminata regulated by 3', 5'-cyclic AMP. Plant Cell Physiol. 18:431-440.
  5. Kataoka, H. 1977b. Second positive and negative phototropism in Vaucheria geminata.  Plant Cell Physiol. 18:473-476.
  6. Kataoka, H. 1979. Phototropic response of Vaucheria geminata to intermittent blue light stimuli. Plant Physiol. 63: 1107-1110.
  7. Kataoka, H., Nakagawa, S., Hayama, T., Tazawa, M. 1979. Ion movements induced by transcellular osmosis in Nitella flexilis. Protoplasma 99:179-187.
  8. Kataoka, H. 1981. Expansion of Vaucheria cell apex caused by blue or red light. Plant Cell Physiol. 22:583-595. 
  9. Kataoka, H. 1982. Colchicine-induced expansion of Vaucheria cell apex. Alteration from isotropic to transversally anisotropic growth. Bot. Mag. Tokyo 95:317-330.
  10. Kataoka, H. 1987. The light growth response of Vaucheria. A conditio sine qua non of the phototropic response? Plant Cell Physiol. 28:61-71.
  11. Kataoka, H. 1988. Negative phototropism in Vaucheria terrestris regulated by calcium I. Dependence on background blue light and external calcium concentration. Plant Cell Physiol. 29:1323-1330.
  12. Kataoka, H., Weisenseel, M. H. 1988. Blue light promotes ionic current influx at the growing apex of Vaucheria terrestris. Planta 173:490-499.  
  13. Kataoka, H. 1990. Negative phototropism in Vaucheria terrestris regulated by calcium II.Inhibition by Ca2+-channel blockers and mimesis by A23187. Plant Cell Physiol. 31:933-940.
  14. Henschel, D., Kataoka, H., Kirst, G. O. 1991. Osmotic acclimation of the brackish water Xanthophyceae, Vaucheria  dichotoma (L.) MARTIUS: Inorganic ion composition and amino acids. Bot. Mag. Tokyo 104: 283-295.
  15. Kataoka, H., Watanabe, M. 1993. Negative phototropism in Vaucheria terrestris regulated by calcium III.  The role of calcium characterized by use of a high-power argon-ion laser as the source of unilateral blue light. Plant Cell Physiol. 34:737-744.
  16. Lazarova, G., Ootaki, T., Isono, K., Kataoka, H. 1994. Phototropism in Yeast: a new phenomenon to explore blue light-induced responses. Z. Naturforsch. 49C: 751-756.
  17. Mineyuki, Y., Kataoka, H., Masuda, Y., Nagai, R. 1995. Dynamic changes in the actin cytoskeleton during the high-fluence rate response of the Mougeotia chloroplast. Protoplasma 185: 222-229.
  18. Yamazaki, Y., Kataoka, H., Miyazaki, A., Ootaki, T. 1996. Action spectra for photoinhibition of sexual development in Phycomyces blakesleeanus. Photochem. Photobiol. 1996:387-392.
  19. Sasaki, H., Kataoka, H., Kamiya, M., Kawai, H. 1999. Accumulation of sulfuric acid In Dictyotales (Phaeophyceae): taxonomic distribution and chromatography of cell extracts. J. Phycol. 35:732-739.
  20. Kataoka, H., Takahashi, F., Ootaki, T. 2000. Bimodal polarotropism of Vaucheria to polarized blue light: parallel polarotropism at high fluence rate corresponds to negative polarotropism. J. Plant Res. 113:1-10.
  21. Yamazaki, Y., Miyazaki, A., Kataoka, H., Ootaki, T. (2001) Effects of chemical compounds and nitrogen sources for zygospore development in Phycomyces blakesleeanus. Mycoscience 42:11-17.
  22. Takahashi , F., Hishinuma, T., Kataoka, H. (2001) Blue light-induced branching in Vaucheria. Requirement of nuclear accumulation in the irradiated region. Plant Cell Physiol. 42: 274-285.
  23. Yamagishi, T., Hishinuma, T., Kataoka, H. (2003) Bicarbonate enhances synchronous division of the giant nuclei of sporophytes in Bryopsis plumosa. J. Plant Res. 116:295-300.
  24. Takahashi, F., Yamaguchi , K., Hishinuma, T., Kataoka, H. (2003) Mitosis and mitotic wave propagataion in the coenocytic alga, Vaucheria terrestris sensu Goetz.  J. Plant Res.116:381-388.
  25. Sasaki, H., Kataoka, H., Murakami, A., Kawai, H. (2004) Inorganic ion compositions in brown algae, with special reference to sulfuric acid ion accumulations.  Hydrobiologia 512:255-262 .
  26. Yamagishi, T., Hishinuma, T., Kataoka, H. (2004) Novel sporophyte-like plants are regenerated from protoplasts fused between sporophytic and gametophytic protoplasts of Bryopsis plumosa. Planta 219:253-260.
  27. Shi, C., Kataoka, H., Duan, D. (2005) Effects of blue light on gametophyte development of Laminaria japonica (Laminariales, Phaeophyta). Chinese J. Oceanology and Limnology 23:323-329.
  28. Takahashi, F., Okabe, Y., Sekimoto, H., Ito, M., Kataoka, H., Nozaki, H. (2007) Origin of the secondary plastids of Euglenophyta and Chlorarachniophyta as revealed by an analysis of the plastid-targeting nuclear-encoded gene psbO. J. Phycol. 43 :1302-1309.
  29. Takahashi, F., Yamagata, D., Ishikawa, M., Fukamatsu, Y., Ogura, Y., Kasahara, M., Kiyosue, T., Kikuyama, M., Wada, M., Kataoka, H. (2007) AUREOCHROME, a photoreceptor required for photomorphogenesis in stramenopiles.  PNAS 104 (49):19625-19630.
  30. Ishikawa, M., Takahashi, F., Nozaki, H., Nagasato, C., Motomura, T., Kataoka, H. (2009) Distribution and phylogeny of the blue-light receptors aureochromes in eukaryotes.  Planta 230:543-552.

著書・総説: 光屈性や光形態形成反応などの植物の環境応答反応についてもっと詳しく知りたい方は以下の教科書や参考書をお読みください.太字は特に重要な著作です。

  1. Kataoka, H. (1980) Phototropism: determination of an action spectrum in a tip-growing cell. In  Handbook of Phycological Methods III. Developmental & Cytological Methods. Gantt, E. ed., Cambridge Univ. Press. Cambridge., pp. 205-218.  

  2. 片岡博尚.(1981) 下等緑色植物の光屈性.In 光運動反応.古谷雅雅樹編.pp.147-176.共立出版.東京.

  3. 片岡博尚.(1981) 葉緑体の定位運動.In 光運動反応.古谷雅樹編. pp. 206-241.  共立出版.東京.

  4. 片岡博尚.(1981) 屈性反応. In 植物生理学8, 環境情報.古谷雅樹編.pp. 211-245. 朝倉書店.東京.

  5. 片岡博尚.(1983) 屈性運動.In 実験生物学講座16.植物生理学II.勝見允行,pp. 254-265. 丸善,東京.

  6. Kataoka, H. (1989) Phototropic inversion as regulated by external Ca-concentration. In  Plant Water Relations and Growth under Stress. Tazawa, M. et al. eds., Myu K. K., Osaka.

  7. 片岡博尚.(1989) 藻類の光屈性:屈曲方向はどうして決まるか.海洋 21:335-34.

  8. 片岡博尚.(1990)下等植物の重力反応.In 宇宙植物学の課題−植物の重力反応.菅 洋編.pp. 1-34学会出版センター.東京.

  9. 片岡博尚.(1991) 屈性.In 現代植物生理学4.環境応答.新免輝男編.pp. 64-84. 朝倉書店.東京.

  10. 片岡博尚.(1991) 屈光性発現のシグナルとしてのカルシウム.細胞 23: 252-258.

  11. Kataoka, H., Watanabe, M.  (1992) Ca2+ mediates the phototropic inversion of a tip-growing alga, Vaucheria, ---a laser experiment. In Plant Cell Walls as Biopolymers with Physiological Functions. Masuda, Y. ed. Yamada Science Foundation, Osaka, pp. 382-384. 

  12. 片岡博尚,伊藤勝雄,Henschel, Detlev.(1992)  藻類を用いた河口ならびに沿岸領域の重金属イオンによる環境汚染の除去 .  地球環境研究 20: 1-33.

  13. 片岡博尚.(1996) 仮根の重力屈性と重力感受.In 根の事典.森田茂紀ら編.pp. 51-53, 朝倉書店,東京.

  14. 片岡博尚. (1999) フシナシミドロにおける屈光性と分枝誘導の光シグナリング. In 光シグナルトランスダクション. 蓮沼仰嗣・木村成道・徳永史生編.pp. 80-88.シュプリンガー東京,東京.

  15. 片岡博尚. (2001) 光走性と光屈性.In 朝倉植物生理学講座5.環境応答. 寺島一郎編.pp. 17-39, 朝倉書店.東京.

  16. 片岡博尚.(2002)光屈性-カルシウムが制御する屈曲方向-.In 21世紀初頭の藻学の現況.堀輝三,大野正夫,堀口健雄   編, pp. 37-40, 日本藻類学会.

  17. 片岡博尚.(2002)多核細胞の光形態形成-核を寄せて形を作る.   In   21世紀初頭の藻学の現況.堀輝三,大野正夫,堀口健雄   編,pp. 41-44, 日本藻類学会.

  18. 片岡博尚,高橋文雄,石川美恵 (2007)フシナシミドロ光形態形成運動の青色光受容体.遺伝 11月号 61: 20-22, NTS 出版.
  19. 片岡博尚,高橋文雄,石川美恵 (2009)黄色植物専用の青色光受容体オーレオクロム。蛋白質核酸酵素3月号54:267-275
翻訳
  1. 片岡博尚 1998.モア−・ショップファ− 植物生理学31章 運動の生理学  駒嶺穆 監修.pp. 485-525.Springer Verlag Tokyo[Mohr /Schopfer Plant Physiology, Chapter 31. Physiology of Movement.]Springer Verlag (この章は直接ドイツ語から翻訳した)

  2. 片岡博尚 2003.簡単な道具でできる植物の実験と観察 (Molisch/ Dobat 1979 Botaniche Versuche und Beobachtungen mit einfachen Mitteln. 5- Auflage, Gustav Fischer Verlag) ドイツ語原書から完訳,訳注,図版つき 非売品 PDF file 224ページ  

    希望者に無料で差し上げます
    kataoka@ige.tohoku.ac.jpへメールください

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