アガパンサス(Agapanthus praecox ssp. orientalis )

 

アガパンサス(アガパンサス科)Agapanthus praecox ssp. orientalis

 アガパンサスという名前はギリシャ語で愛(アガパ)の花(アントス)という意味を持っています。日本には明治時代中期に渡来しました。草丈は50cm〜1mほどで、花期は6月〜7月です。花茎は長く伸び、その先端に上の写真のような花をたくさんつけます。
 双子葉植物の花はがく片、花弁、雄蕊、心皮の4つの器官 から構成され、これらの器官のアイデンティティーはA・B・C3つのクラスの遺伝子群の働きによって決定されています(ABC モデル)。 一方、チューリップのようなユリ科植物の花は双子葉植物の花と同様に4つの whorl から構成されますが、がくと花弁の区別がない同花被花です。van Tunen ら(1993)はこの同花被花の花器官形成を説明するモデルとして、クラスB遺伝子が雄蕊と内側の花被だけでなく外側の花被でも働くために同花被花の形態をとるという改変ABC モデルを提唱しました。さらに私たちはチューリップの園芸品種から、双子葉植物の雄蕊と花弁の器官決定に関与するクラスB遺伝子を単離し、発現解析を行った結果、チューリップのクラスB遺伝子の発現は改変ABC モデルを支持することを明らかにしました(Kanno et al. 2003)。アガパンサスの花も同花被花ですが、アガパンサスのクラスB遺伝子を単離して発現解析を行った結果、チューリップと同様にクラスB遺伝子が雄蕊および外側と内側の花被で発現していたことから、チューリップとは系統的に離れたアガパンサスにおいても改変ABC モデルが支持されました(Nakamura et al. 2005)。

Kanno et al. (2003) Plant Mol. Biol. 52:831-841.
Nakamura et al. (2005) Plant Mol. Biol. 58:435-445.  

2005.8.29.