サギソウ(Habenaria radiata L.)

 

サギソウ(ラン科)
Habenaria radiata L. (Orchidaceae)

 ラン科植物はコチョウランのように2層の花弁状花被を持つものが多いのですが、サギソウをはじめ、オフリス(Ophrys)やクマガイソウ(Cypripedium)など、ラン科植物のいくつかの分類群の花は緑色のがく片を有する異花被花です。これらの植物はラン科植物の中で系統的に離れていることから、これら異花被花はラン科植物の進化過程で独立に進化したものと考えられます。
 花のABC モデルによれば、がく片はクラスA 遺伝子、また花弁の形成にはクラスA ・ B両遺伝子の働きによって決定されます。ラン科植物における異花被花の進化にはABCモデルで働く遺伝子群がどのように関与するのでしょう?
 私たちはサギソウの野生型(写真左上)および‘飛翔’(がく片が花弁化した品種、写真左下)から、クラスB遺伝子を単離して発現解析を行った結果、サギソウににみられる外花被片のがく片形成にはクラスB遺伝子のうち DEF-like遺伝子が関与していることを明らかにしました(Kim et al. 2007) 。また野生型と飛翔を交配して得られた雑種後代(写真右)に‘飛翔’の形質が遺伝したことから、がく片が花弁化する形質は優性に遺伝することを明らかにしました(Kim, 2010)。
Kim et al. (2007) Plant Science 172:319-326
Kim et al. (2010) Scientia Horticulturae 124:415-418

2011.2.**.