チューリップ(Tulipa gesneriana

 

チューリップ (ユリ科)
Tulipa gesneriana (Liliaceae)

 日本人にも馴染みの深いチューリップはユリ科チューリップ属に属しており、中央アジアが原産である。園芸店で見かけるチューリップには原種系と園芸品種系とがあり、一重・八重・ユリ咲き・グリーン系など様々な品種がある。
 双子葉植物の花はがく片、花弁、雄蕊、心皮の4つの器官 から構成され、これらの器官のアイデンティティーはA・B・C3つのクラスの遺伝子群の働きによって決定されている(ABC モデル)。 一方、チューリップのようなユリ科植物の花は双子葉植物の花と同様に4つの whorl から構成されるが、がくと花弁の区別がない同花被花である。このユリ科植物の花器官形成にABCモデルで働く遺伝子群がどのように関与しているかは非常に興味深い問題である。 van Tunen ら(1993)はチューリップの野生型と突然変異体の花の構造から、改変ABC モデルを提唱していたが、これまで分子生物学的な解析はなされていなかった。私たちはチューリップの園芸品種から、双子葉植物の雄蕊と花弁の器官決定に関与するクラスB遺伝子(TGDEFA, TGDEFB, TGGLO)を単離し、発現解析を行った結果、チューリップのクラスB遺伝子の発現は改変ABC モデルを支持することを明らかにした(Kanno et al. 2003)。

van Tunen et al. (1993) Flow. Newsl. 16:33-38.
Kanno et al. (2003) Plant Mol. Biol. 52:831-841.

2004.5.10.