東北大学大学院生命科学研究科 植物分子育種分野 渡辺研究室

最終報告~2020年度以降の受講生必見!~(農:粥川颯人)

2020年1月28日 (火)

こんにちは、2020年最初のひと月が終わろうとしていることに驚きが隠せない粥川です。

今年の目標は「2020年を日本で一番楽しむ」ですが、あっという間に過ぎ去ってしまう一年を大事に、実りあるものにしたいですね。

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2020年度以降の受講生でこの記事を読む方もいると思いますが、約6000字のレポートを読む気はないと思うので以下に私の㊙テクをまとめます。

植物は基本、光量が圧倒的に多い外で育てる。

キャベツは防寒対策するな。

とにかく日当たりの多いところに置け。

塩害が起こるので霧吹きで水やりしない。

徒長したら土寄せする。

対象実験や継続的な計測はネタになるから絶対やれ。

冬になると植物の変化が少ないので前半が勝負。

「比べる」→「調べる」→「持論を述べる」のサイクルを

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以上、粥川の㊙テクをご紹介しました。さて、本日は最終報告ということになっておりまして、目次はこちらです。

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〇最初に想像していたよりも大変だったこと・うまくいったこと

〇ほかの講義への波及効果について

〇毎日の観察で身についたこと

〇文章を書く・相手に伝えるという点でゼミ開始前後での変化

〇客観的な物事の捉え方・自然科学的な物事の見方について

〇記事に対するコメントについて

〇中間発表で目指した点とのギャップ

〇展開ゼミから日々の生活へのフィードバック


〇栽培面で最初に想像していたよりも大変だったこと・うまくいったこと

大変だったこと

枯れてしまった。食べられてしまった徒長してしまったということがほとんどなかったので他の受講生よりも大変だった点は少なかったと思います。ただし、難しかった点としてはアクションを起こすタイミングを掴むことと屋内での栽培です。

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タイミングの面では間引きと追肥が特に難しいと感じました。水やりならば定期的にやること+葉の状態を見ることで、土寄せならば「茎が出すぎだな」と思ったタイミングでやればいいということで全く問題なく行うことができます。しかし、間引きと追肥に関しては怠ったら枯れるわけでもないのでとにかく分かりにくい!しかも、「これが育ちそうだな」という勝手な予想で、一か月くらいかけて自分が育てた植物をちゃちゃっと間引くなんて難しいですよね。結局は茂ってきたら感情移入せずに間引くが一番いいのかなと思いました。

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屋内のキャベツは水やりが大変でした。「まだ大丈夫かな」と思いきや、暖房と冬の乾燥でカラッカラに乾いているということが多々ありましたので。ただ、キャベツの葉が硬いという特徴もあって完全にシナシナになってしまうことはありませんでした。(屋外では、特に初冬は結露の影響もあって水やりがほとんど必要なかったので楽でした。)また、屋内で光量が少ないということもあり、屋外に比べて色が悪いということも常に心配の種となっていました。数か月間枯れてしまいそうな色だったのでずっと心配でしたが、元気に生きているので屋内で育てても一応大丈夫ですよ、2020年度以降受講生のみなさん!(おすすめはしませんが)

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うまくいったこと

先にも述べた通り枯れていない・食べられていない・徒長していないということが無かったということがうまくいったことだと思います。個人的にはたまたまうまくいっただけだと思っているのですが、一応考察もしてみたいと思います。

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枯れていないことに関しては中間発表でも言及した小笠原千夏さんの記事を参考にして水やりをしたことが大きかったと思います。霧吹きで水をやると塩害が起こることがあるようなのでこの記事を目にして以降、気を付けるようにしました。

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食べられていないことに関しては鉢を置く場所がよかったのかなと思います。屋外で鉢を置いている場所というのは下の写真のような場所なのですが、昼の間はこの周りで祖母が庭いじりをし、夜になると父がタバコを吸い始める場所なんです。人の気配が常にあるということで鳥も、猫もいたずらしなかったのかなと思います。

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徒長していないことに関しては、特に自分で意識していた点はありません。とにかく日当たりのいい場所において、ちょっと徒長気味かもと思った時には土寄せをして苗が倒れないようにしていただけです。

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〇ほかの講義への波及効果について

やはり、影響があった講義といえば東北大理系名物の自然科学総合実験(通称:自科総)の授業でしょう。この展開ゼミと自科総には、観察を大事にする・中身と量のある文章が求められるといった共通点があります。(ただし、展開ゼミのほうが自主性がより強く求められ、自科総のほうがより量が求められるという違いはありますが。)この共通点がいい感じにマッチして展開ゼミが自科総で役に立ったこともあったなぁとつくづく思い返しています。

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具体的には展開ゼミで養った観察眼が自科総でうまく働いたことが波及効果です。顕著な例が、バナナの香りがする芳香族化合物の酢酸イソペンチルを合成する実験です。基本的には滴下した物質の量と生成物の収集率にフォーカスした内容だったのですが、滴下した物質の匂いを嗅ぎまくり、生成した酢酸イソペンチルをテキストに塗りたくるという実験(?)までしてしまいました。自科総は観察しろと言われたものを観察していたら終わるのですが、展開ゼミではどこを観察するかも自分で決めないといけないので気になったことをすべて自分で調べていかないと記事が書けません。展開ゼミで培った、観察する対象を決めるという癖がこういった形でほかの講義に波及効果を及ぼしたのでした。

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逆に、自科総が展開ゼミにプラスに働いたこともありました。先に述べた通り、自科総では量を求められます。毎週毎週手書きで10枚以上のレポートを書き続けると感覚が麻痺してきて展開ゼミが楽しくなってくるのです。総括すると、観察眼の面で展開ゼミが自科総に、文章量の面では自科総が展開ゼミにプラスに働きました。両方とも理系の人にとってはかなり重要になってくるので、『展開ゼミ+自科総』、いい組み合わせだと思います。

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〇毎日の観察で身についたこと

毎日の観察で身についたこと、ひとことで言うと「比べる」ことでしょうか。

これは私がキャベツの対照実験をしているからなのですが、この記事から読んでいる方もいらっしゃると思うので簡単に私のプチ実験のテーマを紹介したいと思います。テーマは「キャベツはインドア派かアウトドア派かを調べる」です。キャベツを屋内と屋外で育ててどちらが元気に育つのかを調べています。

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対照実験なので、色、触感、葉の付き方など気になった項目をすべて比較するようにしています。第六回記事では葉のワックス成分の有無、第七回記事では葉の枚数と大きさの関係、第八回記事では根元の色の違いについて取り上げました。毎回、記事のネタを探すのに必死だったのですが、じっくり観察してみると意外と違いに気がつくものです。

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「比べる」ことに続いて意識していたのが「調べる」、「仮説を立てる」ということです。個人的に特に意識して「調べる」作業をしていたのが第五回記事第八回記事です。第五回記事では屋内のキャベツの色味が悪い理由を調べまくりました。自分の出した仮説で説得力があるものは① 温度条件が悪い、② ガラスがキャベツの生育に必要な波長の光をカットしている、です。特に自分のお気に入りの仮説は後者の方です。詳しく知りたい方はこちらをお読みください。第八回記事では屋外のキャベツ根元の色が青紫色になった理由です。こちらはほぼ間違いなくアントシアニンでしたね。

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「比べる」→「調べる」→「仮説を立てる」の流れは楽しくて仕方なかったのですが、結局このサイクルを回せたのは後半の数回、時間があるときしかできなかったのが悔いです。

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〇文章を書く・相手に伝えるという点でゼミ開始前後での変化

文章を書くという点に関して、最初はとにかく読みやすい文章・読みたくなる文章を心掛けたいと思っていました。この点に関して、最初から心がけていた点が二つありました。一つがカジュアルな文章にするということ。もう一つが改行を多く使うということです。これは基本的にずっと意識して記事を作成していました。

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読みたくなる文章という考えは半年を通して持っていたのですが、記事の投稿を重ねていくにうちに、より知的好奇心を刺激する記事を書きたいと思うようになりました。その結果生まれたのが前述第五回記事第八回記事のような「比べる」→「調べる」→「仮説を立てる」のサイクルを意識した記事です。一応、展開ゼミの記事は理系の文章に分類されるので「仮説を立てる」が着地点になりましたが、ほかの文章でも「仮説を立てる」という着地点は使えると思います。星野源のエッセイなどを読んでいても、身の回りのことを取り上げておもしろおかしく持論(仮説)をかざすところが面白いなぁと思うので、オリジナリティが求められる文章では「仮説を立てる」という作業が絶対に必要なのかもしれません。文章の構成を学べたのはこの展開ゼミをとってよかったことだと思います。

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〇客観的な物事の捉え方・自然科学的な物事の見方について

習得できた点

習得できたことは観察癖と文献をチェックする癖です。観察癖についてはほかの項目でも何回か書いているので特に触れません。ここでは文献をチェックする癖について取り上げます。

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気になったことを調べるのによく使うのがWikipediaですが、やっぱりレポートを書くにあたっては信用置けないですよね。そこで大事になってくるのが信用のおけるソース探しです。個人的におすすめなのが日本植物生理学会の"みんなのひろば"です。一般の方々の質問に研究機関の方々や大学の先生方が答えていくというもので、そこそこ信用できるので情報量も多いです。Google scholarもおすすめですがかなり専門的な論文や求めていない情報がいっぱい出てくるのでこの展開ゼミでは気休め程度に使うのがいいかと思います。

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ほかの受講生に見習うべき点

観察癖と文献チェック癖は身につきましたが、結局最後まで継続する力は身につかなかったなぁと反省しています。観察を進める中で大事なものが些細な変化に気づくための継続。さらに、気づきを増やしたり絶対的なデータを得たりするために必要なのが数字です。葉の数やだいたいの大きさは測定していましたが、より細かく数値化されたデータを継続的にとり続けるということをもっとやっておくべきだったなぁと思います。

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ほかの受講生の中でデータを数値化するという点で面白いと思ったのが松木さんの記事です。データをちゃんと取り続け、グラフ化(可視化)するという点でポイントが高いと思います。また、ほかの受講生が全くペースを守れていない中でコンスタントに週一回の記事の更新を続けていた馬渡さんも見習わなくてはと思いました。

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〇記事に対するコメントについて

コメントは自宅とラボの植物の比較や栽培のアドバイス、さらに自分の知的好奇心を満たすという点で非常に有用だったと思います。特に、オガタさんの知識の広さ!生物・物理の話から映画の話までカバーしており、失礼ながら「この人はGoogleか!」と思ってしまいました。

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中間発表までは展開ゼミのGoogle・オガタさんからのコメントはチェックするだけで、講義の双方向性を十分活かしきれていない感じがありました。ただ、中間発表から【粥川からのコメント】のコーナーを設けたのはわれながらいい取り組みだったのではないかなと思います。当初は特にコーナーを設けず、コメントに関する言及を増やそうかなども考えていましたが、2018年度受講生の金さんの記事に毎回コメントコーナーがあったのでこれに見習い【粥川からのコメント】のコーナーを作ることにしました。

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結果的にコメントコーナーを作ってよかったと思うことが

① どこがオガタさんへのコメントなのかわかりやすい。

② 双方向性を十分活かせる。

③ 「コメントを書かなくては」と思うようになるので記事の更新が継続できる。

といったことです。悪いことは一個もなかったです。来年度以降の受講生の皆さん、おすすめですよ!

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〇中間発表で目指した点とのギャップ

まずはこちらから、中間発表を振り返りましょう。

また、この記事を作るうえで様々な受講者の記事を拝見しましたが、その中でも「数値を用いたデータの集計」、「グラフなどを用いた可視化」、「コメントをもっと活用し双方向性を活かす」という三つのことは今後取り組んでいこうと思います。

とのことでした。まず、「数値を用いたデータの集計」は結局まったくやっていなかったので全く達成できていませんね。データがなければグラフも作れない(作る必要がない)ので「グラフなどを用いた可視化」もダメです。かろうじて、三番目の「コメントをもっと活用し双方向性を活かす」はうまくいったと思います。総じて、33点といったところでしょうか。落単です。

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続いて、なぜ「数値を用いたデータの集計」がうまくいかなかったのか考察しましょう。一番大きな理由としては何を数値化するかを特に決めていなかったことだと思います。やはり、目標は具体的にということですね、、、もう一つの理由として冬の時期になると植物の成長が遅くなるということがあります。成長が遅くなるとあまり変化が見られないのでモチベーションがなくなってくるんですね。ただ、変化がないからこそデータをとることでより小さな変化を見つけられたかもなぁ、見つけられなくても記事のネタはできたよなぁと反省しています。

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〇展開ゼミから日々の生活へのフィードバック・作物の今後

展開ゼミを通して、観察眼を養えたことや読んでいて楽しい文章構成、(自然科学総合実験との相乗効果もあり)文章を書くことへの耐性が得られたと思います。将来、研究で生きていきたいと思っているので観察眼、というか観察癖はこれからもこっそり続けていきたいと思います。世間も厳しくなってきているようなので危ない方向の観察はしませんが。また、書くこともつらくないというよりは楽しくなってきているので、noteなどで"つらつらこそこそ"と書き続けていければいいなぁと思います。

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育てているキャベツと黒キャベツのほうは大きくなるまでしばらく育ててからロールキャベツをやりたいなぁと思います。最初に決めた目標が「1.なるべく徒長させないこと 2.キャベツを結球させること 3.おいしいロールキャベツを作ること」でしたので。屋内で色白になってしまったキャベツのほうは正式に第二セメスターが終わるまでは屋内で栽培し、それ以降は段階を踏んでから外に出してしっかり日の光を浴びせたいと思います。

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もしかしたら今後も記事の更新を続けるようなこともあるかもしれませんがご容赦ください。研究室の皆さまや無理やり読者になってもらった方々、半年間お見守りいただきありがとうございました。

(6020字)

コメント

農学部・粥川さん

 育種の渡辺でございます。後輩のためにマル秘のまとめ、よくわかる内容かと。ただ、例えば、何を持って徒長と理解するのか、何を計るのか、どこを計るのか。調べると言っても、何を調べるのかなど、実際は、記事の中身を見るしかないような気がしますが、どうでしょうか。と言うことと、最終的には、実行力というか、最後までやり遂げる完遂力の方が重要になってくるような気がしますが。。で、栽培がうまくいったというのは、今年の天気が比較的安定して、晴れ間が多かったこと。あとは、地元で自宅生という「地の利」が大きかったように感じます。置く場所も誰にも許可を取る必要もないですし。ある意味。徒長をしなかったというのも、太陽光が十分に当たる場所を確保できたから。アパート、マンションなどのベランダで、そこまでの十分な光量を確保するのは、結構な難行苦行だと思いますので。もちろん、その有利さをきちんと利活用できたことは評価できると思います。もちろん。

 自然科学総合実験への効果は他の受講生も、ずいぶんと書かれてあるので、相互というか、相乗効果があるのだと思います。渡辺が川内にいた当時(教養部生といわれていましたが。。。)、学生実験は2年生になってから、農学部は2年の後期に生物、化学、あるいは生物、化学、物理だったかと。渡辺は生物、化学でしたが、レポートは一緒にやるメンバー、クラスの友達と協力してやっていました。いろいろと工夫をして。当時は、パソコンなど使えないので、手書きと言うが当たり前でしたが。。。毎年、同じ実験をしていたことも、もちろん、工夫する余地があり。。。書かれてあるほど、大量の書き物に追われることもなかったように記憶しています。もちろん、当時、アルバイトをしたり、部活もせず、農学部でのサークルを1つやるくらいでしたので。前置きが長くなりましたが、結果を詳細に観察して、それを文章化すると言うことは、この講義でも求めていることなので、今後のレポート書きにも相乗効果があればよいのですが。

20200130191209-80e4f24167530e896bde3033f0e2ce9f4a62e63e.JPG 実験として、キャベツの栽培を屋内と屋外でやっていましたが、少し問題ありではないでしょうか。農学部生であれば、少し考えてほしいのですが、キャベツの栽培は露地栽培以外にはないと思います。同じアブラナ科で結球するハクサイも同じですね。結球するという点では「レタス」は、いわゆる、LEDなどを使った野菜工場で栽培されていますが、結球に必要な葉数が少ないのでできる芸当だと思っています。もちろん、こちらでレタスを準備してないのもありますが。時期的な問題もあり。ということで、実験をするとき、もちろん、それぞれの専門性もあると思います。農学部生という立場で、何を実験することが現状の問題を解決することになるのか、一歩踏み込んで考えてほしかったですね。

 参考になるページの情報。日本植物生理学会のsiteは言われるとおり、現役、退官された植物のある意味、プロが書いているので、信頼度が高く、利用するのにはよいと思いますが、実際の栽培という点と言うよりも、植物を深く理解するという点で活用するのが、よいのだと思います。もちろん、農学部生なので感動されるというのは、理解できます。また、最初の格言にあるように、何かを計測する、と言うことの大事さはもちろんのことですが、できれば、それをグラフ化して、見える化してほしかったですね。グラフ化すると、意外なことに気がつくことがあります。数字だけを見ていたのでは気がつかないような。これから先の実験ではグラフ化することにチャレンジして下さい。もちろん、これからの投稿もwelcomeですので。その後、キャベツがどうなったのか、是非、投稿して下さい。お待ちしております。


 わたなべしるす