東北大学大学院生命科学研究科 植物分子育種分野 渡辺研究室

【6】中間発表~野菜栽培を科学すること(工:佐々木ひなた)

2020年11月26日 (木)

こんにちは!工学部の佐々木ひなたです。

栽培開始から早くも2か月が過ぎました。ベビーリーフと間引きしたコカブ・広瀬ちぢみ菜は実食に至りましたが、寒さのせいかメインの野菜は生長スピードがだんだん遅くなってきたように感じます。後半戦に向けて気合を入れなおすためにも、しっかり中間発表していきたいと思います。

(1) ここまでの栽培において一番驚いたこと・感覚の変化

 一番驚いたのは、カイワレダイコンの発芽についてです。カップで水に軽く浸しただけで、すべてのタネが、しかもほとんど同時に、芽を出したことに最も驚きました。


 カイワレダイコンの種子が、もらった他の種子よりも大きくて観察しやすかったというのもあるかもしれませんが、それなりに色や形、大きさにばらつきがあったはずなのに、発芽のタイミングはほとんど同時でした。栽培3日目や5日目のあたりは【2】の記事にも載せましたが、種子の密度が高くなってしまったというのもあってか、敷き詰められたたくさんの種子がいっきに芽を出している様子はある意味、恐ろしかったです。カイワレダイコンがこちら側に向かって差し迫ってくるようにも見えました。まさに、植物の生命力を感じました。


 最初に育てたカイワレダイコンは、収穫を待たずして腐ってしまうという残念な結果となり、あっという間に芽が出てあっけなく終わってしまったという感じがありました。カイワレダイコンに限らず、ほんのひとくち、ふたくち分ぐらいにしかならない量の野菜を育てるのに、結構神経を使いましたし、使っています。できる限り立派なものを作りたい、と思えばなおさらです。今まではスーパーで陳列されている、立派な「完成形」しか見たことがありませんでしたが、そこに至るまでの過程を見たり経験したりすることで、生産者さんの存在を強く認識できるようになり、「いただきます」「ごちそうさまでした」の重みが増しました。野菜に限らず、毎日いただいている食品には多くの人の手がかかっています。肉や魚には、命の重みも加わってきます。そのような視点を持つことができるようになったのは自分の中で大きな変化だと思います。

(2) 参考になった記事

 自分が伝えたいことを相手に伝える記事というのはこのようなものなのだと強く感じたのが2017年度 菅原ののさんの記事です。見せたい部分がしっかりと中心にあって、ピントも綺麗に合っているクローズアップした写真を効果的に使い、注目してもらい所には丸い印を入れるなどの工夫がなされています。また、他の多くの方も行っていることですが、こまめに自分が参考にした記事を文章に組み込んで、読んだ人がクリックすればすぐそのサイトに飛べるようにしているのも読者に優しいポイントだと思いました。

 また、このゼミが始まって観察を記事にするといってもどのようなことをすればよいのかを知ることができたのは、2018年度 金あおいさんの記事です。全体的に文章量が多すぎず、それでも一回一回の内容は濃くすっきりとした投稿が印象的でした。「重要だ」「参考にしたい」というポイントが、金さんの記事を読むとすぐに絞られてくるので、こちらも読者に優しい投稿だと思いました。

(3) コメントからの気付き

 農学部 佐々木美園さん2020/10/19の記事に対するオガタさんからのコメントです。揃って発芽しているということに気付き、それに対する違和感を記事に書いたという美園さんのすごさにも感動しましたが、それが植物の生存戦略を人間の都合に合うように作り変えるという農業の裏を知ることに繋がり、さらに感動しました。まっさらな気持ちで植物を観察し、そこから学びを得ていく姿を見習いたいと思いました。

 

 また、より栽培に関することで言うと、農学部川口菜月さん 2020/11/08の記事に対するオガタさんのコメントが参考になりました。追肥という作業が初めての経験だったので、そもそもその作業が必要であるということとやり方や肥料の仕組みについて知ることができました。この後、川口さんが載せていた写真も参考にして、お手本があるという安心感をかみしめながら追肥を行いました。ありがとうございます、川口さん...。

(4) 双方向の講義であることの利点

 他の受講生の方も書かれていることかと思いますが、自分が書いた記事に対してコメントを頂けるのは嬉しいです。最近では対面授業もいくつかできるようになりましたが、春から続くオンライン授業で感じたのは、画面越しでの疎外感です。リアルタイムで受けていても空間の隔たりというのは大きいと感じました。こちらの展開ゼミでは同じ時間や空間を共有することはないけれども、オガタさんからの細かなコメントや、他の受講生の丁寧で分かりやすい記事を読むことを通して、自分の中で自分のペースで消化していく感覚を得られています。記事に関しても、相手に見せるしっかりとした文章で書くために時間も(頭の)労力も使うので、記事一つ一つに重みを感じます。箇条書きとかではなくて、みなさんそれなりに時間をかけて執筆するものであるからこそのものかと思います。双方向の利点には含まれませんが、こちらの展開ゼミの特徴である他の受講生の進捗状況が見られるというのは、他になかなかないうえに刺激にもなるし学びにもなるしでやりがいを感じます。他の受講生からの学びは、双方向とまではいかないけれども、決して一方向ではなく、このように学びを得られるのも、先生と受講生の間の双方向がしっかりと成り立っている故のことであると思います。

(5) これからの目標、学びたいこと

 まずは、最後までやり遂げるということです。記事の投稿が遅れているので、コンスタントに投稿し続けている方を見習って挽回していくことが最優先事項です。記事についても、もっと他の受講生の方々の記事に目を通して、学べるところをしっかり学んでいければと思います。野菜栽培に関することに限らず、記事のレイアウト、色使い、観察の仕方などもです。もちろん野菜は、枯らしたり虫害に合ったりすることなく、美味しく食べられるようになるまで育て上げるのが目標です。

 そして、これまでの自分の記事では、見たものを見たままにひたすら書き連ねた観察記録になってしまっているので、そこにいかに自分らしさと客観性を加えていくかにも重点を置きたいです。客観性を持たせるという点では、長さや体積といった数値を記事に取り入れていきたいと思っています。

 正直、この展開ゼミを受講し始めて以来、「野菜を育てる」というある意味「自然」の中にあることを、科学的に数値で処理しようとすることにどこか違和感がありました。ド素人の失礼な考えでしかありませんが、農家の人たちは長年の経験や直感に頼ってあらゆる作業を行っているのだろうから、農業は目分量というか感覚を研ぎ澄まして行うものだろうと思っていました。そんな時、別の講義でコーヒー豆の焙煎をコンピューターで制御し、理想の焙煎具合を実現しているカフェのマスターさんもいらっしゃると知りました。従来では五感を使っていわゆる熟練の技でやっていたものを、そのマスターは温度を測定してグラフ化し、そして温度や焙煎時間を調整しているそうです。実に科学していると感じました。これは、今回の展開ゼミにも通じるところです。野菜を一回育てたくらいでは、感覚でコントロールできるには至らないけれども、自分なりにデータを取って比較して、違いがあれば考察して...というのを行えば、次に自分もほかの人も繰り返すことができる。当たり前のことかと思いますが、自分にとってはそれなりに大きな気付きでした。ですので、後半戦ではこれを少しでも自分の記事で実践していきたいです。

(3040字)

コメント

工学部・佐々木さん

 遺伝の渡辺です。そろいがよいということ。工業製品みたいですね。そのからくりは、週末にでも、中間報告を見てということで記事にしたいと思います。普段、工業製品のように揃った「完成形」だけを見ている。確かにそうですね。その途中の過程を見ることで、今まで以上に、食べ物に対して、ありがたさというか、感情を持つようになれたことは、この講義の大事なことだと思っています。学部がどこであろうと。こうした気付きをどうやってまとめるのか、人それぞれのトライがあってよいと思いますし、多くの先達の学びを自分のものにすると言うことも大事なことです。言い方を変えると、多様性と共通性でしょうか。他の受講生にも書いたかも知れないですが。

 linkを張ると言うことをお願いしましたが、それはまさに、reader-friendlyと観点だと思います。いつものレポートは引用文献を示すことはあっても、linkを入れることはないと思います。そうしたことは、実際の投稿論文では、なされることもあります。投稿論文ができた時点で、webでの公開の時に。植物を栽培していると、最初は種子に栄養がありますが、途中からは光合成はできても、それ以外のものは、根っこから吸い上げます。その点で、追肥が必要になります。地面に植えると、そうしたものが含まれていることが多いですが、それでも、葉っぱをたくさん作る「ハクサイ」などは、追肥が大事です。工学にもそうした発想を導入したら、どうでしょうか。

 他の受講生のまなびの様子を生で見ることができるのは、この講義の特徴です。今年はコロナ禍と言うことで、相互に交流が難しい講義が多いと思います。いつもであれば、分からないときなど、何かを聞くこともできますが、それが難しい状態。それを何とかカバーしている講義形態になっているかと思います。是非、これからも活用して、学びを深めて下さい。工学という計測技術を使って、葉っぱなりを計測する。それをグラフ化する。そうすると、ずいぶん、客観的な表現ができます。繰り返し実験があれば、分散の値を取れて、結果、生育の比較を統計的にもできます。残りの後半戦を自分らしさを出しながら、他の受講生、先達から学んでほしいです。


 わたなべしるす

20201128163946-62dc94c2cc7b508d960083c90fecbc88ef6bfa49.JPG