東北大学大学院生命科学研究科 植物分子育種分野 渡辺研究室

12.「壁」(文:小松澤亮晴)

2020年12月 9日 (水)

1.挨拶

 こんにちは、小松澤です。今回は安部公房の「壁」を紹介します。高校の教科書に載っていることが多い「赤い繭」もこれのなかに入っています。この作品で扱われているのは、トポロジー的解釈による内部と外部の同質性です。といっても、難しいですね。自分の説明が下手なのは承知しています。蒙古砂漠の土からできたレンガを使っている、境界を形作るところの万里の長城(長城の「城」は「壁」という意味です。「城壁」という連文がありますね)と無辺際の蒙古砂漠は、トポロジー的には同一のものです。つまり、境界で分断された外部世界は内部世界と同質であり、さらには "内部を外部に、外部を内部に、実現できる" のです。あたかも「壺中の天」のように。しかしそうして実現された存在はやはり、異質な存在たることを免れ得ず、あたかも世界がシュルレアリスムのように感じます。「赤い繭」にかんしていえば、繭も境界として内部と外部を形作ります。そして繭の内部には外部が "余すとこなく" 実現されているのです。そういえば、繭をつくる虫といえばカイコですが、漢字で書けば「天の虫」となりますね。


~目次~

1.挨拶

2.経過観察

3.結び


2.経過観察

 では、小松菜と芭蕉菜です。54日目です。まだ二か月も経っていないのですね。

20201208224546-cd1f6ff33becf852c75aad9a3903d47f12b22848.jpeg20201208224610-af35bd27fed967048b57a849600564b085f999b6.jpeg

小松菜は、2枚目の写真を見てもらえばわかりますように、なにものかに食べられてしまった跡がありました。残念です。見たところこの葉っぱくらいでしたが。虫食いにしてはきれいですし、鳥だとしてもこれだけで満足して去っていくものでしょうか。虫は見当たりませんでしたし、謎です⋯⋯。

20201208224648-12f05e3374f033ddfc990905bbf588557d37d581.jpeg20201208224735-51505b0a109d61cea8cda20d9d7f9ad6f6e6381b.jpeg

芭蕉菜は、葉っぱごとの色の違いが顕著だったので、尾形さんのアドバイスどおり施肥を多めにしておきました。また、いつか触れたようにうちの植物は日の当たる方向が決まってしまっているので、日が当たってないところを見てみると、トライコームがすごく多くできていました。しかし、これが日射量と関係があるのでしょうか。あと、写真2枚目左の葉っぱを見てもらえたらわかるように、これもこの葉っぱだけ食われてしまっていました。

20201208224807-b22e9e911a2c0683648098822a2af1124a260bf4.jpeg

 ベビーリーフ(54日目)は特に異常などはありませんでした。


3.結び

 以上になります。もしかしたら起こるかもとは思っていたのですが、ここにきて、植物が食われるという事態が発生してしまいました。正直、ベビーリーフはもう2回収穫をしているのだからそっちに行ってくれと思うのですが、そうはいかないですよね。原因を突き止めたいところです。まあ、鳥にだったら、すこしくらいは食わせてやってもいいかもしれないです(笑)。それでは、第12回の記事でした。

コメント

小松澤さんこんにちは

 おお、続いては安倍公房ですか。独自の世界観を構築しますが、特にトポロジーの概念を使って「外部」と「内部」を同一化というか境界をあいまいにしているんですね。普段意識せずに外部と内部を区別していますが、本当にそれは分けられるのか、分けていいものか...... そして狂気に近い概念世界へ読者を連れて行くようです。

 ちょっと話のついでですが、「国語の教科書」あるいは「国語便覧」というものは凄いです。若いうちからいろいろなジャンルに触れるツールとしてとてつもない重要なものです。古典文学、現代文学、詩、西洋文学のさわりを誰しも読むことになります。中原中也でも与謝野晶子でも森鴎外でもポーでも、少しくらいは知るわけです。どの作品が掲載されているかは時代によりますが、ジャンル的にはまんべんなく取り入れられています。いや本当に教科書というのは良いシステムです。

 個人事ですが、私などは授業を全く聞かずに、教科書や副読本を読んでいました。国語便覧はもとより、倫理副読本や地図帳でも見ていれば大変面白く、いくらでも時間を潰せます。というより大学生活や社会人生活で新たに覚えたものは少なく、中学高校時代頭に入ったことが未だにベースですね。

 もう一つカイコについてです。よく知られたことですがカイコは高度に家畜化され、人間なしでは全然生きられないまでになっています。幼虫もあまり移動せず、成虫もあまり飛べません。それでも桑の葉しか食べないところは変わっていません。なぜ食性がこれほどピンポイント(単食性)なのか、その方が生存に有利と理屈を習った気がしますが、よく覚えていません。特定の葉の解毒に特化した方が有利だったような。

 さて今回の報告では、植物は元気のようですが、食べられた跡があるとのことです。虫の害には全然見えませんので、鳥としか考えられません。その近辺に鳥がいますか? まあどんどん食われるようなら、鳥には気の毒ですが覆いなどを作って植物を保護しなくてはなりません。これは鳥同士の連絡によって一斉攻撃される恐れがありますので油断してもいけませんが...... 少しならおっしゃるように鳥にエサを供給する楽しみがあるといえばそうです。園芸界でも今は鳥や蝶を招く植物を植えるということが流行ってますね。

 トライコームと日射の関係は分かりません。経験的に分かるのですが、それを研究した論文があるのかちょっと不明です。

 それと鉢の置き場について、これはエアコンの室外機の上ではないでしょうか? たぶん陽当たりのことを考えて決めたと思うのですが、エアコン室外機は振動と冷風の害があります。使用すると外気より5℃は低い冷風を出します。過去の受講生には鉢の下にスペーサー(雑誌の束やスチロールなど何でも)を置くように推奨していました。

 間もなく氷点下の時期になると共に2020年も終わってしまいますが、今年を振り返りつつ過ごしましょう。

 ラボスタッフ・オガタ

20201209123615-1fbd9224c878b310c3208de188759599a581171b.JPG

秋保で見つけた粋な(?)植木です。