東北大学大学院生命科学研究科 植物分子育種分野 渡辺研究室

【15】最終報告~ただ野菜を育てるだけではない気付き(工:佐々木ひなた)

2021年1月22日 (金)

 ついに最終回です。

 長かった!

(1) 栽培で、最初に想像していたよりも、たいへんだったこと・うまくいったこと

 私が作物の栽培で一番たいへんだったのは、非常に初歩的なことかもしれませんが、毎日世話をすることです。コンスタントに継続することの難しさを改めて思い知りました。はじめはやる気に満ち溢れていましたが、後期の途中から部活を始めて土日祝は変わらずアルバイト、自動車学校にも通い始め、春から夏までの大学生なんだか何なのだか分からない引きこもり生活から一気にたくさんのことが始まって、これが大学生かと目が回っていました。それを言い訳にして、毎日鉢の様子は必ず覗いてはいたものの、じっくりと見て写真を撮ったり長さを測ったりというのは2、3週間に一回というペースになってしまいました。そのせいもあって猫に葉を食べられていたのにしばらく気付きませんでした。

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 私は、この後述べますが、栽培の失敗は多くはなかったので、観察を怠ったというのが大きいです。他の受講生の方々は記事をしっかりコンスタントに投稿しています。時間がないのではなくて、自分で時間を作りにいかなければならないのに、私の努力不足です。

 また、コカブとちぢみ菜の大量収穫を狙って百円ショップでプランターを買い、実家にあった園芸用の土を使って追加で栽培しようと思ったことがありました。こちらは始めた時期が遅かったことや、夜間非常に気温が下がる日のみプランターを玄関に入れるだけしか寒さ対策を施さなかったことが原因か、ほとんど生長しませんでした。この失敗を考えると、展開ゼミが始まったときに渡辺先生に言われた通り、もらったら早めに種蒔きをし、自己流ですが寒さ&強風対策で段ボール箱に植木鉢を入れていたことは野菜栽培を良い方向にしてくれたのだと思います。総じて、早めの種まきと甘やかしすぎない寒さ対策が大切でした。

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 一方で意外にもうまくいったのは鉢でのコカブの栽培です。先に実食したベビーリーフは青臭く、いかにも「素人が作りました!!」感が満載でした。家族からの評判もあまりよろしくありませんでした。所詮素人なので、そこまでがっかりすることでもなく、「まあこんなものだろう」と妥協できるレベルではありました。対するコカブは辛みがなくて甘く、程よい固さで、美味しくいただくことができ、普通に感動しました。収穫できたものが2個で、しかもどちらもハツカダイコンサイズだったので、自分で栽培した野菜を使って食事を楽しむレベルには全く至りませんでしたが、当初は「カブのごく小さい実も葉も虫に食われてボロボロ」というのを想像していたので十分満足です。栽培の過程を振り返っても、乗り越えられないような困難はなかったように思います。何も特別なことはしなかったので、育てやすい植物だったのだと思いますが...。

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(2) 植物の観察眼を養うことでの他教科への波及効果

 波及効果があったと思うのは、自然科学総合実験です。


 この授業は、今年は対面での実験が3回に減り、そもそもの課題自体が2週間に一度というイレギュラーな形態となりました。対面での実験がないときは、実験の様子が撮られた動画を見て、資料を読んで、レポートを書く、という授業でしたが、動画を見て、パワーポイントの授業資料などからヒントを得て、そこから考察を書くとなると、考察内容に独自性を持たせることは非常に難しく、大変でした。しかし、こちらの展開ゼミで「観察」を経験していたので、いくらかは考察のいいネタになりそうなポイントを自力で見つけられたかと思います。また、それをレポートに盛り込もうとする際に「文章を羅列するのではなくて、図や表を効果的に使うこと」というのは、今までよりも断然アンテナを張ってできました。ただ実験装置の図を写すのではなくて、組み立てや装置の役割として大事なことは何か?それは図のうちに書き込んだ方がいいのではないか?と自問して、読者に優しい文章を書くというのを無意識のうちに目指せるようになったのは大きかったと感じます。


(3) 「毎日が展開ゼミ」で身についたこと・感じたこと

 
 身についたのかどうかはっきりとは言い切れませんが、何かを見て「発見する力」は以前よりも身についたのではないかと思います。植物を見たときに「形や大きさ、色はどうか?」や「前の観察と比べて変化はあったか?」など、自分の中でそれらを意地でも見つけ出そうとする姿勢は以前の自分にはなかったものです。レポートや課題に書いていたことは、「目に見て分かるもの」「多少は隠されていても最初からすでに示されているもの」ばかりで、守りに入ったつまらないものだったなあと振り返ってみると思います。発見するためには対象物をしっかり見なければならないので、「本気でものを見る」という姿勢も身についたかもしれません。その成果が得られたのは、ごく小さな虫を発見できたことです。食べられている部分がまだ小さいうちに気付いて、駆除することができました。これは一回一回の観察でできたことであって、(1)で述べたこととは矛盾してしまいますね。何事も継続が大事だとよく言うので、そこは私に今も欠けている部分です。

 関係ないことかもしれませんが、これまで苦手だったアブラムシを直視できるようになったことと、アブラムシをつぶすことができるようになったのは私のなかでの大きな成長です。虫に対する耐性が付きました。


(4) 文章を書くという点での変化

 「文章を書く」ことは、もともと嫌いではありませんでしたが、まとまりのある文章を書くことやなるべく短時間で書くことは苦手でした。中身に関しても作業時間に関しても、ダラダラと書いてしまうことがほとんどでした。これが、ゼミの受講を通して劇的に改善されたということはなかったのですが、文章を書く課題に対する臨み方は変わったように思います。

 今までは、机に座って課題に向かって「どうしようか」と考え、また展開ゼミのレギュラー投稿は一記事書くのにダラダラと4~5時間かかっていたため、毎度毎度夜中の2時までパソコンに向かい続ける...という過酷なことをやっていました。しかしある時、渡辺先生の2020/01/08の記事で、先生自身その記事は10~15分で書いたと言っているのを読み、非常に驚きました。また、先生は長い文章を書くのが苦手な人に対して「合間の隙間時間をうまく活用して」「気がついたことを何かの形で書き留めておく」ことで長い文章を短時間で書くようにするのだと述べられていたので、実践できるように意識しています。

 具体的にはメモ帳を持ち歩いて、些細なことでも思い付いたことは書き留めるようになりました。また、あらかじめ何をどの順番に書くか構成を練ってからパソコンに向かって実際に文章を書くようになりました。書くべきことを項目ごとにメモをしておいて、どれが済んでどれがこれからやるものなのかを可視化するようになりました。まだ実際に長い文章を短時間で書けるようになったわけではないので、あくまで意識改革の段階ではありますが、1年生の段階でこうやってたくさん文章を書き、考えられた経験は今後の大学生活で役に立つのではないかと思います。


(5) 客観的に物事を捉え、自然科学的なものの見方を学ぶ点について、自分自身が習得できたと思うところ・他の受講生と比較して研鑽を積むことが大事と思うところ

 この、客観的に物事を捉えるというのは、半年間の展開ゼミを通してなかなかできない部分でありました。できたことと言えば、野菜の写真を撮る際に見てほしいところをアップにして撮影したり、あとから画像の編集機能を使ってマークアップしたりして、自分ができる範囲でですが客観的に観察し、客観性をもった状態で読者に伝えるというのは頑張りました。それでもやはりただの観察日記からはなかなか脱出できていなかったと思います。後半戦はこのままではまずいと思い、工学部・木村さんの記事を参考にして、葉の枚数で野菜の生長具合をはかり、株ごとに比較をしました。また、時間をあけて同じ株での生長具合も比較できました。このように、自分ではうまく科学できなかったので、他の受講生の方のやり方を真似る形でなんとか客観性を得ようとしましたが、それを自分で考えて自分のやり方でできなかったというのは、今後自力でできるように研鑽を積むことが大事だと思います。


(6) コメントにどの程度followできたのか、意味があったのか

  オガタさん、渡辺先生のコメントに対してフォローできたのは75%ぐらいだと思います。野菜栽培に対しては初心者だったので、詳しい人の言う通りにした方がいい!という意識があったからかもしれません。残りの25%は、前半戦に、ほとんど定規などを当てることなくただ写真撮って終わり、という観察日記を連投していたので25%引かせてもらいました。これは、直接自分の記事のコメントに対して言われたことに限らず、同じタイミングで他の受講生が書かれていることに自分も当てはまっている、という場面での話も含みます。しかし、そのコメントが「自分の記事には改善する余地がたくさんある」ということに気付かせてくれたからこそ、少しでも改善に向かうことができたので、そこが意味があったと言えるポイントになると思います。

 あと、オガタさんのコメントは野菜栽培に関わることだけではなく、多岐にわたる分野の雑学的な話もたくさん書かれていたので、そこで自分が好きな分野だけの思考に偏りがちな頭を柔らかくしてくれる効果があったように思います。野菜を育てるということを、農学に限らず様々な視点から見る機会を与えてくださったのでとても面白かったです。猫の写真もとても良かったです。
 

さらに、他の受講生の方に対するコメントも見れてしまう、というのは他の講義でないことなので、より学びを得られる機会というのが多かったように思います。どちらかというと、自分に言われていることも大事ですが、他の方が言われているのを見た方が印象に残るような気もします。


(7) 中間発表で立てた目標の達成度とpositive, negativeな側面

 まず、私が中間発表で立てた後半戦の目標は、「最後までやり遂げること」と「記事に自分らしさと客観性を持たせること」でした。

 一つ目「最後までやり遂げること」についてですが、一応やり切ったという点では目標達成と言えるかもしれません。しかしながら、週に一回のペースで記事を投稿するという展開ゼミ全体で言われていたことは実現することができませんでした。何か物事をするときにただ「行う」という意味では、クオリティーは高かろうと低かろうと行ったことに変わりはありません。それでも最低限でも時間をかけるのならば、ちゃんとやった方がいいですよね。今年の大半を占めてたオンライン授業は、必ずしも本来の授業日に授業を受けなくてもよく、特にこの展開ゼミはそもそも授業がない。そこは自分で計画的にやっていかなければならないところです。他の受講生の多くの方は、早め早めにタスクに取り掛かり、計画的に物事を進めていました。私のnegativeなところはそこに尽きると思います。

 次に二つ目の「記事に自分らしさと客観性を持たせること」についてですが、結局自力で何か新しいことを考えることはできなかったので、過去や同期のいいアイデアを真似してやってみるだけになってしまいました。2021/01/21の記事では、昨年の受講生の方が試されていたことを自分の野菜でもやってみる、というのをやりましたが、今までで一番客観性のある科学的な記事に近づけられたのかなと思います。真似するというのは、自分で考えていないという点ではnegativeではありますが、「先人の知恵」とか「先人から学ぶ」とかいう言葉を使えば、どこかpositiveな要素にもなりえるような気がします。自力で思い付かないというのはどうしようもないので、これからそれこそ先人がしたことを知り、そこから学べるところはないかを探して自分のものにしていくというのは必要になってくると思います。


(8) 以上から、展開ゼミで学んだことをどのように活かすか。また、収穫していない作物を今後、どの様に管理したいか。

 

 展開ゼミで学んだことは、大きく分けると「人への伝え方」と「客観性のある考察の仕方」になります。今後もレポートを書く機会は増えていくと思いますが、reader-friendlyになるように文章の内容・構成・レイアウトなど気を付けるべき点を意識して臨んでいきたいです。自分は工学部なので「客観的に人に示す」機会が将来たくさんあると思います。例えば、ただ「大きい」「小さい」というのではなく定規などの基準となるものを添えてあげる工夫も一つです。
 

 また、まだ収穫を終えていない作物は、広瀬ちぢみ菜だけになりましたが、コカブは鉢を割って栽培強制終了という終わり方をしてしまったので、もう少し大きくさせてから、自分のタイミングで収穫を迎えられるようにしたいです。天気予報を見る限り、年末年始のような突然のとてつもない寒さはもう来なさそうなので、現状での最大の敵は飼い猫です。もう食べられることのないように、寒さ対策などで玄関などに入れる場合には猫の届かないところか目のつかないところに置くようにします。また冬場の貴重な日光を十分に浴びられるように、特に日中は太陽の当たる位置を考えて、鉢を置く場所にも気を配りたいと思います。いつまで栽培を続けるか分かりませんが、2月3月ぐらいだと仙台は風の強い日か多いので、植木鉢が飛ばされたり、株がなぎ倒されたりしないように注意したいです。加えて、タネが結構残っているので春が近づいてきたら空いた植木鉢に蒔いてみるのもいいなあと思っています。



 以上が最終報告になります。字数は5243字です。

 野菜の報告に限らず、他の受講生の方のことが垣間見れる個性の光る記事ばかりで面白かったです。このような展開ゼミを提供してくださった渡辺先生、オガタさん、そして2020年度受講生のみなさま、半年間ありがとうございました!

 いろいろ直していたら提出期限を過ぎてしまったので、過ぎてしまったらいっそのことちゃんと書こうと思い、大幅に遅刻提出となりました...。最後の最後まですみませんでした。

 

 

コメント

工学部・佐々木さん

 育種の渡辺です。しっかりした最終報告を見ました。〆切の早い段階で投稿する受講生が多かったので、今年度はギリギリの投稿はないのだろうと思っていましたが、17:00の〆切をoverしたのは、残念です。ちょうど、1年前の今頃、大学受験に向けて頑張っていたのではないでしょうか。その時、受験会場に行く時間、答案を書くときのバランスなど、どの様に〆切に遅れないようにするかを気にしていたと思います。レポートはそれから比べると、それほどのものではないと思うのは、よくないです。これから先、たくさんのレポートを出すし、その先には、卒論、修論があり、社会に出れば、提案書だったり、様々な〆切が設定されたものがあります。どんなによいものを作ることができても、〆切に間に合わなければ、意味をなしません。厳しいことを言うかもしれないですが、〆切を守ることを、この講義をきっかけに大事にして下さい。送れたので、よいものをと思う気持ちも分かりますが、まずは遅れないこと。遅れても、できるだけ少ない時間overになるように。たぶん、23日(土) 02:00くらいが投稿時間でないかと思いますので。時間の使い方も併せて、考えるようにして下さい。これから先、学部の専門の講義も始まり、様々にやることも増えてくると思いますので。

20210123111302-58ade12602556f292b860f6310d38d74a16eb9a9.JPG 気がついたことをメモする、大事なことです。今の学生さんたちは、携帯端末を持っています。気になったことを書くことも、解像度の高い写真を撮ることも簡単。それをうまく使うというのはどうでしょうか。渡辺はパソコン世代なので、研究会、講義でメモをとるのはパソコン、ノートを使うのですが、携帯端末を効果的に利用することは、今の世代にはよいことかと思います。もちろん、文章を書くということについては、Wordなどのワープロで、cut and pasteで推敲ができるシステムを使うことで、短時間でよい文章が書けるようになります。学部の講義が始まり、レポートも多くなると思います。短時間で自分の考えをまとめることができることを、これからも研鑽して下さい。

 工学部だと、生物系とは異なる「計測」のツールがあると思います。そうしたものを生物系のこうしたものに応用するのは難しいかも知れないですが、何かを計って、数値化する、それをどの様なグラフなどにしたら、reader-friendlyに見えるか、それはとても大事なことであり、これからたくさん学ぶことだと思います。文章だけでなく、dataを以下に図示化するか、また、その図示化したものを単に、図を見ればよいで済ませるのではなくて、その図のどのポイントを説明するのが分かりやすいか、たくさんtryしてみて下さい。

20210123111321-a569fc4fd6533beb98265545c15aa872c2bff121.JPG まだ、収穫されてないものもあるようですね。来週あたりは試験、レポートも多いのではないでしょうか。それが終わったあと、落ち着いた頃に収穫して、食レポも投稿をお待ちしております。この講義で学んだことを、これからの学部の専門の講義にいかして下さい。


 わたなべしるす