東北大学大学院生命科学研究科 植物分子育種分野 渡辺研究室

生態系・基本・再評価(3/4)

2013年3月 4日 (月)

 あっという間に2月が終わり、3月も4日目。「2月は逃げる、3月は去る」とか言うらしいが、それにしても時間がたつのは、早い。特に、この時期と言うことなく。そんな年回りになったのだろう。というか、小学生の頃に6年間というのは、ものすごく長かった。ところが、今はあっという間。時間の流れは誰にも同じなのに。何か、理屈があったような気がするが、思い出せない。頭の中のいろいろなものが、きちんと整理できてないからであろうか。。。自分の脳みその中を見ることはできない。もちろん、最近の解析装置を使うと、脳みそのどこが働いているのかはわかるが、だからといって、そこにどのようなものがあるのか、何をしているのかは、大まかにしかわからない。田んぼであれ、畑であれ、森であれ、大きく見れば生態系。そうした中で、大まかには、どのような生き物、鉱物、水など何をしているのか、わかりつつあるのかもしれないが、脳みその細かな部分というのと同じような、生態系の中のこれという昆虫が、生態系全体にどのような影響をしているのかというのは、今の解析レベルでは、理解できない。と思っている。もちろん、単純系にすればできるのかもしれないが、身の回りの、田んぼ、畑を見ても、因子の数は、あまりに膨大すぎる。こうした生態系は、大きく見れば、調和していて、きれいである。夕日の当たる棚田の風景など、とてもきれいである。ただ、田んぼに入り、田んぼの中から見たら、光が足りなくて、枯れそうになった草もあるし、イネが生長したことで、繁殖できる昆虫もいる。それから、イネの生長と同調して大きくなる雑草も。こうした生態系という中にいるからこそ、様々な生物間相互作用が起きるので、複雑系となり、簡単に理解することが難しくなる。

DSCN5782.JPG では、単純にするために、蛍光灯の下で、ぺんぺん草のなかまの「シロイヌナズナ」を栽培して、実験・研究することもできるというか、行っている。蛍光灯の光が太陽の光と同じではない。質・量とも違う。栽培している培養液は、窒素、リン酸、カリという主要必須元素(たしか。。)と、カルシウム、モリブデンなどの微量必須元素というが入っていれば、よいのかもしれない。ただ、栽培に土を使うと、土の成分は、様々な鉱物であるので、水分、ミネラルの吸収が異なる。つまり、単純系ではなくて、複雑系になる。考えれば、考えるほど、単純系を作るのは、生物というか、生き物というか、植物というか。そうしたものを研究する上では、難しいのかもしれない。高校の物理の時間に台車をぶつけるという問題の時、仮定は、空気抵抗も摩擦もないようなところから始めたわけです。もちろん、そんな現実は存在しないので、たぶん。。。これくらい単純化できれば、考えやすい側面はあります。植物の研究をしていても、ある遺伝子が壊れた植物とそうでない植物を比較して、その遺伝子が何をやっているのかと言うことを調べます。その遺伝子が壊れて、周りに対して全く影響がないわけでではないはずなので、その遺伝子だけの影響というのは、かなり難しいのですが、何とか、その遺伝子の機能を考えようとするわけです。実際は、複雑系ですが。。。その意味で、どんなことをしても、単純なというか、基本通りというか、そうしたことを積み重ねることで、複雑で、trickyなこともできたり、考えたりすることができるのであろう。

 では、この基本というものは、どこにあるのだろうか。実験、研究をしていると、まず最初、研究室に入ったとき、右も左もわからない。どうしたらよいのかも。そんなとき、まずは、諸先輩方が何をしているのかを、観察することから始まる。早くに来てみて、先輩が何をやっているのかを、4年生の時は見ていた。自分の場合は、先輩というか、当時の助手をされていた鳥山(伸)先生であった。こんなことをしているのだなと言うことを数日観察していれば、覚えることができる。では、その先生よりも先に来て、やってみること、これで日常の基本を身につけたような気がする。では、実験はというと。。自家不和合性の研究を直接やっていた大学院生の先輩はいなくて、何がわからなくても、最初は、教授の日向先生に話を聞かないとできなかった。昔の論文から、今の論文まで。どんな研究があるのかということについても。。。そうした、昔の研究をふりかえるとき、実際にやってみようとすると、うまくいったり、いかなかったり。。。結構そうした時がある。逆に、古い記述を調べていたら、自分が今やろうとしていたことを書いてあったり。そうした基本を学ぶ時、昔というか、過去の事実をきちんと再確認、再評価することが、真の事実を突き止めるための、近道という言い方はおかしいかもしれないが、あるべき姿ではないだろうか。そんなことを考えながらの、愛媛出張であった。

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 わたなべしるす

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