シクロブタン型ピリミジン二量体(CPD)光回復酵素の
リン酸化修飾が酵素機能に与える影響に関する解析


イネは、品種間でUVB抵抗性が異なります((Hidema et al. 1996, Plant Cell Physiol..)。UVB感受性を示す品種では、UVBによって特異的に生成され、DNA複製や転写阻害、さらには突然変異をも引き起こすDNA損傷(シクロブタン型ピリミジン二量体:CPD)を修復する光依存性の光回復酵素の活性が、イネ品種間のUVB抵抗性の程度を決定する主要因であることを証明してきました [これまでの研究テーマ(1))参照]。

CPD光回復酵素 (CPD photolyase: EC4.1.99.3) は、紫外線照射によってDNA上に生じたCPDを、光依存的にピリミジン単量体に回復させる酵素です。大腸菌、酵母、昆虫、魚類、両生類、爬虫類から植物まで、多くの生物がもつ酵素ですが、ヒトを含む胎生ほ乳類には見出されていません。私たちは、イネからCPD光回復酵素タンパク質を精製し、その諸性質を解析しました。その結果、イネCPD光回復酵素はリン酸化修飾を受けているという事実を見出しました(図4、Teranishi et al. 2008, Plant Physiol.)。


(図4)


(A) イネ精製CPD光回復酵素 (レーン1-3) と大腸菌発現イネCPD光回復酵素 (レーン4-6) をλ-protein phosphatase (λ-PPase) を加えた条件 (レーン2, 3, 5, 6) または加えない条件 (レーン1, 4)、さらにλ-PPaseの阻害剤であるEDTAを加えた条件 (レーン3, 6) で反応させた。反応後、7.5% SDSポリアクリルアミドゲルを用いて電気泳動し、銀染色を行った。 (B) イネ精製CPD光回復酵素と大腸菌発現イネCPD光回復酵素を7.5% SDSポリアクリルアミドゲルにて電気泳動し、リン酸化タンパク質特異的染色試薬 (Pro-Q Diamond phosphoprotein gel stain) にて染色した。検出後、ゲルをSYPRO Ruby ptrotein gel stain にて染色した。


現在、イネCPD光回復酵素のリン酸化修飾が、イネ生体内での酵素機能にどのような影響を与えているのかに関して解析を進めています。タンパク質のリン酸化修飾は、タンパク質構造やタンパク質間相互作用の変化などを通じ、タンパク質機能を制御することが知られており、様々なシグナル伝達系においても機能しています。植物は、微生物や動物とは異なり、太陽光を浴びて光合成を行うことが生存に必須であるため、紫外線を含む環境下で進化を遂げてきました。そのため、植物は効率的にCPDを修復する機構を有していると考えられ、CPD光回復酵素のリン酸化修飾が、他の生物とは異なる植物独自の酵素機能の調節機構に関わっている可能性も高いと考え、解析を進めています。


 
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