高等植物の紫外線B(UVB)耐性機構の解明と耐性遺伝子資源の開発

植物は、太陽から放射される光を「エネルギー源」、「環境情報源」として利用すると同時に、太陽光に含まれる有害な紫外線B(UVB: 280-320 nm)による障害を巧みに修復しながら生命を営んでいます。UVBは、遺伝情報の担い手であるDNAやタンパク質に直接損傷を引き起こし、さらには細胞分裂阻害、細胞死、タンパク質合成阻害、光合成活性の低下、そして収量の低下など、様々な障害を引き起こします。したがって、この驚異的なUVBを常に浴びながら生命を営む植物においては、UVBに対する防御機構は必須の機能です。

近年、急速な人間活動の高まりにより、地球環境は大幅に変わろうとしています。中でも、成層圏オゾン層の減少は、地上に到達するUVB量を増加させています。
このUVB量の増加は、皮膚ガン誘発などの人体に対する直接的な影響だけでなく、生態系全体に影響を及ぼし、植物に及ぼす影響は食糧問題にも直接関わるため、今日その影響が世界的に危惧されています。

私たちの研究分野では、植物が有する特有の光環境適応戦略機構を理解し、応用することを目的に、特にUVB量の増大が植物の生活に及ぼす影響を光環境植物科学の視点から、まず個体レベルでの現象を生理学的に理解し、さらにその現象を細胞、分子レベルまで掘り下げて解析を進めています。そして、分子レベルで得られた結果を、細胞、個体レベル、さらにはフィールドに戻して検証を行います。すなわち、1つの現象を理解するために、分子(分子・生化学的解析)←→細胞(細胞生物学的解析)←→個体(生理学的解析)←→フィールド(生態学的解析)レベルで、統合的な解析を行い、最終目標として、高等植物の光障害防御・耐性機構を解明すると同時に、未来環境に耐性な遺伝子資源の探索と耐性品種の育種を目指しています。

本研究分野のキーワードは、高等植物、DNA損傷と修復機構、オルガネラ修復、DNA損傷修復酵素の構造と生体内機能、CPD光回復酵素リン酸化、突然変異、光環境ストレス応答、光適応戦略です。


現在進行中の研究テーマ

1. 太陽紫外線 (UVB)、およびUVB量の増加がイネの生育、収量、玄米の質に及ぼす影響 (詳細
2. UVB超耐性、感受性イネ突然変異体の作出と、変異原因遺伝子の解析を通した高等植物のUVB耐性機構に関する解析 (詳細
3. シクロブタン型ピリミジン二量体 (CPD) 光回復酵素のリン酸化修飾が酵素機能に与える影響に関する解析 (詳細
4. CPD光回復酵素の細胞内局在性とUVB耐性機構に関する解析 (詳細
5. 高等植物のCPDによる生育阻害機構の解明 −分子・細胞・個体レベルでの包括的解析ー (詳細
6. 高等植物におけるDNA損傷 (CPD, 6-4損傷) の動態と修復活性、ならびにUVB耐性機構に関する研究 (詳細
7. 植物における量子ビーム誘発突然変異の分子機構解明に関する研究 −イオンビームにより植物に誘発されるDNA損傷と変異スペクトラム、およびクロマチン構造の比較による量子ビーム誘発突然変異機構の解明 (詳細

これまでの研究テーマ

(1) CPD光回復酵素遺伝子の突然変異による構造変化と紫外線感受性に関する解析 (詳細)
(2) 野生イネのUVB耐性の解析と新規UVB耐性遺伝子資源の探索に関する研究 (詳細
(3) UVB防御におけるUV吸収物質 (フラボノイド類) の役割と意義について (詳細

 
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