研究内容のトップへ

A植物の低温適応におけるbZIP型転写因子の役割の解明



低温ストレスに対する生体防御
 温帯域や亜寒帯域に生育する植物種の多くは、プラス域の低温に数日間さらされることにより、より強い耐冷性、時には耐凍性を獲得することが知られている。この過程は低温馴化(cold acclimation)と呼ばれる。1985年、C. Guyらは、低温馴化したホウレンソウから調製したmRNAを無細胞系で翻訳したところ、馴化していないものに比べ複数の分子種に変化が見られたことを報告した。この結果は、低温処理によりmRNAの分子種の構成に変化が起こることを示した点で大きな意義がある。この後、種々の植物から多くの低温誘導性遺伝子が単離された(詳細は草野・宮嵜、植物代謝工学ハンドブック 平成14年、を参照されたい)。
 我々が、稲から低温誘導性遺伝子の1つとして単離したlip19遺伝子の産物(LIP19)は、148アミノ酸からなるbZIP(basic region leucine-zipper)タンパク質である。一般にbZIPタンパク質は二量体を形成し転写因子として機能するが、LIP19は核に局在するもののそれ自身では二量体形成能やDNA結合能を欠失している。そこで酵母two-hybrid法を用い、LIP19と相互作用するタンパク質を探索した。その結果、トウモロコシ由来のOBF1と高い相同性を示す新規なbZIPタンパク質OsOBF1を同定した。OsOBF1とlip19の稲葉身での空間的発現部位は同じであり、両遺伝子の低温に対する発現が相反することを踏まえ、LIP19の低温ストレス時の働きを考察した(図)。現在、このモデル図を検証している。タバコやシロイヌナズナのlip19ホモログ遺伝子(lip19サブファミリー遺伝子群と呼称している)についても平行して解析を進めている。