研究内容

花の性決定・性分化機構の解明

植物は一生を通じ固着生活を送るため、種の多様性を拡大・維持するためにも、生活環境に適応した生殖形態を必要とし、それぞれが多様な性表現を示すように進化を遂げたと考えられます。高等植物の性表現は、一般に一つの花の中に雄ずいと雌ずいをもつ両性花を着生する同性型ですが、ウリ科植物のように雄しべのみを持つ雄花と、雌しべのみを持つ雌花といった単性花を着生する雌雄異花植物も存在します。単性花をつける植物では、その雌雄性が植物ホルモンによって調節される例が知られています。とくにウリ科植物の花の性表現は、植物ホルモンであるエチレンやジベレリンによって制御される例が知られています。ウリ科植物であるキュウリの発生初期の花芽は、雄しべと雌しべの両生殖器官の原基を持っていますが、発育とともに一方の原基の発達が停止し雄花または雌花に分化します。このとき、エチレン量が多いと雌花に分化し、エチレン量が少ないと雄花に分化します。一方ジベレリンは雄性化を促進する方向に働きます。しかしながら、性分化制御においてこれらのホルモンがどこで発生しどのように作用しているかは未だによくわかっていません。そこで、当研究室では植物ホルモンによる性分化制御機構を分子レベルで理解するために、キュウリを材料として研究を進めてきました。当研究室はこれまでに、キュウリのエチレン受容体遺伝子、CS-ERSおよびCS-ETR2が、エチレンを介した花の性決定カスケードにおいて機能している可能性を見出し、キュウリの様々な品種を用いた遺伝解析によって、”F”遺伝子が担うエチレン生合成量と、”M”遺伝子が担うエチレン応答性の組み合わせにより、多彩な性表現が生まれるというモデルを提唱しました。現在、この遺伝学的モデルを分子生物学的に証明するために、エチレン合成・応答に関わる様々な遺伝子の発現・機能解析を進めています。




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