東北大学大学院生命科学研究科 植物分子育種分野 渡辺研究室

【最終発表】(素人2号)

2016年1月21日 (木)

こんにちは.素人二号です.弾丸投稿になってしまいますが,最終発表をさせていただきます.

植物の最新状態はこちら

ここまでの講義で学んだことから考えたことを書き連ねます.


 (1) 植物栽培をして思ったこと

 渡辺先生のもとでこのような形式の講義を受けるのは,2013年の基礎ゼミ2014年の展開ゼミを含め3回目になります.植物の栽培自体は小学生以来,趣味で行っており,加えて今年度は農学部圃場での野菜栽培の実習もあったので,大学に入学して以来気づけば植物観察の毎日でした.この講義の受講生の中には植物の栽培が小学生の理科(生活科)以来という人もいるようです.では慣れている私のほうがリードしていたかというとそうでもありません.今回も病気の発生がありましたし,生育も期待するほど芳しくありませんでした.どんなに慣れていたとしても植物栽培には予期せぬトラブルが常に付きまといます.以前私は青森県の専業農家のお宅に伺ったことがあります.そのとき,その農家さんは「農業は生まれてから死ぬまで,毎日が勉強」とおっしゃっていました.ベテランの農家さんでさえこのように言うのです.これは植物に限った話ではありませんが,生き物相手に,通説もマニュアルもないのだと強く感じました.私たちのような初学者にとってはわからないことだらけです.では,そんな計り知れない生き物の動向をどうしたら把握できるのか,どのようにすれば制御できるのかと考えるとき,必要なのがまさに「観察眼」なのだと思います.その農家の人の言った「毎日が勉強」とは,「未知のことが分かる」ということでもあるでしょうし,同時に「日々観察を怠らない」ということと捉えることができます.植物の栽培,こと作物の栽培では,芽生えから収穫までの一時期だけが順調であったとしても収穫できなければ意味がなくなってしまいますし,収穫直前で病気にかかって収穫なしということはままあります.このような事態は残念ながらプロでも発生してしまうようです(ここには,個人の技量の問題で解決できる範囲を超えた品種育成や土壌汚染の問題にも発展する内容なので省きます)しかし,このようなことは日々の観察によって少しでも減らすことができるとだんだん気づくことができるようになってきました.そのために重要なことの一つが「小さな変化を見出す」ことだと思います.

 前置きが長くなってしまいましたが,野菜栽培においてはすでによく知られた基本事項(生育適温,適水量,施肥,病害虫...etc.)を考慮することも当然重要です.しかし,これに加え日々の観察,予期せぬ事態には原因究明や対策を講じ,試行錯誤を惜しまないこと,時にはその基本事項に反するような対策も行うことが特に重要なのだと思います.


 (2)観察眼の波及効果

 上段で述べたように,私は趣味でも実習でも植物の栽培を行っているため,この講義で身に着けた観察眼はすぐさま自身の栽培するものに向けることができました.たとえば,徒長の兆候や葉色の変化などにすぐに気づき,大事に至る前に対応するなど.また,どれくらいの頻度で様子を見れば植物の異変に気付くことができるのかという感覚もだんだんとつかめるようになってきた気がします.そうすることで,最小限の観察で首尾よく植物を育てることができるようになってきたと自負しております.観察に不必要に多くの時間を割くことは,育てているものが単一・少量であれば別ですが,その時間をほかの植物の管理に使うことができると考えると必ずしも良いことではありません.観察眼というのはいかに短時間・少ない情報から変化を見出し,結論付けられるかという洞察力の深さであると考えております.

 加えて,この講義では野菜の鉢栽培を行いましたが,趣味では鑑賞植物を鉢栽培しており,実習では野菜を地植え栽培しています.このため,たとえば室内で窓際という生育環境が一致していても,本来直射日光下で風のある環境に育つ野菜と室内の環境に適応した鑑賞植物とでは生育の具合が全く異なりますし,観察対象が同じ「野菜」であっても,生育環境が異なるだけでその生育に大きく差が生まれることは畑の野菜と自分のものを比べてよくわかりました.このように,すでに自分の栽培している植物と今回の展開ゼミで栽培した植物の比較から学べることも多くありました.

 この講義で身に着けた観察眼は野菜の栽培に限らず,社会生活でも実生活でも役に立つと考えています.特に科学分野では新規性と正確性のある情報が強く要求されます.新たな事象・現象を見出すためには,小さな変化を発見しなければなりません.特に大きな発見につながるのはやはり地道な探求と「観察眼」でしょう.

(3) 「毎日の観察」から身についたこと

 この展開ゼミでは教材というか,観察の対象が生物であるため長期間放置することができず,一度枯らしてしまえば,諦めるか,振出しに戻ることになるという性格がありました.そのため,出席がほとんど無いにもかかわらず,決して楽なものではなかったと思います.枯らさないためにはわずかな兆候も見出さなければならないことを考えると,慣れないうちは文字通り毎日観察したくなるものです.しかし,これは特に私のような植物の栽培に親しんできたものに当てはまるのですが,慣れると「観察しなくなります」.誤解が無いように言っておくと,(2)にも書いた通り,一度に多くの植物を見なければならない場合,一つ一つにかけられる時間は限られてきますので,最小限の時間を使うべきということです.それは,扱う植物の種類や状態,季節,環境など多くの要因によって変わるので,たとえば「ほったらかしでも育つ」とか「病害虫に強い」という謳い文句で販売される家庭菜園向けの種苗を見かけることがありますが,このような作物であっても,確かに生育中の管理は少ないのかもしれませんが,苗づくりや収穫にかかる手間はほかの作物と変わらないなど,管理段階や時期によって労力も変わってゆきます.重要なことは,植物の管理や観察にも緩急をつけていかに効率的に行うかがポイントになってくるということです.むろん,栽培する植物が初めて見る種類の場合は頻繁に観察するに越したことはありません.そして,栽培を通して徐々に,どの時期の状態が安定しているか,やむを得ず長期的に管理できない場合はどうすればいいかなどの感覚を掴んでいくのが良いと思います.


 (4) 文章を書いてみて. 

 大学に入ってから早3年経ちましたが,文章を書く機会が格段に増えました.一口に文章といっても,レポート形式のものから,このブログに投稿させていただくようなものまで様々です.いずれにせよどのようにして要点を伝えるかが重要であると常に感じるようになりました.読み手に伝わりやすい文章とはどのようなものかを考えると以下の3点が重要です.それはまず,冒頭部分で文章の意図を伝え,末尾には要約した結論を記し,目につきやすい図や表の周りには特に重要な情報を付しておくというこの3点です.また,今回はありませんでしたがパワーポイントでプレゼンや発表などをする場合にはこの3点のみを抽出して簡潔なスライドを作るとわかりやすいと思われます.文章を作る際にはこれを逆に利用して,まずパワーポイントでプレゼンすることを想定し,数分の発表の間に伝えられそうな要点を考え,それらを冒頭と結論と図解に充てて骨組みとした後,肉付けとして本文で詳解をしていくというかたちにするとわかりやすい文章になると思います.特にこのゼミでは,なるべく長い文で詳しく書く必要があるため,このような工夫は文章全体のスタイルを引き締めるためにも必用であると思います.

 いずれにせよ,この展開ゼミを通して,文章で何かを紹介するには様々な工夫が必要であることが分かりました.そのためには,上述のように文章の中で特に目をつけやすいポイント(上述の3点)に重要な情報を載せたり,注目してほしい箇所は色やフォントを変えたり,あるいは行間を広くとって1ページ内の文字を少なくするなど,様々なことが考えられます.これからますます文章作成の機会が増えると思われますが,今後はこのようなことに注意して読みやすい文章を書けるように努力していきたいと思います.


(5) 展開ゼミで学んだこと

 以上,拙文を連ねてしまいましたが,この展開ゼミでは,植物観察への着眼点からレポート・文章の書き方にいたるまで,農学としても実生活への応用としても重要なことを多く学ぶことができました.また,私たちがブログへ記事を投稿し,渡辺先生がコメントを添える,それをほかの受講生が見て参考にして,参考にしたことを実践してまた記事を作成する...という一連の流れの中には,学生・教授間での双方向性のある緊密なコミュニケーションがあり,超学部的な学生間の交流もありました.このようなネットワークは研究の世界では特に重要であることを教えていただきましたが,殻にこもった研究は進まない.研究室の区切りに固執せず,大きなネットワークもつことが,結局自分たちの研究の大きな発展材料となるということを実感することができたのではないかと思います. さらに,その講義内容も単純な知識の吸収というだけではなく自発的に観察を行い,そこから得られた情報を考察し,次に活かすという取り組みを自ら行わなければなりません.このように,自ら投げかけた課題を解決して学習するというフィードバックのスタイルはまさに研究に通じるものであると考えられます.

 以上のように,行動の自発性と人的交流という研究に欠かせない事を学ぶことができたことはこの講義の大きな意義であったと言えます.

 まだ収穫していない作物については,今後も栽培を続けて最終的には調理に用いたいと思います.途中,農学部の実習圃場に植えようかとも考えましたが,この講義のコンセプトを尊重して最後まで鉢で栽培します.やはり,野菜は食べるところまでが「栽培」であると考えています.

コメント

素人二号さん

 遺伝の渡辺でございます。3期にわたり、渡辺の講義を受講してもらい、また、今期は、メンターとして、他の受講生をリードしてもらったのは、みんなによい刺激を与え、励みになったと思います。ベテラン農家の元で修行をされたことがあり、それが今回の講義にもいかされているというのは、素晴らしいです。言われるとおり、渡辺も栽培をしていても、今でも何か工夫できることがないか、あるいは、こんなことをやっても何でうまくいかないのかなど、たしかに考えることがありますね。

 「慣れ」、これは、確かに大事なことであり、危ないことですね。ついつい、大丈夫だろうと、。。。そんな時に限って、病気になったり、水やりを失敗したり。。。他の受講生も、同じようなことを経験した方もいるのではないでしょうか。また、文章を書くときのポイントもしっかりとらえていて、この点も他の受講生の参考になることです。是非、よんでほしいですね。渡辺がこのゼミで意図していることが、ほぼ完璧にカバーされていますので。

 この3期にわたる受講で身につけた観察眼を活かして、来年からの卒論で新規なすごいことを展開して下さい。これまでの経験で必ずすごいことができますので。楽しみにしております。何より、このゼミで培ったヒトのつながりを活かして。

 わたなべしるす

旧展開ゼミ