東北大学大学院生命科学研究科 植物分子育種分野 渡辺研究室

15.待ちわびた収穫と実食(農:佐々木美園)

2021年3月17日 (水)

 こんにちは、農学部の佐々木美園です。かなりお久しぶりですね!さいきんは寒さも和らぎ、春の暖かさを感じる日も増えてきてなんとなくウキウキしています。キビちゃんも暖かくなってきたからか、昼はひなたぼっこに勤しみ(写真参照)、夜は元気に走り回っています。迷惑なのでやめてほしいですね!

 さて、最終報告が終わってからかなり時間が空いてしまいましたが、先日無事、残っていた作物を収穫することができました。なのでようやく最後の記事を執筆していこうと思います。それでは、行ってみましょう。



〜目次〜

1.収穫
2.観察
3.実食
4.まとめ



1.収穫

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3月8日 9:08 気温15℃ 白菜152日目 ホウレンソウ119日目

最初に少し懺悔しておきますと、春休みに入って作物とともに実家に帰省したのはいいものの、観察をサボり気味になってしまっていました。その結果、久しぶりに様子を見てみたところ、白菜に花芽が形成されており、これはいかんと急いで収穫した次第です。幸い、ホウレンソウはまだ花芽が形成されていなかったため、手遅れになる前に白菜と同時に収穫することにしました。ちなみに、2月28日に、祖父のすすめもあり、地植えに移行してみたのですが期間が短かったため、あまり効果は得られなかったようです。収穫方法は、ホウレンソウはシャベルで根っこごと掘り出した後に、根についた水で土を洗い流し、白菜は根が長く伸びて引き抜けなかったため、茎の根元をはさみで切断しました。


2.観察

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 では、収穫したもののを観察していきましょう。収穫後の白菜の写真が上のものになります。こうしてみると、、、しっかり白菜の形をしている!完璧に結球とまでは行かないものの、中央付近の葉が立ち上がり、葉の付け根の方も丸みを帯びています。葉の付け根付近だけ見れば立派な白菜と言えるのでは無いでしょうか。しかし、一般的な白菜と違うのは、明らかに葉の緑色が濃いということでしょうか。普通の白菜ですと、葉の色はほぼ白色で、葉の先端付近は黄色に近い黄緑ですが、収穫した白菜は全体が鮮やかな緑色で、白菜というよりはキャベツのような色合いです。この色のせいでしょうか?ぱっと見がまるでチンゲンサイのようになってしまっていまいました。作物を育てることは出来ても、形を整えて育てるというのはなかなかに難しいと言うことを痛感しました。

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 またついでなので、出来てしまった花芽も見てみましょう。周囲の葉を全て取り除いて見やすくした写真が上のものです。さすがアブラナ科と言うべきでしょうか、見た目がアブラナの花に似ています。せっかくならば咲いている所も見てみたかったのですが、そこまで育てるとさすがに食べられなくなると思い断念せざるを得ませんでした。いつか時間があれば完璧な観賞用として白菜を育てて花を咲かせてみたいと思います。

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 次にホウレンソウを見ていきたいと思います。上の写真が収穫したホウレンソウです。研究室から譲り受けた頃に比べるととても大きくなりました。今回収穫するに当たって、残念ながら定規を当てることを忘れてしまったのですが、明らかに葉の長さが10cmを超えています。当初の目標が、葉の長さを10cm以上まで育てることだったので無事目標達成です。また、ホウレンソウの特徴である、根元の赤色もうっすらではありますが、付いてきています。さらに、この品種の特徴である、"縮み"も見られるようになりました。市販のホウレンソウと比べるとまだまだ小さいですが、栽培当初のひょろひょろした雑草のような見た目と比較すると、ずいぶんホウレンソウらしく立派に育ってくれました。栽培にかかった苦労を考えるとたいへん感慨深いです。


3.実食

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 さて、ではいよいよ実食していきたいと思います。今まではその作物ごとの成分表を載せていたのですが、今回収穫した作物はミックス収穫時の記事に該当する表が載っているので割愛させていただきます。なお、調理法ですが、白菜は可食部が多かったため単体で炒め物に、ホウレンソウは小さかったため卵とホウレンソウとともにスープにしました。出来た写真が上のものになります。

 気になる味ですが、白菜の炒め物の方は若干の苦みと食感のシャキシャキ間がいいアクセントとなって白菜だけの炒め物でも十分おいしく食べられました。試食して貰った妹と弟もなかなかの高評価です。しかし、収穫が若干遅れ花芽が形成されてしまったからでしょうか筋っぽさが出てきてしまっていました。また、白菜の割に苦みが出てしまったのも収穫の遅れが原因でしょう。そこまで気になるものでは無かったものの、この苦みのせいで白菜では無くコマツナの味に近くなってしまいました。結局、白菜を育てたものの、形は白菜、色はキャベツ、見た目はチンゲンサイ、味はコマツナというアブラナ科オンパレード、複雑怪奇なコナン君のような野菜ができあがっています。まあ、若干目標とは違ったもののおいしくいただけて、楽しんで栽培できたので良しとしましょう。

 続いてホウレンソウに移りましょう。ホウレンソウはスープにする前に、少し葉をちぎって生で食べてみました。こちらはしっかりホウレンソウの味をしている!よく噛むとじんわりと甘みも感じます。見た目だけで無く、味もしっかりホウレンソウになっていたことにまたもや感動しました。生で試食した後はいよいよ調理して実食です。できあがったスープを飲んでみると、若干煮すぎて食感は損なわれているものの、ハムにも卵にも負けずしっかり存在を主張していました。全ての具材が調和し合って優しい味という感じです。小学校の給食でこんな感じの汁物が出たなあ、、、と懐かしく思いながらおいしくいただきました。


4.まとめ

 いよいよ全ての作物が収穫、そして実食を迎えることが出来ました。日にちにして150日以上!長かったような短かったような、そして今まで知らなかった多くのことを身をもって学んだ日々でした。やはり手塩にかけて育てたものというのは味わい深く、収穫した野菜は洗練されたものではありませんでしたが市販のものとは違うおいしさを感じました。何かを育てるの言うのはこんなにも難しく、また楽しいものだと知ったので、今後も暇を見つけて何か育ててみたいと思います。

 さて、これで私の展開ゼミも終了です!お世話になった方々、お付き合いいただいた皆様、どうもありがとうございました!(2,576字)

コメント

佐々木さんこんにちは

 そちらのキビちゃんは季節感があるんですね。こちらのネコは年中ウダウダしていて、夜にうるさいことはありません。地震の時だけはストレスなのか狂ったように爪とぎをしますが......

 さて三月も半ば、こうして展開ゼミの報告をしてもらって大変嬉しく思います。通常報告より何倍も価値があるものです。北川さんのへのコメントにも言った通り、物事は終わってからが勝負であり、それこそが本物です。

 しかも今回報告は抽苔時期ということで収穫のタイムリミット、今年の生育を見る上で貴重なデータでもあります。

 ハクサイは播種から5カ月でこのような姿になりましたか。地植えなのはいいことですね。写真で見る限り土も良さげです。確かにぱっと見ではチンゲンサイのようです。結球はしませんでしたが、その片鱗は伺えます。葉の中央の白色部分もそれらしいです。葉の色は結球で遮光されることがありませんでしたから全体として緑色が強いですね。

 花芽の観察では見事にアブラナ科の特徴が出ています。というより昔の植物の分類では花の形態でグループ分けをしていたので、同じような特徴になります。今の分類法は遺伝子による新しい分類に置き換わりましたが、少数の例外を除いて従来の分類のままのグループにとどまっています。形態による分類法も非常に的確だったというわけです。

 食レポは炒め物というハクサイにしては珍しいものですね。そして見た目や味、アブラナ科フルコース! 面白いものです。ちなみに抽苔が始まると繊維質が硬くなり(花が倒れるのを防ぐため?)、甘みをもたらす糖分なんかが失われます。甘みがなくなるので苦みを感じるのか、あるいは葉に硝酸態窒素が過剰だったのか、それとも不要になった老廃物としての塩類が集積してしまったのかは分かりません。ただ言えることは野菜は「旬」で食べるのがやはり好ましいということです。スーパーで年中売られているような野菜でもやはり旬というものが存在し、味や栄養が変わります。そんなことを実感できますね。

 さて次にホウレンソウです。大きさは市販品より小さいのですが、これはしっかりホウレンソウです! 実にそれらしく見えます。葉の丸みや厚さ、生き生きした感じがとてもいいですね。抽苔に関してまだだったのは幸いです。そういえば私の家のホウレンソウも抽苔はしておらず、例年4月下旬頃になります。ホウレンソウの抽苔は日長に感受するところが大きく、例年同じ頃になります。ただし逆にいうと展開ゼミは生活光が当たって長日になってしまうことが多いので通常ではない早さになることがあります。そしてホウレンソウに比べるとハクサイなどのアブラナ科では日長だけではない要素がいくつかあります。寒さを経験すること、株の成長度合い、土壌窒素濃度などの影響を受けやすくなります。トータルして三月下旬になることが多くなります。

 そして野菜の品種改良では収穫時期をコントロールすることがメインなのですが、この花芽形成の感受性を強化したり失くしたり、とにかく変えられてきました。野菜ではありませんが菊は短日を感受して、通常10月に咲きます(二本松菊人形あたり)。その感受性を弱く改良し、12月に咲く寒菊という品種群があります。逆に感受性を高めて9月に咲く早咲き品種を作ったり、あるいは感受性をむしろ全く破壊して成長すれば咲く7,8月咲きの夏菊品種を作ったりしています。

 そしてそれでも補えない分は栽培技術でコントロールし、菊は全年出荷、イチゴなんかも全年出荷されています。

 さてホウレンソウの実食レポも良かったですね。しっかりそれらしい味がして。給食のスープとのことですが、実は近頃の給食は個別一人前配送の時代が近付いていて、横浜市の中学なんかではこの4月から一食330円の弁当セットになります。

 最後に、この展開ゼミを通して植物栽培の苦労と楽しさを知って頂けたことは感謝です。当研究室ではこの後も、卒業後も各種相談を気軽に受け付けますのでそれも知っておいて下さい。それではどうもお疲れ様でした!

ラボスタッフ・オガタ

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