CPD光回復酵素遺伝子の突然変異による構造変化と
紫外線感受性に関する解析


  

これまでに、広くアジア地域で栽培されているイネ200品種を材料に、UVBに対する抵抗性について検討を行ったところ、(1)UVBに対する抵抗性は、品種間で大きく異なること、(2)栽培地域が近く、同じ生態型に属する品種でもUVBに対する抵抗性は異なること、(3)日本で栽培されている品種の中でも、ササニシキはUVBに対して強い抵抗性を示すが、それと近縁関係にある農林1号は、UVBに対して感受性を示すことなどを見出してきました。

「なぜ同じイネであるにもかかわらず、品種間でUVB抵抗性は異なるのか?」UVB抵抗性の異なる種々のイネ品種を材料に、"抵抗性の違いに関係する因子"の探索を目指し解析を行ってきました。その結果、感受性を示す品種では、@UVBによって特異的に生成され、DNA複製や転写阻害、さらには突然変異をも引き起こすDNA損傷(シクロブタン型ピリミジン二量体:CPD)を修復する光依存性の光回復酵素の活性が低下している(Hidema et al. 1997, Plant Physiol)、Aこのような酵素活性の低下は、光回復酵素をコードする遺伝子の突然変異により、酵素の構造が変化したことに由来すること(図7、Hidema et al. 2001, Plant Cell, Teranishi et al. 2004, Plant Cell Physiol.)、B光回復酵素の活性を変化させる遺伝子内の突然変異は、品種間で数カ所見出され、遺伝子変異に由来する酵素活性の程度とUVB抵抗性の程度との間には、高い相関がみられること(図8、Hidema et al. 2005, Plant J., 2006, Invited Review Annals Bot)、C分子遺伝学的手法である量的遺伝子座解析(QTL解析)から、光回復酵素遺伝子の突然変異がUVB抵抗性の差異に寄与する割合は30〜50%と極めて高いこと(Sato et al. 2003, Theor. Applied genetics)、などを見出し、DNA損傷CPD光回復酵素の活性が、イネ品種間のUVB抵抗性の程度を決定する主要因であることを証明してきました((Hidema et al. 2007, Plant J.)。


(図7)


(図8)

イネは、アジア地域のみならずアメリカ、アフリカ、オーストラリアなど世界各地で栽培され、また様々な生態型に属するイネ品種が育種されています。従って、世界各地で栽培されるイネ品種間、さらには野生イネの中には、多種多様な変異がCPD光回復酵素遺伝子内に存在していることが予想されます。そこでこのようなイネ種を材料に、CPD光回復酵素の遺伝子型、活性、発現量を調査することで、@高い活性を有する光回復酵素を、UVBに高い抵抗性を示す植物の創出・育種に利用、ACPD光回復酵素の変異と活性から見た、タンパク質構造解析(3次元構造解析を含む)、に関する研究を行っています。


 
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