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同種および異種配偶子の
雌雄不均等融合により作出した受精卵の発生能

首都大学東京 大学院理工学研究科 岡本 龍史

 被子植物では重複受精の際、核相がnの卵細胞と2nの中央細胞が花粉管により胚のう内へと運ばれた2個の精細胞(核相n)とそれぞれ融合し、受精卵(2n)および一次胚乳細胞(3n)となり、それらが胚および胚乳へと発達し、種子が形成される。このため、受精卵・胚における母親(雌性)ゲノムと父親(雄性)ゲノムの比は1:1、一次胚乳細胞・胚乳におけるそれは2:1である。この雌雄ゲノムの量比は種子の形成過程に影響を及ぼし、異なる倍数体間の交配実験により、一般的に雌性ゲノム比の増加は種子サイズの低下を、雄性ゲノム比の増加は種子サイズの増大を促すこと、および、両親ゲノムの比がある閾値を超えると種子形成の進行が止まってしまうことが知られている。この雌雄ゲノム比は、種子形成時における胚乳の発達過程と密接に関連しており、この胚乳発達過程は、主に中央細胞、精細胞および胚乳ゲノムのエピジェネティック制御により調節をうけることが示されている。一方で、雌雄ゲノム比の変動は胚発生過程自体にはあまり影響を与えないことが示唆されているが、雌雄ゲノムの量比と受精卵発生の関係性を明瞭に示す解析例は少ない。また、倍数体間の交雑に加えて、異種間の交雑によっても種子の形成不全が生じる。この種子形成不全も胚乳の形成不全が主要因であるとされているが、交雑受精卵の発生過程における異種ゲノムの働きや存在状態などについての解析例も少ない。このように、「受精卵中の同種あるいは異種の雌雄ゲノム量比と胚発生の関係性」についての明確な知見は得られていない要因の一つとして、胚乳の形成不全の影響で発生がごく早い段階で停止してしまう初期胚を、直接的に解析することが困難であることが挙げられる。
 我々はこれまで、イネおよびトウモロコシ花から卵細胞および精細胞を単離したのち、それら配偶子を電気的に融合させるin vitro受精系を用いて、受精および初期胚発生過程の解析を進めてきた。本課題では、当該実験系を用いて、同種雌雄ゲノム比および異種ゲノムを任意の組み合わせで受精卵中に存在させ、それらゲノムが胚発生に与える影響を実験発生学的に示すとともに、胚発生過程における雌雄ゲノムの機能と異種ゲノム間の相関関係を明らかにすることを目的とする。

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