平成28年度文部科学省科学研究費補助金 新学術領域研究

平成28年度文部科学省科学研究費補助金 新学術領域研究

植物新種誕生原理植物新種誕生原理

Nagoya University Live Imaging Center

計画研究班

受精における種間障壁のメカニズム解明とその打破

植物の受精過程には、2 つの主要な種間障壁(2 セットの重要な鍵と鍵穴)が存在することが示唆されている。我々は、そのうちの一つ、受精のために分泌される花粉管誘引物質「LURE ペプチド」を発見した。異種植物の LURE 遺伝子を導入することにより、花粉管の誘引のみならず卵装置への進入が見られるなど、多段階のプロセスにおいて種の壁を大きく打破できる。興味深いことに、予備的な実験から 60~70アミノ酸からなるペプチドを、大幅にダウンサイズすることに成功した。この人工合成ペプチド(鍵)に加え、LURE の感知に必要なレセプター(鍵穴)同定の成果や、雌組織から分泌されて花粉管の LURE シグナリング経路を活性化する糖分子AMORの発見(鍵穴の活性化因子;末端の2糖を合成糖として与えるだけで活性を示す) 、新規蛍光分子の開発を基盤に、種特異性の制御を試みる。残された主要な障壁は、花粉管から精細胞を放出させるステップにある。この分子の同定と制御、さらにはゲノム倍化を極めて効率良く行う分子の開発により、種間障壁の理解と制御を達成する。
本研究では、有機合成化学とライブセル解析により、全計画班および公募班と連携する。これにより、技術開発を推進し、分野を先導する。また、上口班(構造生物学)、瀬々班(情報統計科学)と有機的に連携し、鍵と鍵穴の実態解明に、新しい異分野融合の技術で迫る。本研究は世界を先導する植物受精研究という特色があり、独自のライブセル研究に高い独創性がある。
領域代表である申請者が、本研究による自らの成果をもって、国内外のメディアとの強いつながりを通して強力に成果を発信し、広告塔として本領域の情報発信につとめる。本研究を異分野融合により着実に推進するための設備の多くは、名古屋大学を中心に既に整備されている。
本研究は、これまでに受けた研究費により発見してきた分子群、開発してきた技術、培ってきた異分野融合を領域全体の力で向上させ、分子作動実態に迫る新規性の高い研究である。

メンバ―リスト
  • 東山 哲也名古屋大学 トランスフォーマティブ生命分子研究所、東京大学大学院 理学系研究科
  • 金岡 雅浩名古屋大学 理学(系)研究科(研究院)
  • Bode Jeffrey名古屋大学 トランスフォーマティブ生命分子研究所
  • 吉田 大和東京大学 大学院理学系研究科
  • 伊丹 健一郎名古屋大学 トランスフォーマティブ生命分子研究所
  • 山口 茂弘名古屋大学 トランスフォーマティブ生命分子研究所
  • 佐藤 綾人名古屋大学 トランスフォーマティブ生命分子研究所