平成28年度文部科学省科学研究費補助金 新学術領域研究

平成28年度文部科学省科学研究費補助金 新学術領域研究

植物新種誕生原理植物新種誕生原理

Nagoya University Live Imaging Center

計画研究班

花成ホルモン・フロリゲンを起点とする花形成の「鍵と鍵穴」相互作用の解明

フロリゲン(正体はFTタンパク質)は植物の花芽分化を開始させる因子である。すなわち植物の生殖を開始する最初の決断を下すマスタースイッチであり、花の中で行われる生殖過程のすべてはフロリゲンから始まると言える。また、フロリゲンによる花芽形成のタイミングがずれる と、適切な相手からの花粉が届かなくなるため生殖の障壁となり、同時に、従来出会わなかった別の種の花粉が受粉する機会が増えて「新種誕生」が促進される。代表者はこれまでフロリ ゲンの分子機能を解明する研究を進め、フロリゲンの受容体を発見、活性本体となる複合体を 同定し、さらにフロリゲンがエピゲノムのリプログラミングを誘導することを発見してきた。 そしてこれらの研究の過程で、フロリゲンの分子機能が生殖過程を制御する「鍵と鍵穴」となる可能性を見出してきた。すなわちフロリゲン(鍵)と受容体(鍵穴)の相互作用、フロリゲンを含む転写複合体(鍵)と標的遺伝子の活性化(鍵穴)、及びフロリゲンが small RNA(鍵)を介したエピゲノム制御(鍵穴)を誘導する可能性である。
本研究では、これらの「鍵と鍵穴」の実体を分子レベルで解明することを目的としている。具体的には、以下の項目の解明を目指す。(1)フロリゲンによる花芽分化の「鍵と鍵穴」のイメージングと機能解明(東山班と共同研究)、(2)フロリゲンによるエピゲノム・リモデリングの分 子メカニズム解明(木下班、瀬々班と共同研究)、(3)新種誕生を再現した人工異質倍数体を用い、 フロリゲン複合体の構成要素の組み合わせが合成前の親と比較して変化した場合の、フロリゲ ン機能及びトランスクリプトーム、エピゲノムへのインパクトの解明(渡辺班、木下班、瀬々班と共同研究)。フロリゲンのイメージング及び花芽のエピゲノム解析の実験系は申請者が独自に開発した技術であり、研究を有効に進めることができる。

メンバ―リスト
  • 辻 寛之横浜市立大学 木原生物学研究所
  • 坂 智広横浜市立大学 木原生物学研究所