東北大学大学院生命科学研究科 植物分子育種分野 渡辺研究室

8.原因不明の白斑と原因の考察(農:佐々木美園)

2020年12月 6日 (日)

こんにちは、農学部の佐々木美園です。今回の写真はキビちゃんの「ごんぼ尻尾」が目立つ写真を選んでみました。キビちゃんは怪我をして尻尾が曲がったというわけでは無く、遺伝的な要因で元から曲がった尻尾を持っています。これを私の地元では「ごんぼ尻尾」と呼んでいて、高校生くらいまで普通に標準語だと思っていたのですが、通常は「カギ尻尾」と呼称するようですね。なんだかおしゃれ。ちなみに日本では尻尾がまっすぐで長い猫は猫又になる、という伝承があったためごんぼ尻尾の猫を好んで飼う風習があったようです。その結果、遺伝子に選別がかかり、他国よりもごんぼ尻尾の猫の割合が高くなっているのだとか。良品質のものを選別し、後世がその性質を引き継ぐ割合を高める畜産業と似たものを感じますね。

余談が長くなりましたが、やっと本編に入っていきたいと思います。私が育てる植物たちはガンガン品種改良されたものなので、結構強いだろうと思っていたのですが過信しすぎていたようです、、、。作物に少し傷がついてしまう事態が発生してしまいました。


~目次~

1.白菜の白い斑点

2.原因の考察

3.対策の考察

4.まとめ


1.白菜の白い斑点

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11月30日 8:55 気温5℃ 53日目

この日、いつものように写真を撮ろうとし所、白菜の葉の一部が傷付いていること気づきました。被害の様子は下の写真の通りで、葉の表面側から削り取られたようになっていて、一部が白く薄くなっていました。過去の写真を遡ってみたところ、11月26日からこの白斑が現れていることが判明しました。色が白くなっていると言うことは、葉緑体を多く含む柵状組織、海綿状組織も無くなってしまっているのかもしれません。幸い被害があった葉は1枚だけであり、今のところ広がる様子は見られないものの、葉緑体の欠損はすなわちエネルギー合成機構の欠損であり、生育に影響を与えかねません。なので、これ以上この白斑広がらないように原因究明と対策を練らないといけません。よって、以下の項目でそれらを考察していこうと思います。


2.原因の考察

白斑が現れた日の状況や各種ウェブサイト等を元に考察したところ、いくつかの原因が考えられました。

原因1:肥料不足

 前回の記事のコメントでオガタさんにも指摘していただいたのですが、肥料不足のためか葉の縁が黄色っぽくなっていました。さらに調べたところ、肥料の3大要素であるカリウムが不足すると、古い葉の先端から縁にかけて黄色くなり、斑点が出来たり枯れることがあることが判明しました。斑点が見られた葉が比較的初期に発生した葉であり、色の変化もこの条件に合致しているため原因としてかなり有力だと考えられます。

原因2:白斑病

 白菜の属するアブラナ科は白斑病にかかりやすいらしく、その発生維持期も晩秋から初冬と現在の時期に合致しています。特に降水量が多い場合に発生する傾向があるため、根張りの弱さから、水の過剰供給が疑われていた私の白菜にも発生したのではないかと考えられます。

原因3:間引きの際に傷つけてしまった

 この白斑が見られるようになった前日、つまり11月25日はちょうど白菜を間引いて3本から1本にした日でした。そのため、他の2本を間引く際に誤って傷つけた可能性があります。白斑が見られた位置がちょうど植木鉢の縁の上部付近なので、間引きの際に押しつけた、もしくは若干位置がずれ、葉が植木鉢に接するようになってしまったことが原因かと考えられます。

以上三つが考えられる理由になります。


3.対策の考察

いくつか原因が推測されたので、考えられる理由それぞれに対策を考えていきたいと思います。

原因1への対策:施肥

 原因1は肥料不足が原因であるため、対策は単純に施肥をすることで改善を図りたいと思います。

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12月4日 8:18 気温4℃ 57日目

ということで、二回目の施肥を行いました。一回目の施肥を行った際に、二回目は倍量与えても問題ない、とコメントをいただいたので今回は15粒与えてみました。前回同様、植物から遠い位置にパラパラと散布しました。これでしばらく様子を見てみたいと思います。

原因2への対策:水やりの制限

 白斑病は水分供給量が過剰であった場合に多く発生するため、今までよりも水やりの回数を制限していきたいと思います。今までは規則的に5日に1回ペースで水を与えていたのですが、今後は土の乾き具合を見て与える、変則的なペースにしたいと思います。本当は水はけと風通し、日当たりの良い場所に置ければさらに良いのですが、ベランダという限られたスペースでは断念せざるを得ませんでした。

原因3への対策:極力触れない

 間引きの際に触れることで傷つけてしまったならば、今後は極力触れる回数を減らすことで傷つくような機会を減らしていきたいと思います。


4.まとめ

 今回は白菜に起きたトラブルをメインに記事を書いてみました。で、その原因を考察するためにいろいろ調べてみたのですが、症状や原因が出るわ出るわで必要な情報を見つけるのがかなり大変でした、、。今回考えられた原因も確証を強く持てるものではありません。なんとか、現状の対策でうまくいってくれることを祈るばかりです。なんだかマイナス思考になってきましたが、ベストは尽くしたはずなので後はどんと構えて経過を観察していこうと思います。(2,141字)

コメント

佐々木さんこんにちは

 ネコの尻尾についての話は面白いですね! ネコの妖怪「猫又」にはそんな発生条件があったのですか。日本人の発想が面白く、そしてどうして尻尾の形とリンクしたのかも不思議です。

 ともあれそういう理由で遺伝子が選抜され、尻尾の曲がったネコが多いんですね。まさに「畜産業」です。ネコにとっては迷惑なんだろうと思いますが尻尾の役割も今一つ分かりませんので迷惑具合も分かりません。

 どうでもいいですが、「トカゲの尻尾切り」といいますがトカゲにとっては尻尾は栄養貯蔵器官らしくて、尻尾切りはとても手痛いことらしいです。そのため体の充分発達していない子供トカゲは尻尾切りしないとか。

 更にどうでもいいことですが、ネコが猫又になるには最低20年生きなくてはならないようです。かなりハードル高いですね。ネコは年をとると腎臓を悪くしてしまい、そこまで生きませんから。

 さて今回の記事では葉の「白斑」についてですね。

 白斑ではなく、葉の縁に枯れが入ったように見えますが、正直言ってこちらにも原因は分かりません。この時期のハクサイには決して珍しいことではなく研究室のハクサイや、普通の畑のハクサイにも見られます。

 ともあれその原因を探り、ネットで調べ、更に考察しているのは非常にいいことです。

 最初に「傷」ですが、有り得ることではありますが、対策としては気を付けるだけで済みます。次に白斑病について、本当にそうなら葉の縁に限らず、全般的に斑点状に枯れている部分ができます。そこはカビによって細胞が死んでいる部分ですね。今の状態とは異なるもので、斑点病とは違うでしょう。それと斑点病にしても植物へ致死性になるようなひどい病害ではなく、しかもこの季節は病害の進展も遅いものです。

 水やりについては病気のあるなしに関わらず鉢土の様子を見て決めるのはいいことです。常に湿っているようでは確かにやり過ぎですね。しかしながらこの季節は空気が乾燥していることと、時折バカ陽気になることがあります。うっかり油断して萎れたならばすぐに充分水をやって下さい。

 最後に肥料ですが、この日付で二回目の追肥は少し遅めです。ハクサイは肥料のやり過ぎにも耐える植物ですから心配せずに充分与えてやって下さい。葉の色全般が、比較するものがないので分かりにくくはありますがやや薄いものかと思います。その全般の色についてはカリウムよりも窒素量に関係しますが、ともあれ肥料切れを起こさないよう施肥には注意して下さい。

 そして調べられた通りカリウムは葉縁の枯れに確かに関係します。今の枯れの原因とも特定できませんが......

 理屈上から言うと、カリウムは植物体内で非常に移動しやすい元素であり、不足すると比較的不要と思われる部分(つまり古い葉、葉の縁)から真っ先に引き抜かれてしまいます。ちなみに対照的にカルシウムなんかは移動しにくい元素であり、不足すると成長点に近い部分(つまり新しい葉)から最初に枯れてきます。

 これまた全くどうでもいいことですが、カリウムというのは英語ではなく、英語ではポタシウム(つまり灰の元素、草木の灰はカリウムが多い)と言います。

 ともあれ丁寧に観察し、気付いたことから考察していくのは良いことです!

 ではまた期待して記事お待ちします。

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