東北大学大学院生命科学研究科 植物分子育種分野 渡辺研究室

番外編 空き地に生えていたツルマメを「ずんだ」にしてみた件 ー品種改良は偉大ー(農:小島蒼太)

2021年11月 1日 (月)

今回は番外編ということで、Zoomでの自己紹介の際に話したツルマメについての記事を挟もうと思います。

私はUH青葉山に住んでいるのですが、ある日、そこの裏にある空き地で大豆によく似た小さな豆(サヤの長さは2,3cmほど)を発見しました。調べてみると、どうやらその豆はツルマメというらしく、大豆の原種であるとのことでした。つまり、簡単に言ってしまえばツルマメを品種改良してできたのが大豆だというのです。

それを知った私が考えたのはただ一つ。

 

『食べるしかない!!』

 

ひとまずその場で40ほど収穫し、緑色のものを枝豆と同様に塩茹でにして食べてみました。

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ツルマメ一粒

 

写真の通り、豆一粒はわずか5mm程度。一粒だけではあまり味が分かりません。そこで、10粒ほど一気に食べてみると、、もうそれは「枝豆」そのものでした。枝豆独特の香りが口の中に広がり、手が止まらなくなります。

 

その日はそれで終わりましたが、その日の夜、ふとあることを思いついたのです。

 

『ずんだにしたら美味しいのでは?』

 

一度思いついてしまったら、もう止まれないのが僕の長所です(時にそれが短所に転じることもありますが)。1週間後、前の週よりもさらに大量に収穫し、早速ずんだ作りに取り掛かりました。

 

まずはツルマメたちを茹で、全てのサヤを取ります。これがなかなか大変。数が多い上に小さいため、かなり細かい作業を長時間やらなければなりませんでした。

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大量のツルマメ

 

ちなみに、ツルマメのサヤは内皮が枝豆よりもしっかりして硬い印象を受けました。食べるにはなかなか邪魔です。これも品種改良の過程で薄くなっていったのかなぁなんて考えながらサヤを剥き続けます。

 

むき終わったら、次に豆についている薄皮を剥がして取り除いていきます。当初は剥がすつもりはなかったのですが、すり鉢で潰そうとしたところ薄皮が剥がれたまま残ってしまったため、口当たりが悪くなってしまうと考え剥がすことにしました。また、ツルマメの薄皮は内皮と同様、豆のサイズに対して分厚い上に色も濃いため色味的にも剥がした方が良いと判断しました。枝豆の薄皮は食べていてもそんなに気になりませんよね。ここでも品種改良の偉大さを実感しました。

IMG_8591.jpg薄皮を剥き終わったツルマメ かなり枝豆に近い色

 

薄皮を剥き終わると、ついに最後の工程です。すり鉢に豆と砂糖を入れ、ひたすら潰していきます。私の家には乳鉢サイズのすり鉢しかありませんでしたが、豆の量的にはちょうど良い大きさでした。鍋いっぱいに茹でたはずの豆が、サヤをとったらこれだけしか残らないなんて、、それに比べて売られている枝豆はなんてぷっくり大きな豆になっていることか。品種改良の偉大さを、、(以下略)

そして、とうとう待望のずんだが出来上がりました!

IMG_8593.jpg完成したずんだ

 

どうですか、結構ずんだっぽいでしょう。食べてみると、もうそれはお店で売られているずんだと遜色ありません。美味い!ただ、忘れてはならないのが、この写真に写っているすり鉢は乳鉢サイズだということ。10口もしないうちに食べ終わってしまいました。作るのには数時間、食べるのは一瞬。寂しいですが、料理とはそういうもんですね。

現在はツルマメたちも枝豆から大豆になっているため、もうずんだを作ることはできませんが、興味がある人がいれば来年作ってみるのはいかがでしょうか。

コメント

農学部・小島さん

リモートのmeetingで話をしていたネタですね。ツルマメ(Glycine soja)、発見したのはたいしたものです。渡辺はアブラナ科の研究が長いので、アブラナ科に対しての反応が高くて、マメ科に反応できていません。書かれているように、一般的には栽培ダイズ(Glycine max)の祖先種と言われています。実際、ツルマメと栽培ダイズは交雑ができ、F1, F2を作出できます。

さて、ツルマメの莢の写真を撮影するとき、もの差しがほしかったですね。秘密の場所でのサンプリングの時にもの差しを持っているのは、ちょっと不自然というか、この人なに??と思われるかも知れないので。10粒程度をエダマメにして食べるだけでなく、そこからの発展がすごいですね。「ずんだ」の作成へのチャレンジ。大変と言うことをわかっていてやってみるところを評価したいですね。「ずんだ」ができる過程で、薄皮をとった方がよいとか、その場でどうすべきか判断していて、それをちゃんと文章化できるのがよいですね。サンプリング、茹でる、薄皮をとる、などの時間があると、さらなる臨場感があったと思います。と言うか、次にこんなことをやろうとする方への貴重な情報源になったような。。。

 学部、大学院、助手の時代を過ごした「植物育種学講座」の卒業生として「品種改良」の偉大さに、このチャレンジを通じて理解できたのはすごいと思います。わたなべも学部生、大学院生の時、ツクシ、菜花を加工したのを思い出したのでした。こんなチャレンジもwelcomeです。


 わたなべしるす