東北大学大学院生命科学研究科 植物分子育種分野 渡辺研究室

⑧ 大根赤房の悲劇 ー低温注意ー(農:小島蒼太)

2021年12月 3日 (金)

12月に入りました。今日の朝、青葉山には初雪が降りました!!朝の気温は5℃前後の日が多いですね。足の指の霜焼けに耐えながら今回も記事を書いていこうと思います。

一つお詫びです。前回の記事では設定のやり方をミスしてしまい、目次からは目的の段落に飛ぶことができないようになってしまっていました。また、私はGoogle Chromeで記事を作成しているのですが、これ以外のブラウザだと移動できないことも分かりました。申し訳ありません。

本日のTOPの写真は昨年の冬に行った蔵王での写真です。雪がほとんど降らない静岡から来た私にとって、この量の雪は興奮を通り越して恐怖です。ただ、この写真のような素晴らしい景色にも出会えるというのは雪山の大きな魅力だと思います。

さて、今回の記事は...先週の記事を上げた3日後から急激に大根赤房の元気がなくなってしまっていった様子をまとめようと思います。

 

目次


1. 大根赤房の萎凋

2. 考えられる原因

3. 無念の実食

4. まとめ


1. 大根赤房の萎凋

前回の記事を出した3日後の11/27(土)、大根赤房を見てみると少し萎れ気味で元気がない様子でした。木曜日に水をあげてからまだ3日しか経っていなかったため、少し妙に思いながらもただの水不足と考えて水をやりました。しかし、一向に萎凋が回復する様子が見られません。さらに2日が経ち、とうとう葉が乾燥してきてしまったため本格的に焦り始めて色々な方法を試してみたのですが、結局回復することはありませんでした。

IMG_9039.jpg11月29日 気温4.0℃

そして12月1日(水)(栽培開始から59日)に収穫を敢行することにしました。このときの葉はほとんど水分がなく、葉だけでなく茎にもシワがより、張りがなくなってしまっているような状態でした。

IMG_9045.jpg12月1日 気温未計測


2. 原因の考察と対処

なぜこんなことになってしまったのでしょうか。根が肥大化してきていたこともあり、私は最初は根が水を吸う量が増え、その分水が足りなくなってしまっただけだと考えました。しかし上でも記した通り、水をやらなかった期間が長いわけでもなく、水をやった後も葉は水分を失い続けていきました。そのため、今回の萎凋には単なる水不足ではない何か他の要因があるはずです。最初に思いついたのは日射量不足や肥料不足といったように、何かが不足しているということでした。しかし、より日の当たる場所に葉を移しても、肥料(即効性を期待し、水耕栽培用に用意していた液肥を与えました。)を追加で与えても、回復しません。病気の可能性も考えましたが、大根の葉が枯れてしまう病気(大根萎黄病)は気温の高い時期に発生しやすい(参照:病害虫・雑草の情報基地)となっていたため、これも違そうです。

そこで思いついたのが低温による障害です。萎凋が始まった日の数日前から、朝の気温は5℃前後と青葉山はかなり気温が低くなっていました。急いで赤房の生育温度を調べるために昔撮った種の袋の裏側の写真を見てみると、そこには『生育適温17~20℃』の記載が。ここ最近の青葉山は生育適温から10℃近く低い気温だったということが判明したのでした。

IMG_8435 Edited.jpg

また、収穫後に開いた鉢を使って地温を測ってみると気温が約7℃であるのに対して土の中の温度は約4℃でした。このことから、育てている環境が冷えやすいベランダのアスファルトに直置き(受け皿付き)で、使用している鉢も小さい(2.5号)というものであったために、土がベランダの床の冷却の影響をもろに受けていたということも分かりました。

IMG_9076.jpg

一方、インターネットからには大根は葉茎の耐寒性が強いとの情報もあります(参照:株式会社秀農業経営コンサルタント)。加えて、原因が低温にあるのではないかと思いついてから二日間、鉢をベランダから室内(平均で18℃前後)の窓際に移動させて栽培を続けてみたのですが、結局回復することはありませんでした。これがただ対応が遅すぎたからなのか、それとも原因は温度以外の別の点にあるからなのかは分かりません。ただ、これ以外に考えられる有力な理由が私の知識では存在せず、現段階ではこの気温の低下+土の温度の低下が萎凋の一番のファクターになっていたのではないかと考えています。


3. 無念の収穫・実食

前回の記事で赤房の葉のつき方に関する考察もしており、本当ならばもう少し観察したかったのですが、これ以上日が経つと葉が完全に干からびて食べられなくなってしまうと考え、収穫・実食を敢行することにしました。

 

収穫

写真の通り、土より上に出ている頭の部分は赤いですが下は白味が強いことは生育段階でも観察できていました。

根の色に関しては、種の袋の写真は根全体が真っ赤だったため、下部も薄いピンク色ぐらいにはなっているだろうと予想していました。また、頭の部分が1cm程度だったため、収穫できるサイズも直径1cm程度のひょろひょろしたものだろうと考えていました。

IMG_9046.jpg

・・・しかし、土を掘ってみると、そこには白い美肌の大根の姿が。

そしてさらに掘り進めると、下部が太くなっていることも判明。想像していたよりはかなり立派(?)で色白な大根が収穫されました。

IMG_9048.jpg

また、私が驚いたのは細い根が鉢全体に張り巡らされていたことです。大根のイメージ的にどうしても可食部の太い根だけで水を吸っているのではないかと考えがちですが、実際には先端部分から長く細い根が広がり、それによって水分や養分を吸収しているのだということが分かりました。これだけ根が張っていたのに急に水を一切吸わなくなってしまったのはやはり不思議です。

IMG_9049.jpg 

観察

根の上部には何か茎のようなものがこびりついていました。これは初生皮層というもので、この部分が最初に肥大化をし始め、これが剥脱することで吸肥力が上がり根が肥大化し始めるそうです。

IMG_9052.jpg

洗うとさらに根元の白さが際立つようになりました。一部分だけほんのりと薄いピンク色になっている部分も見られたため、これが本当だったらこれから赤くなっていったのかもしれません。日が当たらない部分でも赤色の色素は出てくるのは不思議だと思いました。

IMG_9058.jpg

内部は普通の大根と同じく白色です。葉とは異なり水分が多く、断面から水が染み出してきました。しかし、縦に切ってみたところ下部の方で"す"が入り始めている様子も観察できました。大根の"す"は根の水分不足によって生じてくるものであるようなので、これ以上栽培を続けていたらさらに悪化していたかもしれません。

IMG_9065.jpg

実食

今回は葉も根も一緒に食べようと考え、味噌汁にしました。根の部分は一部を生で食べてみましたが、辛味が強い印象を受けました。特に、よく食べる大根と同様、下部の方が辛味が強かったです。

IMG_9067.jpg

かなり水分が失われていた葉ですが、味噌汁に入れるとしっかりシャキシャキ感を取り戻してくれました。えぐみが少なく、おいしかったです。元気は無くなってしまいましたが、美味しく食べられたのは不幸中の幸いでした。


4. まとめ

大根赤房はかなり元気に育っていると思っており、これからも色々と観察を続けていこうと考えていただけにかなりショックでした。水や肥料だけでなく温度や日射量など様々なことに気を配らなければならない野菜栽培の難しさを再び痛感した一週間になりました。次に野菜栽培を一から始める際には、まず最初に種の袋の裏を熟読する・ネットや本などで調べるなどして、播種から収穫までの気温変化や生長段階に合わせた大まかなスケジュールを組んだ上でやっていこうと思います。

大根赤房がダウンしてしまった一方でミニ白菜たちは元気に育っています。しかし、こちらも生育適温よりもだいぶ気温が下回ってしまっているため、夜の間だけでも家の中での栽培に切り替えたほうが良いのかな?とも考えています。赤房の萎凋も急に起こったものです。ミニ白菜たちにも何が起きるかわかりません。油断せず、丁寧に面倒を見続けていこうと思います。(3241文字)

コメント

農学部・小島さん

ダイコンは何が起きたのでしょうか。渡辺にもわかりません。11/27からの経時的な植物と土の状態がわかると考えることができそうな気がしますが。縦に割れているのも気になります。急速に萎凋しているので、細菌で維管束が詰まると考えるのが、わかりやすいです。病気であれば。あるいは、水を控えすぎ。いずれかのように思います。あとは、肥料をやったときに、植物体に近すぎたのかも知れないですね。肥料やけ、肥料負けという現象でしょうか。朝の気温が4oCであれば大丈夫です。-5oCくらいになると、こうした萎凋が見られます。

「す」が入りそうになっていると言うことは、ぼちぼち、食べ時と言うことですね。辛みの感覚も味わえたのは何よりかと思います。栽培をしているといろいろなことが起きます。今回のことも何だったのか、原因がわかれば、次につながりますが、そうでないときは、こまめな観察の大事さを改めて考えるきっかけになれば。経験値が上がったと言うことで、他の作物の栽培に活かして下さい。


わたなべしるす