東北大学大学院生命科学研究科 植物分子育種分野 渡辺研究室

小松菜ついに実食(農:高橋悠太)

2023年1月 5日 (木)

こんにちは。高橋悠太です。

 先日、友達と大崎八幡宮に初詣に行ってきました。自分は何も買いませんでしたが、屋台もたくさんあり、にぎわっていました。おみくじやテレビでやっていた占いの結果、今年の運は悪くなさそうなので来年度に向けて頑張っていきたいと思います。

 さて、今回はついに小松菜の実食です。結果から言うと、とても美味しかったです。家族からも評判でした。これから、その詳細を書いていきたいと思います。

収穫した小松菜

 今回収穫できた小松菜は以下の通りである。5本あるうちの4本を収穫し、残りの1本はそのまま育ててみることにする。大きさは20~25cm程度になった。

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 実はゆでた後もしっかりと緑色を保つようにするにはコツがある。葉野菜などは、たっぷりの熱湯でゆでた後、流水で冷やすことで葉の緑を保つことができる。ではなぜこの方法が色を保つのに役立つのだろうか。その理由はタンパク質の性質から予測できる。葉は葉緑体を含み、それが葉を緑色に見せている。ゆでた場合細胞はタンパク質であるため、熱によって変性する。つまり、そこから葉緑素が抜けてしまうが、流水で締めることでそれを防ぐことができるのだろう。ちなみに小松菜は生でも食べられるらしい。小松菜と似た野菜であるほうれん草はシュウ酸という成分が多いため、あく抜きをしてから食べなければならない一方、小松菜はそれが少ないようだ。以下はゆでた後の小松菜である。

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味について

 今回収穫した小松菜年末の年越しそばと煮浸しにしていただいた。味は通常のスーパーで売っているものより甘く感じた。さらに、とても柔らかく食べやすい小松菜に仕上げることができた。これは、おそらく収穫してすぐだからである。野菜の甘みの源はショ糖である。ショ糖は生体内の呼吸において使用されるが、収穫した時点で植物が呼吸を停止させることはない。店頭に並べられている間も細胞自体は生きているため、呼吸がなされショ糖が消費される。つまり、甘みが失われていってしまう。今回のように収穫してからすぐに食べれば甘みがより強く感じられる。

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振り返って

 小松菜の生長について振り返ると生長60日目以降は大きな変化はなかったように思う。10~11月中は気温20℃前後、湿度50%前後で栽培していたが、12月に入って気温が15℃ほど、湿度30%前後で栽培する日が多くなった。小松菜は寒冷に強い野菜であり、これらの要因が味や成長速度にどの程度影響を与えたのかは不明である。しかし、植物は気温が低くなると凝固点降下などの要因から糖分を蓄積しようとする性質があるため、12月に入ってからの気温の低下は甘さに影響を与えているかもしれない。また、糖分を蓄積しようとした場合、呼吸などの代謝に使われる分が減少するため、生長速度が低下した可能性がある。栽培が終わってみると、小松菜の栽培難易度はそれほど高くなく初心者でも水やりと間引きが適切にできれば十分育てられることがわかった。


コメント

農学部 高橋さん

育種の渡辺です。あけましておめでとうございます。この講義も残すところ、この1ヶ月です。もう一息、頑張りましょう。というか、運勢がよいというのは新春から好調ですね。コマツナの実食、家族からの評価が高いというのがよいですね。また、5本のうち、4本を実食して残りを栽培継続という戦略も積極的ですね。勝負するときは、一気に。niceだと思います。市販のものよりも甘みがあったというのは、水、肥料などの管理がよかった賜物だと思います。また、収穫してから実食までの時間なども植物生理学というか、植物科学的にコメントがあるのがよいですね。収穫前の低温も効果的だったと思います。低温が当たってからのハクサイ、キャベツなどは甘いと言われますので。

それ以外については、1月9日にオガタさんからのコメントが投稿される予定です。それも参考にして下さい。


わたなべしるす





高橋さんこんにちは

 おお、初詣に行って来られるとは、トラディッショナルな行動で素晴らしいですね。大崎八幡宮、実は私は行ったことがないんですが、大勢の人が行くところなので賑やかで良かったことでしょう。あんまり人のいないところでは、寂しいし、出店もありませんから。

 おみくじの結果も良かったようで何よりです。私は「凶」とか見たことないんですが、実際にあるんでしょうか。一度は引いてみたいものです。本当に引いて、その年に何か凶事があったとすれば、一つの実証になり......それからの年で吉を引いたら慶事があるということになるわけです!

 そういえばうちの近所に「二柱神社」があります。そこでは何と「血液型別おみくじ」があるんです! スピリチュアルと生物学の合体、なんともアバンギャルドでいいですね! 貞子もびっくりです。

 そういや、八幡宮も含め、神社が何を祭っているのか知りません...... 稲荷様と神社の関係も知りませんし、私は日本人失格かも...... せいぜい出雲大社や伊勢神宮が日本の古来神を祭っていることくらいでしょうか(ちなみに出雲大社を見に行って驚いたのが綱の大きさ! これは一生に一度必見)。最近では、神社検定を受ける人が増えているとか、日本の伝統に目を向ける人が多くなったのはいいことなんでしょう。

 さて今回記事はコマツナの実食です。

 こちらとしてもせっかく展開ゼミで野菜栽培をしてもらった以上、収穫して実食してもらうのは喜びです。おまけにこれほど立派なコマツナを食べ、美味しいと感じてもらうのはとても嬉しいことですね。

 初めにそれぞれの株の大きさを見せていますが、これは大事なことです。この時期に、この日数で、この大きさになったことがデータの一つです。栽培のシメでもあるのできちんとしなくてはいけません。

 書かれてある注意事項「ゆでてもしっかり緑色を保つ」に関してはその通りだと思います。まあ、たいがいの葉物はゆでると細胞間の間隙に湯が入って透明度が増すので、より緑色になります。長時間煮てしまえば、葉緑素の変性によって褐色になってしまいますが、これを防ぐには幾つかのコツがあるようです。塩分を加えるとか......料理についてはあまり詳しく知りません。

 さてコマツナはソバの具材と煮浸し、どちらも美味しそうです。甘いのはよかったですね。ショ糖の呼吸による消費という考察、その通りだと思います。ちなみにこの甘さの変化は野菜の種類によって違います。エダマメやトウモロコシは分単位で変わるので、よく「湯を沸かしてから収穫」せよとまで言われています。本当の美味しさは収穫直後なんですね。逆にサツマイモはデンプンが糖化する日数が必要なので、収穫後一ヵ月は甘くないようです。

 最後の「気温と成長、甘さの考察」はその通りだと思います。ここで分かることは、わずか数℃の差が決定的な差になるということです。

 生物にとって温度はそれほど大事なんですね。ひいては、植物の栽培において「適期栽培」というのがどれほど大切かが分かるというものです。逆に言えば、適温の把握、そして保温技術の大事さも分かります。つまりまとめて言えば「作物学」「園芸学」「農業工学」がそれに関わる大事なことです。もちろん、「育種学」「土壌学」「病理学」「肥料学」も大事なことなんですが。

 私は、保温に関する農業工学について個人的に非常に興味を持っていて、断熱形式や、土壌熱利用、あるいは高効率ヒートポンプや風車水車といった分野が大好きです。ところが、あまり農学部では(特に東北大農学部では)それに対応する分野がなくて残念です。エコとか環境に直接関与するのが農学部の役割なのに......まあその分工学部がやってくれているようです。

 高橋さんは展開ゼミで肥料について言及されることが多かったように思いますが、窒素肥料を作るハーバー・ボッシュ法はなんと世界の全エネルギー消費量の1%以上を占めています。エネルギーの観点からも、低炭素化社会の観点からも、肥料は重要なものですね!

 さあ最終報告も近付く中、栽培も(せっかく一株残したのですから)続行しましょう。期待してお待ちします。

DSC_0021.JPG 青葉あさひ、なかなかいいキャラですな......

ラボスタッフ・オガタ