東北大学大学院生命科学研究科 植物分子育種分野 渡辺研究室

最終回 朝霧と浅漬けミックスを収穫(理:山本実永)

2023年2月 1日 (水)

最終回

 こんにちは。山本である。全ての科目の試験及び最終レポートを昨日終わらせ、やっとこの記事を書くところまでたどり着いた。思えばこの1月はとても忙しかった。中旬はずっと有機化学の勉強をしていた記憶しかなく、その後は最終レポートの締め切りと英語の試験勉強に追われていた記憶しかない。2月からは春休みが始まるので、そこでゆっくりと羽を伸ばしたい。さて、最終報告にも書いた通り、野菜は播種から96日目にあたる1月14日の時点で収穫した。今回は収穫についてと収穫後のことを書きたいと思う。

目次
1 朝霧の収穫とその後
2 浅漬けミックスの収穫とその後
3 最後に

1 朝霧の収穫とその後

>収穫

 朝霧は最初に出てきた4枚の本葉の内、1枚は相当前に欠け、2枚はしおれ、残りの1枚は黄色く変色している。それ以外の葉は、色に多少の違いはあるが元気である。もう少し本葉が伸びるかと思っていたが、あまり伸びなかった。そして、朝霧は12cmくらいの背丈で、市販のホウレンソウに比べると10㎝くらい低い。市販のホウレンソウの栽培にいかに手間がかかるかよく分かった。根から抜こうとしたが、なかなか抜けなかったため根元で切った。写真は上から順番に、収穫した朝霧の様子、しおれた葉と黄色く変色した葉、元気な葉、地面側から見た朝霧の様子である。

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>実食

 朝霧はおひたしにしてつゆをかけていただいた。とても甘かった。苦味やえぐみは全くなく、本当に甘かった。他の受講生の記事にあったが、この甘さはショ糖に由来するものだそうだ。また、収穫したての野菜では細胞の呼吸によってショ糖が消費されていないため、甘さがしっかりとあるそうだ。ここまで甘いホウレンソウは生まれて初めてだった。ちなみに、黄色く変色した葉も茹でて食べてみた。だが、しなしなとした食感で、味はつゆの味がした。言い換えると、葉本体にはほとんど味が無かった。喩えるならば、濡れたティッシュを口に含んでいる感じである。つゆの味がする噛み応えのないものが口の中を通るという奇妙な感じだった。写真は上から順番に、茹でる前の朝霧、茹で上がった朝霧の様子である。

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>後日談

 播種から114日目にあたる2月1日、手製の温室の片付けをした際に、朝霧の根を鉢から取り出そうとした。すると、根が鉢全体の土を掴んでいたため、鉢の形に土が取れるというとても珍妙なことになった。朝霧の根がどれくらい張っているのかということが気になっていたが、この様子を見ると、鉢いっぱいに広がっていたことが分かる。もしも畑に植えていたら、もっと広々と根を広げて大きく育っていたかもしれない(その点に関しては、先生やラボスタッフさんが試していると思う)。何はともあれ、根の広がり方は想像していたよりも遥かに大きかった。植物が水分を吸収する器官であるから、それくらい広がっていても当然かもしれない。写真は上から、鉢の形に取れた土を上から見た様子、横から見た様子である。

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2 浅漬けミックスの収穫とその後

>収穫

 浅漬けミックスは、種が入っていた袋によると4種類のミックスだそうだ。それらのうち、最後の収穫で残ったものは2種類だった。ただし、これは私が見分けられたのが2種類ということであり、実際は4種類あったのかもしれない。一つ目がカブのような大きい根ができているもので、二つ目が葉がかなり大きいものである。収穫する際、カブのような根を持つものは簡単に抜けたのだが、葉が大きいものはなかなか抜けなかった。そのため、朝霧同様に根元で切った。一番上の写真は収穫した浅漬けミックスすべてを写した写真。真ん中の写真は葉っぱが大きいものの写真で、一番下の写真は株のような根を持つものの写真である。

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>後日談

 播種から114日目となる2月1日、温室の片づけをした。この時に浅漬けミックスの根を鉢から取り出そうとしたところ、根が鉢土全てを抱えていたため、鉢の形に土が取れるということになった。朝霧が鉢いっぱいに広がっていたため、こうなることは十分に予想してはいたが、改めて見ると壮観である。ここまで密になっているのを見て疑問に思ったが、どれくらいの大きさの植木鉢ならもう少しゆったりと広がるのだろうか。写真は上から、鉢の形に取れた土を上から見た様子と横から見た様子である。

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3 最後に

 これで最終回を終わる。ここまで半年間読んでくれた皆さん、ありがとうございました。そして、来年度以降受講する皆さん、私の記事が皆さんの一助となったら幸いです。ここまで本当にありがとうございました。

コメント

理学部 山本さん

育種の渡辺です。1/31(火)までで試験、レポート提出が終わったということでしょうか。学部1年の時点で「有機化学」の講義があるのは、渡辺にはよいと思うのですが、大変だったようですね。渡辺は農学部で「有機化学」は2年前期に講義だったような。今と違って、夏休み明けというか、後期の講義前に試験だったような。分厚い教科書だったのと、当時の非水研(現在の多元研)の教員が担当だっただけ、覚えています。「求核置換反応・電子の偏り」という言葉だけ「脳みそ」に残っています。そんな試験が忙しい合間に、収穫物を並べ、写真を撮影しておいたのはよいことです。これまでのレポート経験から撮影時にどんな記事にするのか、イメージされていたのではないでしょうか。植物を上下から撮影したことで、植物に対するイメージは変わったでしょうか。通常、上からしか見ないですから。

DSCN0267.JPG一方で普段お目にかからない「地下部」について「根張り」を観察したのはよい着眼点です。スイカ、カボチャなどのウリ科の植物で言われることですが、つる(茎)が横に伸びたほど、根がその周辺まで伸びているので、施肥をするときはつるがある当たりにやるのがよいと。つまり、植物の根は水分、無機栄養を求めて伸びていると言うことです。植木ばちという制限がなければ、横に拡がるのが制限のために写真にあるような植木ばちの内側を根が巻いている状態になります。ホウレンソウ、浅漬けミックスのいずれもしっかりした根張りになっているのは、水をやりすぎず、また、引きすぎずというタイミングが保たれていたからだと思います。今回は実験として、また、畑がない状態で野菜を栽培しました。通常、鉢植えで栽培することはないと思います。市販の野菜の場合。渡辺が実験で栽培している植木ばちは8号鉢、つまり、5号鉢の4倍の体積でも同じように根張りが生じたり、水が抜けるための穴から根がガラス室内の土に拡がります。植物とはそんな動かないで何とかしようという進化形なのでしょう。たぶん。。

食レポもしっかりしているというか、甘みがあったのは寒さもあったと思いますが、肥料をできるだけ抑えたのも大きかったのだと思います。ほぼ1週間に1回という投稿ペースを守り、シラバスにあった様々なことを習得できたのではないでしょうか。文章の最後にあった「来年度以降受講する皆さん、私の記事が皆さんの一助となったら幸いです」という言葉がniceでした。不思議な縁でこの講義を取ってくれたのだと思います。大変だったこと、楽しかったことなどが次年度以降の講義に活かされることを期待しています。もちろん、植物関係等何かあればHPでもmailでもお知らせ下さい。半年間、お疲れさまでした。

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わたなべしるす

PS. コメントを書いたあと、植物の栽培をしている「ガラス室」の見回りに。毎日の見回りは植物の栽培には大事なポイントである。農学部で助手をしていた頃に研究室でまとめた冊子に当時、農業高校から研修に来られていた先生が書かれた最後の言葉に「主の足跡が一番のこやし」と。毎日観察することはそれくらい大事なことなのである。

で、肝腎の収穫した植物はコマツナ。大小6株が収穫できた。上のコメントに書いたとおり、植木鉢の底から根っこが出ていた。また、植木ばちから抜いて間もない状態なので、根は真っ白である。間引きをしなかったのでかなりの個体間差が。F1雑種品種なので種子の間に違いはないはず(F1雑種品種については「エッセンシャル 植物生理学」の153 page周辺を参照のこと)。このように差が出る原因は。。。。是非、誰かそんなことを解明されるとよいのでは。

DSCN4261.JPGDSCN4262.JPGDSCN4263.JPG他の受講生が新たな記事を書いたら、次の植物を収穫することにしたい。



山本さんこんにちは

 先ずは長期に渡る植物栽培、お疲れ様です!

 96日間ですか......長く感じたか、あっという間だったのか、やや暖かい秋だったのが今や厳冬になりました。

 そしてそして最終報告後の記事というところが素晴らしいと思います。ちょうど収穫で区切りということもありますが、最終報告後の記事はこちらにとって格別嬉しいことです。

 さて順番に見ると最初はホウレンソウです。背丈がなるほど市販のものより短いのですが、これは「露地栽培」であり「低温のため若干ロゼット状になっている」ことを考えれば順当です。今の季節、スーパーで「寒締めホウレンソウ」が出回っています。それもまた露地栽培のため、ビニールトンネル内で栽培した普通のホウレンソウとは全く姿が違います。肉厚で、葉が縮れていて、短く、記事のホウレンソウにそっくりであることが、見る機会があれば分かるはずです。

 手製温室は適度に作用したのではないでしょうか。露地に近いのですがやはり温度上昇の効果があるのでここまで葉が大きくなったと思います。

 食レポも「甘くて美味しい」という素晴らしいものです。栽培が良かったのはもちろんのこと、この季節ならではです。ショ糖のことに触れられていましたが、野菜によってショ糖の収穫後の増減は違います。一番急速に甘さが減少するのは、何といってもエダマメ、次にトウモロコシです。よくエダマメでは「お湯を沸かしてから収穫」しろと言われます。逆に、サツマイモなんかは収穫して一ヵ月置くと、デンプンが糖化して甘く感じます。面白いものですね。

 敢えて黄色い葉を食べてみたのもチャレンジャーです。むろん黄色い葉は細胞内の分解が進み、生じたアミノ酸や糖を植物本体へ送っていますから、残りは繊維分くらいなものです。味もその通りでしょう。

 その次は根の話ですね、記事で書かれた考察の通りだと思います。一つ付け加えれば、「根はその先端付近でしか水や肥料を吸収できない」のです。そのため、根が伸び続けないといけません。

 ホウレンソウよりも浅漬けミックスの方が、鉢に根が回っているのがよく分かります。これは多少大きい鉢でも同じようになるでしょう。ちなみにですが、鉢の周りが一番根が多く、中心部はそれほどでもないものです。

 このことは案外植物栽培に重要です。よく鉢花を「移植」しますね。それは最初から大きい鉢に植えてしまうと、根が一気に外側だけに回ってしまい、どうにもならなくなるためです。小さい鉢から徐々に大きな鉢に移し替えることで鉢の体積を有効に使えるようになります。

 このあたりは、園芸的にいくらでも話すことがあり、「ランは極端に小さい鉢の方が失敗しない」、「ガーベラやシャクヤクは根が再生しやすいのでかなり根を切っていい」、「果樹を鉢栽培すると早い年度で花をつける」、とかいろいろと。一つ、ミニ知識的に、「根は光を嫌う」ので、安い百均のプラ鉢は薄すぎて植物栽培に適さないことも言っておきます。

 最後に、おっしゃる通り山本さんの記事は来年度の受講生が間違いなく見るでしょう。投稿回数的にも、内容(温室とか)にも、見るべき点が多くありますから。他の授業とは違ってレポートが死蔵されることなく受け継がれるのは、良かれ悪しかれ特異です。改めてお疲れ様でした。

IMG_0158 (1).JPGラボスタッフ・オガタ