東北大学大学院生命科学研究科 植物分子育種分野 渡辺研究室

追加観察の総括(農:高橋悠太)

2023年2月 2日 (木)

こんにちは。高橋悠太です。

最後は雪の青葉山キャンパスの写真で締めたいと思います。今日は青葉山の図書館で自習していたのですが、やはり山だからか仙台駅周辺より寒く感じました。とはいえ中々きれいではありませんか。夜の青葉山は自分のお気に入りの景色です。

さて、今回は追加観察の総括として、小松菜、ちょい辛ミックスについてまとめていきたいと思います。

超小松菜

 当初はこのまま育て続けていたら縦に生長していくものだと考えていたが、それには限度があるようだ。最近は横に伸び続け、葉の数が増加し、見た目からしても普段目にする小松菜とは異なってきた。収穫時の葉の枚数は10枚を少し超える程度であったのに、今やこの小松菜の葉の枚数は21枚である。

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 また、茎の太さが著しく増加した。以下の写真の左側にあるのは、途中で間引きした小松菜の茎である。この茎の直径は1cmであるのに対し、栽培中の小松菜の茎は2cmと倍程度の太さである。

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 今回の収穫時期を超えた栽培によって、小松菜の寒さへの耐性と育ち方を理解することができた。予想とは違う育ち方をしたので、大変面白い結果となったと思う。正直もう美味しくなさそうなので、いっそのことこのまま観葉植物とすることにした。

ひょろひょろちょい辛ミックス

 ちょい辛ミックスについてであるが、結論からいうとあまり思った通りにいかなかった。その理由として考えられるのは、この寒さと乾燥である。逆にこの結果から、栽培する時期をずらしてしまうとどんなことになるのかを知ることができるので、失敗例としても読んでいただきたい。自分としては気温が寒すぎる(10℃くらい)のは分かっていたのだが、なんだかんだ大丈夫だろうという気持ちと、その気温で栽培するという好奇心からそのままにしてしまった。結果、以下の通りとなった。

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 上から、3cm間隔エリア、ばらまきエリア、密集エリアである。

 それぞれの発芽率は3cm間隔エリアでは、9/18(50%)。ばらまきエリアでは、7/18(38%)。密集エリアでは8/18(44%)。(※密集エリアの発芽率が前回より少ないのは、個体同士が重なっていたことによる誤認。)特徴としては、3cm間隔エリアとばらまきエリアそこまで変わりがなく、根ばかりが長い個体か散見された。また、葉は一部を除いてほぼ枯れてしまい、この環境下での生育の厳しさが分かる。一方密集エリアでは、個体同士がそれぞれ絡まり合っている状態だった。さらに、最も生育が進行していたのは予想に反してこの密集エリアであった。このような厳しい環境下では、集まった方が生き残り安いということなのだろうか。個体間の相互作用について調べることができれば、謎が解決するかもしれない。今回だけでは、前回の栽培程まで生長させられなかったため不十分であるが、予想に反した結果や寒冷耐性を観察することができたので意義があったと思う。


コメント

農学部 高橋さん

育種の渡辺です。最初の写真、寒そうですね。青葉山新キャンパスのメインストリートから農学部を背にして駅方面を見た写真でしょうか。農学部でイネの研究をやっていた先生から雨宮キャンパスの時代と比べると、青葉山新キャンパスでは、冬の気温が3-5oCくらい違うということを聞いたことがあります。

DSCN5817.JPGコマツナは「超小松菜」という名前をつけたのですね。niceです。状況に応じて、こうした名前を振ることで植物の様子が分かりますね。市販のコマツナが何枚の葉っぱを有しているのかが不明なので、スーパーの野菜コーナーに行ってみると、これでも食することはできるレベルかと思いますが。葉が形成される生長点(茎頂分裂組織)を見ることは難しいですが、写真を見る限り、花茎を形成している様子もないので、問題ないと思います(「エッセンシャル 植物生理学」の第2章、第5章を参照のこと)。もちろん、このまま観察を続けて、どうなるかというのを見るのも一興ですから、高橋さんの好みに合わせてやってみて下さい。花茎の生長を身近で見ることは意外とないと思いますので。気がついたら黄色い花が咲いている。ということが多いかと。

スプラウトは低温の影響ですね。渡辺が1年の時に過ごした向山のアパートは朝起きて台所においておいたボールの水が凍っていたことがありましたので。最近はそんなところにすんでいる学生さんは少ないのかも知れないですが、夜温が下がるのがだめだったのではないでしょうか。時間の許す範囲で投稿して下さい。

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わたなべしるす







高橋さんこんにちは

 青葉山のキャンパス......

 実は昔の農学部雨宮キャンパスを知っている者からすれば、正直今の青葉山キャンパスは「別物」、「別大学」に感じてしまいます。

 街中から遠く(地下鉄ができた分だけかなりマシではありますが)、そしてキレイ過ぎて!! まさに「白河の、清きに魚住みかねて、もとの濁りの田沼恋しき」、です。

 キャンパスの外見もキレイ、やたらデカイのですが、何よりもその内装! 真っ白で...... まるで病院のように感じます。いや壁色の問題というよりは「廊下に雑多な器具が出ていない」から余計そう思うわけです。新しいキャンパスなので各研究室が気を使って(互いに忖度して)廊下をキレイに保っている面もあり、また地震対策や労災基準が厳密なために器具を適当に置けないためにそうなる面もあり...... いいことといえばそうなんですが。キレイ過ぎて居場所を求めにくいというか、せっかく多目的室がいっぱいあるのに学生が溜まり場になりにくい...... これは現代の学生気質と、コロナ問題もあるのでしょうが......

 昔の農学部は、やたらと学生が学校に居たがり(寝る時間以外は全て学校になり、逆にいえば学校が生活)、そして何をしてるかといえばスポーツだったり飲み会だったり、半分以上(ひょっとして9割)遊びでした。それが悪いことかというと少なくとも「研究室同士の交流」という面で役に立っていましたね。ぶっちゃけ研究室同士の垣根は全く存在しませんでした。

 今、学際的研究・横断的研究が叫ばれています。そこまで大げさでなくとも、例えば遺伝子解析の得意な研究室が、生態学の研究室にその研究手法を持ち込んで新しい知見を得るとか、あるいはビッグデータ解析の得意な研究室が作物生産の研究室に協力するとか、考えられます。そういった研究の「新しい芽」はフォーラムやシンポジウム開催から出るばかりではなく、クソ無駄そうな溜まり場の「適当な話」から出るのじゃないかと...... いやそれが昭和の発想ではありますが。

 今回の記事内容の話になりますが、超コマツナとは面白いですね!

 残してあった株がどんどん「葉が多く」「茎が太く」変わってきました。これはおっしゃる通り寒さの中で成長したために変容したのかもしれません。植物は寒いと最初に伸長を抑えにかかります。その分、葉を増やしたり横方向に成長するものです。

 しかし、ただ単に「コマツナ」としての収穫時期が植物体にとって「とても若い時期」であり、本来のコマツナのありように育っただけなのかもしれません。まあ私もコマツナを最後まで育てたことがないので分からないのですが...... ちなみに私はホウレンソウを自分の家の庭で毎年育てます。冬~春に育てると全く病害虫が出ないので育てやすいですから。すると、ホウレンソウは、収穫時期過ぎてもどんどん成長を続け、一枚の葉が50cmを越え、重さにすれば収穫適期ホウレンソウより100倍も重いものになります。これはちょっと誰もが驚く姿です。

 ちょい辛ミックス播種実験、非常に面白い実験だと注目していました。

 確かに寒いので結果的にキレイな結果が得られませんでした。それが分かるのは、本来なら発芽率が9割を超えていないとおかしいからです。ちなみに論文なんかでは極端な条件下で無理に差を出したような場合、査読者が鋭く見抜いてツッコミを入れて来るものです。査読者は追加実験を示唆し、それに対抗する論理を提示できないと論文はあえなくボツになります。

 しかしそれでも今回、面白いデータになりましたね! 密集して播いた方が発芽率がいい、そして根が絡まっていることです。植物の呼吸による二酸化炭素、あるいはホルモンとしてのエチレンの影響なんかを考えてしまいますが、実は誰もが知らない未知の生理活性物質の存在があるのかもしれません。根圏微生物はこの場合関係ないかもしれませんが。

 こういう思い付き、そして「ラフでもいいから実際に試してみること」は重要です! もちろん学生時代(大学院も含め)でも大事ですし、社会人になってからも大事です。高橋さんのそういう良いところがますます発揮されればいいですね!

DSC_0301.JPG 意味不明コラボ......

ラボスタッフ・オガタ