文部科学省科学研究費補助金「新学術領域研究」
これまでにDNAマーカーを用いた連鎖解析により,イネいもち病に対する抵抗性遺伝子座が同定されてきました。しかし、従来の連鎖解析を用いたQTL同定方法では、交配に用いた両品種間で多型を示すDNAマーカーを作成するステップにおいて多くの労力および時間を必要としました。今回、論文に掲載されたQTL-seq法は、次世代シーケンサーを用いることで、DNAマーカーを作成することなく迅速にQTL同定を可能にする技術です。
本方法を用いることで、従来のDNAマーカーを用いた連鎖解析によるQTL同定法と比較して、迅速かつ低コストでQTLを同定することが可能になりました。
Hiroki Takagi, Akira Abe, Kentaro Yoshida, Shunichi Kosugi, Satoshi Natsume, Chikako Mitsuoka, Aiko Uemura, Hiroe Utsushi, Muluneh Tamiru, Shohei Takuno, Hideki Innan, Liliana M. Cano, Sophien Kamoun and Ryohei Terauchi
The Plant Journal, 2013, DOI: 10.1111/tpj.12105
論文紹介 (寺内@岩手生工研)
高山班の連携研究者である名古屋大学東山哲也教授のグループから興味深い論文がPLoS Biology[10(12):e1001449, 2012]に発表されました。 詳しい内容は以下のリンクからたどって頂きたいと思います。 論文 http://www.plosbiology.org/article/info%3Adoi%2F10.1371%2Fjournal.pbio.1001449 東山研関連HP http://www.higashiyama-lab.com/news/2012/12/post_10.html 論文の主役はディフェンシンに類似のLUREと呼ばれるペプチドです。LUREペプチドは、植物の受精の過程で助細胞から分泌され、花粉管を誘引する活性を持つことが同グループから示されています(Okuda et al. Nature 2009)。今回の論文では、LUREペプチドが花粉管の誘引に重要なだけではなく、同種、異種の認識にも重要であることが示されています。シロイヌナズナ由来のLUREペプチドをトレニアに発現させると、シロイヌナズナの花粉管が誘引され、トレニアの胚嚢に侵入することが示されました。 植物のデイフェンシン様ペプチドは、非常に大きなマルチジーンファミリーを形成しており、シロイヌナズナでは300以上遺伝子が存在しています。また、アブラナでは同じファミリーに属するSP11/SCRは、自家不和合性を決定する重要な因子で自己認識に働いていることが高山グループから先駆的な仕事として示されています。さらに、トウモロコシでは、同じファミリーに属するMeg1遺伝子がインプリントされていることが示されており(Costa et al. 2012)、胚乳における生殖隔離にもデイフェンシン様ペプチド遺伝子のサブファミリーが関与している可能性も否めません。 (論文紹介:木下@奈良先端大)
「ライフサイエンス領域融合レビュー」より総説が公開となりました。「植物の生殖過程におけるエピジェネティックな情報のリプログラミング」というタイトルで、私どもの研究室の進捗を含めた本分野の最近の進捗をまとめております。