植物は病原菌の感染を認識するために細胞の表面に免疫受容体を持っている。病原菌の細胞壁成分であるキチンなどのオリゴ糖(少糖類)やフラジェリンなどのペプチド(タンパク質の断片)を目印として感知し、様々な防御反応を展開することが知られている。この免疫システムによって、植物は自然界に存在する何十万種にも及ぶ病原菌から身を守っている。我々は、イネを使って、植物の免疫システムがONになる瞬間を可視化し、そのメカニズムを世界に先駆けて発見した。可視化することによって、イネの細胞膜上で、病原菌が感染してから3分以内に免疫スイッチがONになっていることが明らかとなった。この成果は、セル ホスト&マイクローブ 誌 (Cell Press社、アメリカ) の平成25年4月17日付けの電子ジャーナル版に掲載された。

我々は、低分子量Gタンパク質OsRac1がイネの免疫において中枢を担うタンパク質であることを明らかにしている。しかしながら、OsRac1 による防御関連遺伝子の制御機構は、不明であった。OsRac1 による防御関連遺伝子の制御機構を明らかにする目的で、恒常的活性型のOsRac1 により発現誘導がされる転写因子を検索したところ、basic helix-loop-helix
型転写因子であるRac Immunity I (RAI1)を同定した。(RAI1) はPAL1 とWRKY19 等の防御関連遺伝子のプロモーター部位に直接結合して、遺伝子発現調節を行っていることが明らかになった。さらに、OsRac1 はMAPK3 あるいはMAPK6
によるリン酸化を介して転写因子RIM1 の活性を調節し、PAL1
とOsWRKY19 の発現を調節することが示唆された。