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【東北大】山元班の記事を表示しています

Nature Reviews Neuroscience誌のResearch Highlightsに成果が紹介されました

山元班の伊藤弘樹研究員を筆頭著者とするCell誌掲載の原著論文(Ito, H. et al., 2012, Cell 149, 1327-1338)が、Nature Reviews Neuroscience8月号のResearch Highlightsにて紹介されました。上記の原著論文では、ヒストン脱アセチル化酵素のHDAC1、ヘテロクロマチンタンパク質のHP1aを、転写補助因子のBonusが雄決定因子Fruitlessの標的サイトに呼び寄せ、一つ一つのニューロンに性分化をもたらすことをキイロショウジョウバエを用いて明らかにしており、クロマチン修飾と性差形成の一般的関係を示唆する成果として注目されています。

 

Whalley, K. (2012) A fruitless sexual switch, Nat. Rev. Neurosci. 13, 516.

http://www.nature.com/nrn/journal/v13/n8/full/nrn3290.html

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アウトリーチ活動

2012613日(水)、山元は公益財団法人東北活性化研究センターが主催する出前講座"ユニバーサイエンス"の講師として山形県立山形北高等学校を訪れ、理系クラスの2年生70余名を対象に、約1時間にわたり「性行動を生み出す脳と遺伝子のしくみ」と題して講演した。ショウジョウバエを材料に展開しているsatori変異体の最近の成果を紹介した後、ヒトのフェロモンへと話を広げ、たびたび笑いも取りながらなごやかに時を過ごした。講演後は数名の生徒から質問も出て、充実したひとときであった。

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研究成果がCellに掲載されました

 キイロショウジョウバエのfruitless遺伝子は、神経系に性差を作り出す主要因子であり、それを通じて行動の性差を生み出している。この遺伝子の産物であるFruitlessタンパク質はBTB-Zn-fingerファミリーに属し、雌の神経系には存在せず、雄の神経系の約2000個のニューロンに発現している。転写制御に関わることが推定されるものの、その作用機構はこれまで不明であった。今回、Fruitlessタンパク質が転写補助因子のBonus (TIF1s)を介して染色体上の標的サイト約100ヶ所にHDAC1またはHP1aを動員し、クロマチン状態を変化させることによってニューロンの性差を生み出すことを明らかにした。注目すべきことに、HDAC1Fruitlessの持つ雄化作用をサポートするのに対し、HP1aはこれに拮抗して脱雄化をもたらす。これらの因子を操作した際、単一ニューロンレベルでは、「性の中間状態」は認められず、「雄型ニューロン」と「雌型ニューロン」の割合が変化した。Fruitlessタンパク質は、その存否によってニューロンの性を転換するスイッチとして機能すると考えられる。

 

Ito, H., Sato, K., Koganezawa, M., Ote, M., Matsumoto, K., Hama, C. and Yamamoto, D. (2012) Fruitless recruits two antagonistic chromatin factors to establish single-neuron sexual dimorphism. Cell 149, 1327-1338.

 

図:唾腺染色体の免疫組織化学染色によってFruitless, Bonus, HP1aの局在を調べたもの


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研究成果がPLoS ONEに掲載されました

 キイロショウジョウバエのBtk29A遺伝子は、非受容体型のチロシンキナーゼをコードしています。これには二つのアイソフォームがあり、そのうちtype 2はヒトのX連鎖無ガンマグロブリン血症原因遺伝子産物であるBTKのオルソローグです。このBtk29A type 2産物を特異的に欠損したBtk29AficP突然変異体は、成虫期の寿命が顕著に短縮する表現型を示します。幼虫の脳及び成虫頭部、それぞれからRNAを抽出し、トランスクリプトーム解析を行ってBtk29AficP突然変異体とその復帰変異体(正常型)との間にどのような転写プロファイルの違いが生じているかを調べました。7004から7979種のRNAを比較した結果、発生ステージや組織が異なれば、Btk29A type 2の欠如によって影響を受ける下流の遺伝子群も著しく異なることがわかりました。すでに得られていたマウスBTKに関するトランスクリプトーム解析の結果との比較から、ショウジョウバエと哺乳類とでは、相同な遺伝子の変異であっても、それによって影響を受ける下流の遺伝子群は著しく異なることがわかりました。この研究により、相同な遺伝子の機能が進化の過程で系統ごとに変遷してゆくようすが明らかとなりました。



Nawaz, H. M., Kylsten, P., Hamada, N., Yamamoto, D., Smith, C.I.E., Lindvall, J. M.(2012) "Differential evolutionary wiring of the tyrosine kinase Btk." PLoS ONE. 7(5): e35640. doi:10.1371/journal.pone.0035640



PLoS ONE図.jpg


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