公募研究班
異質倍数体ゲノム安定化のバイオインフォマティクス
生物が持つ遺伝情報の全体であるゲノムは、生命活動を支える最も重要な基盤であり、それぞれの生物種において通常はほぼ安定した形で世代を越えて受け継がれる。一方で時に、真核生物、とりわけ植物のゲノム進化においては、異種由来のゲノムが融合することで異質倍数体ゲノム（ハイブリッドゲノム）が形作られることがある。ハイブリッドゲノムは生命の設計図であるゲノムを大幅に変化させ、生命進化の可能性を大きく広げる潜在力を持つが、ハイブリッドゲノムが誕生した後にそれが新たな生物種のゲノムとして受け継がれていくまでに安定化する仕組みは良くわかっていない。我々は最近、近縁種で2度独立にハイブリッドゲノムが生じたトリコスポロン属酵母のゲノム解析を行い、その安定化に遺伝子の進化速度の低下や転写・翻訳に関わる遺伝子の欠失が関わっていることを発見するなど、その安定化のしくみの一端を明らかにした。本研究では、これらの研究成果に基づき、異質倍数体ゲノムの安定化プロセス解明のためのバイオインフォマティクス研究を展開する。特に、異質倍数体ゲノム構造の安定化プロセスについて、情報と実験のハイブリッドアプローチによってこれを解明するための基盤を構築することを目指す。
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- 岩崎 渉東京大学 大学院理学系研究科