公募研究班

生殖過程の転写制御を担う鍵ホルダー分子DELLAと転写因子の複合体構造基盤解析

植物ホルモンのジベレリン（GA）は、植物細胞の伸長制御に機能するだけでなく、植物の有性生殖に必須な栄養成長から生殖成長への相転換、性決定、花粉管の伸長等の生殖過程の制御にも決定的な役割を果たしている。DELLAはGRASファミリーに属し、GAシグナルの抑制にはたらく最も重要な因子であるだけでなく、多様なクラスの転写因子と相互作用し、様々な細胞プロセスにおける遺伝子発現の調節に機能する。本研究では、多様な転写因子（鍵穴）との複合体形成に重要な複数の鍵構造もつ“鍵ホルダー分子”としてDELLAを捉え、花成の誘導制御に関わる転写因子を中心にDELLAとの複合体構造を解析することにより、各転写因子を選択的に制御するための鍵構造の解明を目指す。また、DELLA（鍵）とそれに制御される転写因子（鍵穴）はシロイヌナズナにおいて多数の重複遺伝子が存在することから、それらの複合体形成プロファイルも解析することで、鍵と鍵穴の適合度を規定する構造基盤の系統的な理解につなげる。
我々の研究グループではアブシシン酸受容体等の植物タンパク質の構造生物学に取り組み、連携研究者と共にタンパク質生産から複合体タンパク質の結晶化までの要素技術を整備している。タンパク質生産では、コムギ胚芽無細胞合成技術、封入体タンパク質高圧巻き戻し技術等を利用し、精製・結晶化では創薬等ライフサイエンス研究支援基盤事業で開発している抗体タグ技術等を活用して「鍵と鍵穴」の実態であるタンパク質複合体の構造解析を推進する。これら技術を基盤に上口班と有機的な連携を図ることにより、構造生物学研究の支援体制を強化し、領域内の各班との共同研究を通して種間障壁となる分子間の「鍵と鍵穴」の実態解明に貢献したい。本研究により得られた成果は、速やかに論文および国内外の学会で発表し、ホームページ等で広く社会に発信していく。

メンバ―リスト

• 宮川　拓也東京大学　大学院農学生命科学研究科
• 澤崎　達也愛媛大学　プロテオサイエンスセンター

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