平成28年度文部科学省科学研究費補助金 新学術領域研究

平成28年度文部科学省科学研究費補助金 新学術領域研究

植物新種誕生原理植物新種誕生原理

Nagoya University Live Imaging Center

公募研究班

2つの鍵穴をもつ転写因子が父鍵と母鍵と結合することで胚の体軸が形成される

新種が誕生するには、異種間での生殖によって生じた交雑胚が無事に発生する必要がある。しかし、同じ品種間の掛け合わせでさえ、交雑胚が奇形や致死になることが知られている。つまり、父母に由来する因子が適切に協働することが胚発生に重要だと考えられるが、どのような父母因子が胚発生の何を制御するかは未だ不明である。
本研究ではシロイヌナズナにおいて、母から受精卵に持ち込まれるHDG11/12転写因子と、父から持ち込まれる偽キナーゼ (SSP)がともに、どちらの親にも由来するWRKY2転写因子を介することで、胚発生の最初期に確立される体軸(頂端-基部軸)の形成を担うことを見出した。つまり、WRKY2は父母それぞれの鍵因子に対する2つの鍵穴を持つことで父母協働の中核を担い、この協働の下流で、受精卵の極性化や不等分裂といった体軸形成に重要なイベントが始まることを発見したのである。そこで本研究では、この研究を発展させ、父母の協働によって体軸が形成されるしくみを理解するべく、WRKY2の下流で働く遺伝子を網羅的に探索するとともに、体軸形成のさまざまな過程をライブイメージングする系を用い、父母因子の下流で体軸形成の何が・いつ・どのように制御されるかを特定する。さらに、得られた知見を元に、父母因子が適合しない交雑胚でも発生できる系を開発するべく、父母の協働効果を担うことのできる単一分子の作成も目指す。
本研究は、これまでに受けた研究費によって解明してきた父母由来の転写因子ネットワークと、培ってきた受精卵のライブイメージング技術とを融合することで、2つの鍵穴をもつWRKY2が父鍵であるSSPと母鍵であるHDG11/12と協働することで、胚の体軸形成の分子メカニズムに迫るという、新規性の高い研究である。

メンバ―リスト
  • 植田 美那子名古屋大学 トランスフォーマティブ生命分子研究所 (理学研究科 兼任)