公募研究班
花幹細胞の時空間性を司る複合鍵の解析
植物の生殖発生過程は、時空間特異的な遺伝子発現によってもたらされる。本研究の目的は、生殖過程における転写因子とエピジェネティック因子複合体の作用機構の解析を通して、時空間特異性の制御機構を理解することである。花発生過程において、幹細胞の増殖停止に機能する2つのZinc Finger domainをもつ相同転写因子であるSUPERMAN (SUP)とKNUCKLES (KNU)に着目し、それらのターゲット遺伝子選択性、およびその作用機構を比較解析する。花発生同調系を用いて、発生時間軸に沿ったDNaseI 高感受性解析・FAIRE解析によりクロマチン構造を解析する。同時に特定の修飾ヒストンの抗体を用いたChIPアッセイやポリコム因子のタグラインを用いたChIPアッセイにより、ヒストン修飾状態やポリコム因子の結合性を解析する。時間軸に沿った解析により、ターゲットサイトのエピジェネティック状態―クロマチンのオープン構造とヒストン修飾の解析により遺伝子発現との相関関係を探る。以上の比較解析により、シス配列である”鍵穴修飾”を介した時空間特異性の制御メカニズムを明らかにする。
また、ポリコム因子などのエピジェネティック因子とのタンパク質複合体からなる”複合鍵の解析として、SUPおよびKNUがそれぞれ結合する因子の同定をY2Hスクリーニングによって推し進め、さらにin vivoでの結合性を免疫沈降法(IP)によって解析する。
さらに、遺伝子発現の時空間性が、温度や日長などの環境因子によってどのように影響を受けるのかを解析し、変動環境下においても一定の決まった表現型をもたらす可塑性と頑強性の作用機序の解明も目指す。本研究は花幹細胞の増殖制御にかかわる遺伝子発現の時空間性の解明により、種分化に至る遺伝子発現制御の一端を解き明かすことを目指すものである。
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- 伊藤 寿朗奈良先端科学技術大学院大学 バイオサイエンス研究科