平成28年度文部科学省科学研究費補助金 新学術領域研究

平成28年度文部科学省科学研究費補助金 新学術領域研究

植物新種誕生原理植物新種誕生原理

Nagoya University Live Imaging Center

公募研究班

植物の配偶体形成で機能する膜融合装置の解析

膜交通は,オルガネラ間の物質輸送を担う真核生物に普遍的な細胞機能である.一方,膜交通の分子機構は系統毎に多様化し,それぞれの生物に特有の生命現象に深く関わっていることが知られている.植物の生殖過程においても,膜交通は非常に重要な役割を担うが,その詳細には未知な部分も多い.例えば被子植物の生殖細胞形成時に見られる細胞質分裂が,どのような分子のいかなる機能を基盤として実行されているのかについての理解は,胞子体における有糸分裂と比較し大きく遅れている.
SNAREは膜融合の特異性を決定するであり,古くから鍵と鍵穴に例えられている.シロイヌナズナの胞子体世代の細胞質分裂ではKNOLLEと呼ばれるSNAREが膜融合を実行することが知られているが,この変異体では生殖細胞形成には異常が見られない.我々は最近,これと異なるグループに属するSNAREの変異体が,花粉細胞の第一分裂時の隔壁形成に異常を示すことを見いだした.また,この変異体では,胚嚢細胞が核分裂を経た後に起こるべき細胞化にも異常があることが判明した.このことから,被子植物の胞子体と配偶体は,細胞質分裂のために異なる装置を用いている可能性がある.一方,基部陸上植物ゼニゴケの精子形成時の細胞分裂においては,KNOLLEのオルソログが分裂面に局在することを見いだした.そこで本申請研究では,コケ植物と被子植物における配偶子形成の際の細胞質分裂の仕組みを詳細に明らかにするとともに,両者の比較を通じ,膜交通の多様化がいかにして配偶子形成の進化と関連したのかを解明することを目指す.

メンバ―リスト
  • 海老根 一生基礎生物学研究所 細胞動態研究部門
  • 上田 貴志基礎生物学研究所 細胞動態研究部門