平成28年度文部科学省科学研究費補助金 新学術領域研究

平成28年度文部科学省科学研究費補助金 新学術領域研究

植物新種誕生原理植物新種誕生原理

Nagoya University Live Imaging Center

公募研究班(H31-32)

胚養育能をもつ受精非依存的胚乳の発生機構

胚乳は、次世代の植物となる胚を養育し、種皮形成を促す種子形成に必須な組織である。しかし、胚乳のどの要素が胚養育に必須なのか、そして、胚乳がどのようにして胚養育能力を獲得するのかについては未だ知見が少ない。
従来研究では、胚乳は受精以前にはエピジェネティックにその発生を抑制され、受精の後は、胚を養育する代謝物を蓄積し、多核化・細胞化を経て形成された胚乳細胞によって代謝物を胚へと供給するとされており、種子形成における胚乳の多核・細胞化の重要性が着目されてきた。一方で、応募者がシロイヌナズナから単離し、解析してきたESP(ENDOSPERM)改変株では、未受精で胚乳が肥大し(ESP胚乳)、この未受精胚乳は胚養育・種皮形成の能力を有する一方で、多核・細胞化は観察されなかった。ESP胚乳は、中央細胞が未受精で胚乳としての機能を獲得し、代謝物を蓄積することで肥大したと考えられる。この受精に依存しない中央細胞の肥大はこれまでに観察されてきた受精非依存的な多核・細胞化とは異なる現象である可能性が高い。
本研究では、ESPsが誘導した、細胞化せずに胚を養育する「ESP胚乳」を、中央細胞(未受精)と完全な胚乳(受精)の中間と位置づけ、ESP胚乳中の代謝物の分析や、その蓄積に関与する酵素類の遺伝子発現変動、代謝物蓄積による胚発生・種皮形成への影響などを解析することで、中央細胞が胚養育に必要な胚乳機能を獲得する過程の一端を明らかにする。
本研究によって胚乳の理解が進むことは、機能的な胚乳の人為的誘導による種の障壁の克服にも繋がり、新種誕生への貢献が期待できる。

メンバ―リスト
  • 池田 美穂埼玉大学 大学院理工学研究科
  • 光田 展隆産業技術総合研究所 生物プロセス研究部門
  • 大島 良美産業技術総合研究所 生物プロセス研究部門
  • 高崎 寛則埼玉大学 大学院理工学研究科