平成28年度文部科学省科学研究費補助金 新学術領域研究

平成28年度文部科学省科学研究費補助金 新学術領域研究

植物新種誕生原理植物新種誕生原理

Nagoya University Live Imaging Center

公募研究班(H31-32)

花成誘導の光周期依存経路における制御タンパク質複合体の構造基盤解明

種子植物の生殖過程は、花発生のための栄養成長から生殖成長への相転換からはじまる。植物はこの花成の誘導を自律的に、もしくは多様な環境条件に応じて適切に制御するため、分子間相互作用を介した複数の情報伝達経路をもつ。我々は、花成誘導の調節にはたらく植物ホルモンのジベレリン(GA)に着目し、GAシグナル伝達の抑制因子であるDELLAが花分裂組織の形成やブラシノステロイド(BR)応答の制御を担う転写因子等と直接相互作用することを見出し、DELLAが異なるタイプの複数の転写因子を認識して制御するための「鍵と鍵穴」の仕組みを解明すべく、構造生物学を軸に取り組んできた。本研究では、GAによる内因性の化学刺激で起こるDELLAを介した花成誘導の制御機構に加え、新たに環境応答の一つである光周期依存経路に着目し、光(外因性の物理刺激)に応答するE3ユビキチンリガーゼを介した制御機構の解析に取り組む。これにより、長日及び短日植物における花成調節因子の機能的差異を生み出す分子基盤(鍵と鍵穴の種間差)の理解を目指す。
研究グループでは、植物タンパク質の構造生物学の基盤となるタンパク質生産から複合体タンパク質の結晶化までの要素技術を整備している。タンパク質生産では、コムギ胚芽無細胞合成技術、封入体タンパク質高圧巻き戻し技術等を利用し、精製・結晶化では創薬等ライフサイエンス研究支援基盤事業で開発している結晶化タグ技術等を活用して「鍵と鍵穴」の実態であるタンパク質複合体の構造解析を推進する。上口班と有機的な連携を図ることで、これら技術による領域内の構造生物学研究の支援につとめ、種間障壁となる分子間の「鍵と鍵穴」の実態解明に貢献する。本研究により得られた成果は、速やかに論文および国内外の学会で発表し、ホームページ等で広く社会に発信していく。

メンバ―リスト
  • 宮川 拓也東京大学 大学院農学生命科学研究科
  • 澤崎 達也愛媛大学 プロテオサイエンスセンター