平成28年度文部科学省科学研究費補助金 新学術領域研究

平成28年度文部科学省科学研究費補助金 新学術領域研究

植物新種誕生原理植物新種誕生原理

Nagoya University Live Imaging Center

公募研究班(H31-32)

花粉管動態を可視化する耐光性近赤外蛍光分子ツールの創製

蛍光ライブイメージングは,植物の生殖過程に関与する「鍵と鍵穴」を分子レベルで機能解明するために有効な技術の一つである。蛍光タンパク質は,生命科学研究の飛躍的な発展に貢献したツールであるが,遺伝子導入技術が確立していない生物種も多い。これに対し,有機蛍光色素による染色は多様な植物種を対象に「その場で,すぐに染色」できることが利点の一つである。また,耐光性や近赤外蛍光特性など優れた特性をもつ分子を精密設計し,有機合成によりこれを手にすることができる。我々はこれまでの研究において,クロロフィルの自家蛍光の影響を受けない近赤外領域で細胞壁を染色できる蛍光染色剤の開発し,根,花粉管,上面表皮,柵状組織など様々な組織の細胞壁を染色することを示してきた。細胞壁は遺伝子工学手法が利用できない構造体の一つであるため,本染色剤は植物イメージング研究において非常に有用なツールになるものと考えている。
本研究では,有機蛍光色素と機能性ペプチドと組み合わせることで,花粉管動態のライブイメージングに資する独自性が高い分子ツールを創製し,有機合成化学的な側面から植物新種誕生の原理に迫る。具体的には,(1)花粉管特異的な染色法の確立,(2)二光子顕微鏡による植物深部イメージング技術の創出,(3)受容体1分子追跡を可能にする耐光性蛍光色素の開発の三つの課題を遂行する。有機蛍光色素による植物細胞の選択的染色法が確立できれば,色素の選択範囲が格段に広がる。また,我々が開発した近赤外蛍光色素は,多くの蛍光タンパク質とのクロストークがほとんどないため,マルチカラーイメージングに適している。したがって,多くの研究者にとって即戦力となる分子ツールであり,生殖過程の蛍光ライブイメージングの推進に大きく貢献する技術になるものと考える。

メンバ―リスト
  • 多喜 正泰名古屋大学 トランスフォーマティブ生命分子研究所
  • 佐藤 良勝名古屋大学 トランスフォーマティブ生命分子研究所