公募研究班（H31-32）

陸上植物の雌雄生殖細胞分化を担う鍵メカニズムの解析

陸上植物において、卵をはじめとする配偶体細胞の分化と、配偶体の性分化を担うメカニズムは未解明の部分が多い。代表者はこれまで、基部陸上植物である苔類ゼニゴケの変異株の分子遺伝学解析から、造卵器・造精器の始原細胞の分化とそれらを内包する生殖組織（生殖器托）の形成は、新奇なbHLH転写因子MpBONOBO (MpBNB)により一元的に制御されることを明らかにした。分子系統解析によると、MpBNBのオルソログは陸上植物の間で広く保存されていた。シロイヌナズナのBNB1およびBNB2は、花粉の雄原細胞の分化に冗長的に必要であり、その機能はゼニゴケのMpBNBで代替できた。これらのことから、BNBファミリーは陸上植物に共通する生殖細胞分化に必要な鍵因子であり、被子植物ではその機能は少なくとも雄側で保存されていることが示された。また、BNBは別のbHLH転写因子ファミリーと進化的に保存されたヘテロ二量体を形成して生殖細胞分化に関わるという示唆を得た。
本研究では、１）シロイヌナズナの第３のBNBファミリーメンバーであるBNB-LIKE (BNL)の機能を解析し、BNLが被子植物における雌性生殖細胞分化の鍵因子である可能性を検証する。またゼニゴケとの比較により、陸上植物進化の中でBNBファミリーがどのように機能分化したかを調べる。２）BNBファミリーの標的・下流遺伝子をゼニゴケとシロイヌナズナで比較し、生殖細胞分化のメカニズムの保存性と多様性を明らかにする。３）雌雄配偶体形成に関わる既知の鍵因子とBNBファミリーとの関係に注目し、配偶体の性分化のメカニズムと進化について明らかにする。
本研究の成果は、論文として速やかに発表するとともに、国際学会発表・プレスリリースなどを通じて広く社会に発信する。

メンバ―リスト

• 山岡　尚平京都大学　大学院生命科学研究科
• 河内　孝之京都大学　大学院生命科学研究科
• 荒木　崇京都大学　大学院生命科学研究科

• 公募研究班（H31-32）に戻る