平成28年度文部科学省科学研究費補助金 新学術領域研究

平成28年度文部科学省科学研究費補助金 新学術領域研究

植物新種誕生原理植物新種誕生原理

Nagoya University Live Imaging Center

公募研究班(H31-32)

蜜腺の形成と消失機構

多くの被子植物の花の内側基部には、蜜を分泌する特殊化した器官である蜜腺がある。この蜜を餌とするチョウやハチなどの昆虫、ハチドリなどの鳥類やコウモリが開花時に訪れることで、受粉の効率が高められる。蜜線は、開花にともなって蜜を分泌し、受精後には素早く細胞死を起こすと考えられている。植物と昆虫の共進化により、植物の花は複雑な立体構造を持つものへと多様化してきたと考えられており、蜜腺は進化の過程で、多様な種分化を生み出した重要な因子であるといえる。しかし、蜜腺がどこでどのように作られて、そして消えていくのかという分子メカニズムは、まだ分かっていない。我々はこれまでに蜜腺形成の鍵遺伝子であるCRC遺伝子は蜜腺以外にも雌しべ原基においても発現しており、オーキンの輸送に関わる膜タンパク質やオーキシン合成酵素遺伝子の発現を制御することで、花幹細胞の増殖抑制に機能することを示してきた。さらに、花発生過程における時間軸にそったエピジェネティック研究においても分野の発展に大きく貢献してきた。本申請研究では、新たにシロイヌナズナの蜜腺をモデル系として、蜜腺の形成と消失を制御する遺伝子カスケードを解明する。本研究はこれまでに受けた研究費により発見してきた新規分子群およびその作用機構、培ってきた時間軸に沿った花発生の植物ホルモンおよびエピジェネティックな解析技術にもとづき、新種誕生の基本原理の解明を目差す。本領域の中で、有機化学合成とライブセル技術と融合することにより、解析の解像度を飛躍的に向上させることにより、分野を大きく発展させることをめざす。

メンバ―リスト
  • 伊藤 寿朗奈良先端科学技術大学院大学 バイオサイエンス領域