平成28年度文部科学省科学研究費補助金 新学術領域研究

平成28年度文部科学省科学研究費補助金 新学術領域研究

植物新種誕生原理植物新種誕生原理

Nagoya University Live Imaging Center

公募研究班(H31-32)

野外環境における日長認識機構の分子実体の解明

生殖過程を成功させる第一段階は、適切な時期の花成誘導である。日長は花成時期を決定する主要な環境要因であり、その分子メカニズムは広く陸上植物に保存されている。シロイヌナズナなどの長日植物では、「長日条件の夕方 (鍵穴) に光シグナル (鍵) が入力されることでフロリゲンをコードするFT 遺伝子の発現が夕方に誘導される」、外的符合モデルが広く受け入れられている。しかし申請者らは、野外の長日条件ではFT の発現は朝と夕方に2 回誘導されることを見出した [Song,Kubota et al., Nature Plants, 2018]。また、日長の増加とともに朝のFT 発現は上昇し、それにより春先の花成応答が促進されることを複数の地域において確認した。しかし、既存の外的符合モデルは、夜明けを起点として一定時間後の夕方の光受容の有無で日長の差を認識すると考えるため、日長の増加に伴う朝のFT の発現量の変化を説明することができない。また、朝のFT 発現は、これまでの実験室条件では解析されてこなかったため、その生物学的意義はほとんど明らかにされていない。
そこで本研究では、新たな鍵-鍵穴ペアを想定し、夜明け (鍵穴) に受容される光シグナル (鍵) が朝のFT 発現を誘導する分子メカニズムの実体を明らかにする。具体的には、FT の主要な転写促進因子であるCONSTANS (CO) の翻訳後制御に着目するとともに、FT が発現する時間帯の違いにどのような生物学的意義があるかを明らかにする。本研究は、野外での栽培作物などへの応用性を担保しつつも、「朝のFT 発現」という新規性の高いトピックを扱っており、分野を超えたインパクトが期待される。

メンバ―リスト
  • 久保田 茜奈良先端科学技術大学院大学 先端科学技術研究科