東北大学大学院生命科学研究科 植物分子育種分野 渡辺研究室

豆苗後編(農:春日幹雄)

2017年1月18日 (水)

豆苗後編です。

まず前編のコメントを受けて、実験の目的と予想をまとめたいと思います。
目的としては、主に水ではない液体で豆苗は育つのか、その育ち方に違いはあるのかということ意識していました。生長を測り比較してその違いを明らかにし、理由を考えていきたいです。
予想としては三つとも上手く育たないと考えていました。特にコーヒーはカフェインが含まれているため育ちにくい、またはコーヒーを全く受け付けず芽が出てもすぐ枯れてしまうと予想しました。
準備していた時点ではこの程度にしか考えていませんでした。なぜカフェインが入っていると育ちにくいと判断したのかを追究したり、三つの液体の成分表を比較してもっと深く予想を立てるべきでした
全くもってサイエンスな実験ではないですね......自由研究っぽさに拍車がかかっています......

では続いて観察日記です。なお、書いていてややこしくなってきたので
水で育てている二つを水体
麦茶、米のとぎ汁、コーヒーで育てているものをそれぞれ麦体米体コーヒー体
スーパーで買ってきた豆苗をスーパー体とします。

11/24 23時頃 室内気温16度
水体二つは12センチにもなり、順調に育っております。
春日幹雄 1/18 2枚目
先端は黄色くなり少し垂れ下がっています。
こちらのサイトでは7~10センチになったら窓辺に移すと書いてありますし、暗室に置いた期間が長くて徒長しすぎたのでしょうか......。
春日幹雄 1/18 3枚目
麦体は10センチになり、水体より少し成長が遅れているようです。ですが、根を張り力強く生きています。
春日幹雄 1/18 4枚目
米体は12センチになり、水体とあまり変わらない速度で成長しています。先端が垂れ下がっている点も水体と共通しています。(写真に指が写ってしまいました、申し訳ありません)
春日幹雄 1/18 5枚目
コーヒー体はというと、3センチです......。相当遅れてはいますが芽も根も出ているのが確認できました。地道に成長しており、頑張ってほしいです。
春日幹雄 1/18 6枚目
スーパー体は8センチになりました。5センチの成長です。
なんと、コーヒーを除いたコップで育てているものに抜かされています。こちらの豆苗は日に当てている分徒長していないからでしょうか。
この日に麦体と米体は10センチを越えていたので窓辺に移しました。水体は一つは同様に窓辺に、もう一つは暗室に置いておきます。日に当てないとどうなるのか観察してみます。以下、水体の前者を窓辺体、後者を暗室体とします。
春日幹雄 1/18 7枚目
(写真は翌朝のもの、左からスーパー体、窓辺体、米体、麦体、茎ブロッコリー)
窓辺に移したものはこれから緑色になり市販されている豆苗のように変化するはずです。
その変化にエネルギーを使ってしまうため、一度追い抜かされたスーパー体が再度長さを上回るかもしれません。また、暗室体はどんどん徒長するかもしれません。レースのようでわくわくしてきました。

11/27 23時頃 室内気温20度
春日幹雄 1/18 8枚目
水体二つです。

左の暗室体は17センチ、右の窓辺体は14センチでした。やはり光に当てないほうが成長速度は速いです。
窓辺体は光のおかげで鮮やかな緑色となり、ピンと真っ直ぐ伸びています。一方暗室体は依然として曲がっています。コップのふちに支えられているようです。
春日幹雄 1/18 9枚目
左の麦体は12センチ、右の米体は13センチでした。大きさは窓辺体とあまり変わりませんが、順調に育っている種の数が違います。窓辺体は四つ育っているのに対して米体は三つ、麦体は二つです。やはり、水に比べて麦茶や米のとぎ汁の場合水分の吸収効率は悪く、上手く育たなかった種が多く出てくるのかもしれません。
春日幹雄 1/18 10枚目
コーヒー体です。網は汚くなって見栄えが悪く交換したいのですが、あまり豆苗に刺激を与えたくないのでそのままにしておきます。
長さは4.5センチになっていました。かろうじて成長していますが、やはり浸したときの水を利用しているのかもしれません......。
何か変化があることを期待して、まだ大きくなっていませんが窓辺に移しました。
スーパー体は11センチになっていました。麦体ですら追い抜かせない......。密集していること、二度目の成長であることが原因で成長が遅いのでしょうか。ですが、緑の鮮やかさは一番です。
それにしても、毎日六つの液体を入れ替えるのは思ったより大変です。さらに麦茶とコーヒーは一週間に一回、全て使い切らなくても買いなおしています。米のとぎ汁は貯めておいて、二日たったら捨て、新しいとぎ汁を作ります。おかげで自炊するようになりました。

12/5 20時頃 室内気温14度
この日に全て収穫しました。なお、味の違いがあるのか確かめるために生で一口食べてみました。
春日幹雄 1/18 11枚目
左が窓辺体で17センチになりました。味は当たり前ですが豆苗......。シャキシャキしています。これを基準に違いに気づいていきたいです。
右は暗室体で23センチになりました。爆発したように四方八方に広がり、一つは重さに耐え切れなくなったのか折れています。これを食べるのか......。少し勇気が必要でしたが、かじってみました。
うーん、もやしをとてもみずみずしくさせたような感じです。歯ごたえは柔らかく、あまりおいしくない......。たくさん食べたらお腹が痛くなりそう......。
暗室ということで水は蒸発しにくく、さらに栄養を光から作ることができないこと、水を吸いすぎていること、徒長していることから細胞壁が生成されにくい状態になっているのかもしれません。
春日幹雄 1/18
左は米体で14センチ、右は麦体で17センチでした。米体は少ししおれていますが、しおれる前は17センチでした。
どちらもあまり窓辺体と味は変わらず......。麦茶味の豆苗はできませんでした......。
春日幹雄 1/18 12枚目
コーヒー体は一つだけ弱弱しく10センチにまで伸びていました。これは窓辺においたことにより光を求めて刺激されたのでしょうか。
残りはどんどんしおれてしまい、3センチになっていました。
春日幹雄 1/18 13枚目
スーパー体はもっさもっさと生い茂っています。16センチに成長し、なんとか米体を抜かしました。米体がしおれていなければ負けていましたね......。
こちらも切り取り一口食べてみる。窓辺体と同じ味です。
窓辺体、麦体、米体、スーパー体の残りは味噌汁と株料理へ。株の葉に少し似ているので同じように使えばいいかなと考えました。
さて、収穫した後はもう一度育てることができますが、外泊の予定があったり、帰省したりと毎日液体を入れ替えることが困難になりそうなので止めておきます。

さて、最後に考察です。結果としては、米体と麦体は順調に成長し、コーヒー体は上手く育ちませんでした。ですが、予想を上回るほどの成長でした。
成長した麦茶と米のとぎ汁、成長しなかったコーヒー、この間の違いを調べてみました。なお、米のとぎ汁は米一合につき糠が15gでてくるということで(参考:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%A8%E3%81%8E%E6%B1%81)計算しました。
米のとぎ汁には炭水化物、脂質、たんぱく質が多く含まれており、麦茶とコーヒーはこの三大栄養素の量はあまり変わらないため関係ない、ミネラル成分も同様に米のとぎ汁に含まれている量が他の二つと比べて大変多いので関係ないと考えました。
そこで、コーヒーにしか含まれていない成分を調べてみるとタンニンとカフェインが出てきました。
カフェインは細胞分裂の際の仕切りの形成を阻害したり細胞内のカルシウムイオンの濃度を上げたりし、植物の成長阻害を引き起こすそうです。(参考:https://jspp.org/hiroba/q_and_a/detail.html?id=2388
タンニンについては、こちらのブログでの植物の成長阻害を起こすという記述しか見つかりませんでした。仕組みなどは分かりませんでした......。
以上より、カフェインタンニンの成長阻害作用により植物はコーヒーでは育ちにくいという結論を出しました。

これで今回の記事を終わりたいと思います。考察も貧相なものになり自由研究のようになってしまいましたが、自分で工夫して網を切ったり、結果が全く予測できない植物を育ててわくわくしたり、麦茶や米のとぎ汁でも育つことに感動したりととても楽しかったです。

コメント

春日さんこんにちは。

 後編、さっそくUPされてますね。いろいろ沢山のコップを用意して実験されてるようで面白いですね。

 それで、コメントはなんともつけ難くて正直困ってます。細かい所から言うと、まずせっかく写真をとるのであれば、メジャーを添えて真横から撮ってもらえればいいですね。学術論文では真横か真上かほぼどちらかです。

 また、実験系を一度に増やし過ぎて、各サンプル数が少なくなり過ぎです。各個体でばらつきが予想される場合、最低でも8個体は必要かな、と思います。

 各実験系は、市販豆苗かどうか、日に当てるのかどうか、一つだけ可変して下さい。

 味についても述べているのはいいことです。そこから考察するのは難しいのですが。

 考察全体としてなんともいえないのですが、各水溶液の成分的なところを後で調べたのでこうなったのですね。先に調べておけば、また違ったでしょう。

 とぎ汁について、植物は別に脂質を消化したり糖をそのまま根から吸収することはしません。あえて変化を考えるとしたら、発酵によるpH変化、それとも浸透圧の変化でしょうか。しかしなんともいえません。結果からみると変化があまりないのでマメは普通に水分として使っただけのようです。

 自炊が増えたのはいいことですが。

 コーヒーのカフェイン成分、調べればその濃度がわかりましたでしょうか。しかしこの場合も別にカフェインに限った話ではありません。想像に過ぎませんが、大きくポリフェノール類として発芽阻害成分を含んでいることが多いのです。コーヒーはさらに焙煎されてますので、わけのわからない発芽阻害物質になるかもしれません。よって、何がどう作用したのかはなんともいえません。また、この結果では発芽阻害なのか伸長阻害なのか微妙なところですね。

 一つ、いいことだと思ったのはとぎ汁やコーヒーをつくる方法・間隔も書いていることです。これは論文の中で実験を説明するのに必須のことですから。

最終報告もお待ちしています。 ラボスタッフ・オガタ