研究室で栽培している作物の様子(11/10)(渡辺 正夫)
2017年11月10日 (金)
皆さんこんにちは。ラボスタッフ・オガタです(写真撮影、文章はオガタくん、uploadは渡辺です)。今年は例年よりもアップ数の平均が低いようです。10月に日照・気温共に厳しいことが多く、初期成育が悪かったことも原因と思います。発芽しない、あるいは播き直しも散見されました。今時分、やっと全員が一番難しい初期成育を乗り切ったように思います。
そこで今回、このゼミ報告の一例と植物栽培の基本操作について画像で説明いたします。例年はこういうことはないのですが、今年は当研究室でも5鉢程植えていますので実例をお見せできます。
2017.11月10日 晴れ 最高気温19℃
最小限、記録時には日照と気温を記載して下さい。条件を明記するのが実験上の基本です。
植木鉢(皆さんのと同じ5号鉢です)に左からダイコン・ネギ・ミニハクサイ・ミニニンジン・ロマネスコが植えられています。用土は皆さんと同じです。栽培開始は皆さんとほぼ同じ10月7日、即ち5週間前です。置いている場所ですが、無加温の温室内(温度は外とあまり変わりません、大学内で適当に置くわけにもいかないので便宜そこを使っています)で日当たりは良くありません。具体的に直射日光が当たるのは全くの室外の1/3であり、これは皆さんの条件を想定して合わせています。
ここから種類ごとに説明します。
ロマネスコの横面です。背景はそこいらへんの白いものを使っています。メジャーも分かりますでしょうか。生育状況は本葉展開3枚です。
これが上面からの撮影になります。まだ子葉も緑色が退色していませんね。
画像が少しブレていますが、これがミニニンジンの横面です。草丈はせいぜい3、4cmですね。ニンジンは初期成育が遅いのでまだこの程度です。皆さんの中ではホウレンソウなども初期成育が遅いと思います。逆にハクサイやコマツナは初期成育が比較的良い植物になります。
これは上面からの撮影です。本葉はまだ2枚程度です。発芽率が良いのは意外でした。播種時の覆土など参考に撮影しておけば良かったですね。
これはミニハクサイの横面です。葉がしっかりとして色も均一なのが分かると思います。
上面からのものです。本葉は既に6枚展開しています。この大きさであれば間引いても食用に充分な大きさですね。
次はハネギの横面からの撮影です。拡大するとネギらしい姿ではありますが、いかんせん草丈10cmもなく、食べるには厳しいですね。特に葉が径2mmほどの細さです。
上面です。水やり時に倒れてしまったものもあります。単子葉で分かりにくいですが、まだ本葉一枚程度ですね。
これがダイコン(ハツカダイコンではない)の横面です。見えにくいですが2株重なっています。
上面からみると2株とも倒れてしまっているのが分かります。ハクサイと違ってダイコン(ハツカダイコンも)は胚軸の成長が良いようで、徒長気味になると直ぐに倒れてしまいます。間引きしたものを見るとハクサイよりも根張りも悪いですね。本葉展開は4枚、リファレンスが無いので示すのが難しいのですが葉の色は本来より薄いと思います。
さて、ここまで状況お分かりになりましたでしょうか。栽培に最適の条件ではありませんがここまで育ちました。皆さんと違って、風害、猫の害は無くて済みます。
ここから栽培の基本操作をお見せしましょう。
先ずは水やりについてですが、上記の鉢は水やり後まだ1日しか経っていません。まだ土は乾いていませんので、具体的なところは見せられないのですが、研究室の別のサンプルをお見せしましょう。
これが普通の状態です。土の色が黒ではなく、表面は乾いています。掘った状態の写真を撮っていないのですが、土の表面以外は、黒であり、手に粒子がくっついてきます。その程度が理想ですね。ただし、それを保てというのではなくやや乾いてから一気に水をやって下さい。鉢の縁より土が少ないのは水やりのためです。その土の少ない分(ウォータースペース)に一気に水やりして下さい。そして鉢底から水が出るのを慣れないうちは確認して下さい。慣れれば一回の水の量が分かってきます。
帰省時など長期家を空ける場合について、その日数や置き場によって対処を考えますので報告で教えて下さい。
次に間引きのタイミングについてです。
実は全て間引き後なのです。葉が重なってきたらぼちぼちのタイミングなのですが、皆さんは割に早めになる傾向がありますので、逆に葉が重なっても焦らずいきましょうと申し添えます。
いったん間引いたミニハクサイの間引き株を横に添えて撮影しました。この程度の時に間引いたのです。
これはロマネスコなのですが、同様にこの時に間引いています。
次に追肥についてお見せします。栽培開始から1ヶ月が経ち、土に最初から配合してある肥料成分が溶出した頃です。それと、植物の葉の色も薄めですので追肥を行ないます。その葉の色と肥料の関係は、農学部の人は学年上がってしっかりと勉強すると思います。植物栽培の基本中の基本ですから。
今はやっていないのかもしれませんが、昔は農学実験の一番初めに、各肥料成分の施肥状況の違いと実際収穫するジャガイモの収量の比較を行いました。おそらく学生を感動させる仕掛けだと思うのですが、見事なまでに違いがきれいに出たものです。
さて、鉢栽培の追肥の基本をお見せしましょう。
お渡しした化成肥料の粒を一つまみ、数で言えば7粒ほどを少し窪みを作って置いていきます。
一つの鉢に3か所ほどですね。置く位置ですが、鉢の縁に近く、植物からは距離をとって下さい。それでも肥料成分は届きます。根は、葉の大きさ以上には張っているものです。写真のような小さなロマネスコでも肥料の粒の近くに根はあると思います。逆に根に直接触れては浸透圧の関係もあり根を痛めます。
これはハクサイの例ですが、肥料が分かりますでしょうか。この後、肥料を隠すように土を被せて下さい。
追肥の時間的間隔ですが、大体10日間が目安です。この季節は根の動きが悪く、また植物も小さく吸い上げる量が少ないのでもう少し間隔を開けてもいいかもしれません。ですが、葉の色が薄く、また成長をもっとアクセラレーションしたい場合には、間隔を短くしてもいいかもしれませんね。
幸いにもその化成肥料は即効性ではありますが、一気に溶解しませんし、今回ゼミの植物は多肥に強い植物ですので。肥料については語るところが多く、キリがありませんのでこの辺にしておきます。興味がある方は調べて下さい。
さて、順番が相違しましたがせっかくの実験ですので、何かテーマを考え、測定箇所を自分で調べて経過を追うのがいいかもしれませんね。今回の受講生でも何人か独自に測定結果を出している人がいました。
最後に土寄せについてお見せします。土寄せは徒長の根本的解決ではないのですが、その害の多くを打ち消してくれます。つまり、株がグラグラして傷つくのを防ぐ、風に強くする、などです。徒長しなくてもダイコンやニンジンには必須の作業です。
ミニニンジンの作業前です。子葉までの胚軸がだいぶ土から出ていますね。
ここに土を足します。
拡大した写真です。土を足すのは小さい本葉が見える芽の部分に被らないようにして下さい。土について、報告のコメントで度々言った通り、自分で購入してもいいのですが当研究室に取りにきてもらっても歓迎します。
次はダイコンです。これも根が出てしまっていますね。
土を足していきます。
さて、ここからが肝要です。鉢植え用の土は軽い物が多く、土を寄せただけではグラつきを防げません。それに、徒長の度に土寄せを繰り返すと鉢から上に上がり過ぎてしまいます。
そのため、株の横に指をあてて、下に押し下げてやります。慎重にやって下さい。植物自体も根に引っ張られて少し沈むと思います。
本当はもう少し下げるのですが、無茶をする受講生も出てきますのでこの程度をお教えします。
そしてもう一度土を足して完成です。もう少し大きくなれば支柱という作戦も取れますが、先ずは土寄せをマスターして下さい。
それでは、皆様、続けて栽培管理をお願いします。
繰り返しですが、思わぬ事態になった時、自分で考える・ネットで調べる、も大事なことですが、素早く報告をして聞いて下さい。ネットは項目の羅列が多くて、はたしてどれが自分の場合に当てはまるのか判別が難しいと思います。というよりそれが判別できたら苦労ありません。
冬に突入するこの季節は、栽培のつまづきが生じれば早めの修正がカギになります。頑張って下さい。