東北大学大学院生命科学研究科 植物分子育種分野 渡辺研究室

ミニハクサイの水耕栽培(教:井上千晴)

2018年1月 8日 (月)

こんにちは。井上です。

1月7日は七草でした。山形では七草粥と一緒に納豆汁を食べます。納豆を潰して味噌と一緒にとかして味付けした郷土汁です。ニンジンや山菜、芋がらなどを入れてぽかぽかの納豆汁は豪華なお正月料理にびっくりしたお腹を休めてくれます。

今回は年末年始のミニハクサイの様子を報告します。


一週間、家を空けたあと、まずは水耕栽培が順調にいっていることに安心しました。

水耕栽培は土での栽培に対して、乾燥の心配がありません。さらに室内で栽培しているために、天候に左右されないので「時間を空けても大丈夫」との余裕がありました。

20180108174535-dcd3306777a31594160c2f8a2ba24d34eecabf30.jpg



しかし、実際は、藻が生えて水が緑色に濁ってしまっていました。見るからに嫌な感じです。においも臭いです。インターネットで調べてみると(以下、※は同ページを参照)
「水耕栽培で発生する藻のことをアオコと言います。アオコの正体は植物性のプランクトンが大量発生したもの」との記述がありました。
大量発生すると水質が悪くなり、悪臭が発生し、植物の肥料の吸収を妨いでしまうようです(※)。

20180108180526-8313274715c97399d70849e1f04b4eb64ca36d41.jpgよくみると根に緑の小さな塊(直径2mm)が所々についていました。糸状になっているものもあります。本来、植物に行くはずの栄養を藻に使われてしまっては意味がありません。昔、小学校の資料室の金魚の水槽が緑色になっていたのを見た衝撃を思い出しました。


すぐさま洗浄です。

20180108180850-7645663b5006c8b04634007ba1de6bd58bdeceeb.jpgアオコが発生した場合はきれいな水に取り換える必要があります。根に絡みついたアオコを指でこすっておとしました。

「どこからともなく生えてくる藻」は、「ガーデニングでいう雑草」と称されて(※)いました。
根の様子が細かくわかることからインテリアとしても楽しめる水耕栽培のデメリットは、水中で病原菌の感染が広がりやすい、というものでした。過湿状態に陥り、カビが発生してしまえば植物が病気になってしまうとのこと(※)ですが、アオコの場合はその一歩手前と言えるかと思います。


アオコが発生しやすい環境に【光】と【栄養分】があるよう(※)です。
なんということでしょう...。ミニハクサイの葉を大きくしようとアルミホイルを使って日光を積極的に当てていたことが、アオコの生息条件を整えてしまっていました。確かに、人間を含めすべての生命に平等に降り注ぐ「母なる太陽」です。
また、先生からいただきました液体肥料を使っていますので、【栄養分】は満点の環境です。ここに水耕栽培の難しさがありました。
しかし、藻も凄い生命力...と思ってしまいました。一瞬の繁殖のチャンスを見逃しません。


次への対策に、二つの条件のうちの一つ、【光】を取り除くことにしました。

20180108205742-63a92bc146f32085d8ce1685418d33ae528b3a1a.jpgアルミホイルを容器に巻き付けて、水溶液から光をブロックします。しかしその分中の様子が見えにくくなるので、水溶液を清潔に保てるようにこれまで以上に細かく見ていきます。


アオコ発生のトラブルはありましたが、葉の生長も見られました。

20180108210645-615748d1bbb7697e76d6f82e3a0e5b55d9367bb5.jpg20180108210854-25de2e7206a4321dd0cb5c93a4c6f7344872288d.jpg一枚の葉の大きさは上の写真で4.9cm、下は6.8cmです。葉の中央は筒状に巻いています。葉が小さくても、枚数が少なめでも、「結球」という遺伝子を持っていることを改めて気づかされました。

20180108212509-df958c132fdba9079ba7b864e2c3bcaef5025b1c.jpg

水耕栽培と土での栽培ともによく観察し最後まで細かく観察していきます。


また本腰入れて学生の生活に戻らなければいけません。弛まずに頑張ります。

それでは、また。失礼します。

コメント

教育学部・井上さん

 あけましておめでとうございます。遺伝の渡辺でございます。残り少ない展開ゼミですが、がんばって下さい。今日は、そういえば、1月7日は、七草でしたか。七草のなずな、すずな、すずしろは、それぞれ、ぺんぺん草、カブ、ダイコンで、アブラナ科です。3/7、半分近くがアブラナ科ということです。ハクサイは、カブと同じ種になります。お正月から少し食べ過ぎだったので、そう考えると、七草で胃を休めるべきでしたね。。。前置きが長くなりましたが、水耕栽培で、ハクサイの中心部が結球をはじめて、葉っぱがたち始めているのは、感動ものです。あと、アオコの発生に対して、適切に対応していますね。根っこには光はいらないので、アルミホイルでのカバーもniceです。

 自分でおかしいと気がついて、それの原因を突き止め、改善を図る。いわゆる、課題研究型の講義をしっかりやっているのがすばらしいです。最終報告の準備をしながら、観察して、食すことを、がんばってみて下さい。このあと、ラボスタッフのオガタくんがコメントを書いてくれると思いますので、参考にして下さい。では、今年もがんばって下さい。投稿も楽しみにしております。


 わたなべしるす




― 追記 ー

 なるほど納豆汁ですか。元が大豆で同じなのに、味噌と納豆、まるで違うものですね。いやあ、発酵を扱う人から言わせれば当たり前のことなのでしょうが・・ あまり微生物には詳しくないので感慨深いです。

 七草、旧暦では青物の出始めで良かったのかもしれませんね。今はハウス物の七草セットがありますが結構な値段がします。自然状態でハコベなどが出てくるのはまだ先ですね。ともあれ、正月を越して胃腸を休め、ビタミンを補給するのは本当体にいいことです。

 私も正月は滅茶苦茶に食べ過ぎで、体が別ヴァージョンになってしまいました。なんとかしたいですね。

 さて、水耕栽培が非常にうまく行ってること、本当に驚きです! まさかここまで来るとは思ってもいませんでした。展開ゼミの金字塔ですね。

 家を空けていても大丈夫だったとのこと、良かったですね。実は水耕栽培の方がずっと水切れに弱いもので。植物が吸水して水位が下がれば、空気中に根が出てしまい、鉢植えの水切れより大変です。アオコの問題はそれよりは大きな問題ではありません。むしろ根を洗う時に傷つけないよう気を使うのは大変です。少しアオコがあっても植物成長は大丈夫です。栄養を奪ったり根を根拠地にして覆ったりしますが、病原菌ではありませんから。

 水中での病原菌の繁殖、これはどの教科書にも書いてあり、水耕栽培の注意になっています。私としては言うほど実際には無いかな、という感触です。

 ともかく対処として水替え、そして予防のために遮光、素晴らしい行動です。もうそれしかない、ですね。アオコ用の薬剤(銅などの重金属が入っている)が金魚鉢用に売られています。金魚鉢は遮光ができませんから。しかし、実物野菜ならともかく、葉を食べる野菜でそれは使えるわけもなく、やはり遮光しかありませんね。よく考えて実践しました。光さえなければ藻や植物プランクトンは増えません。

 ちなみに普通には栄養分というのは炭水化物などのエネルギーを持ったもの、養分というのは植物が使う窒素、リン、鉄、マグネシウムなどの構成元素のことを言います。ところがややこしいことに栄養というのを単純に、元気になるため必要な物、という解釈もあるのです。ですから肥料の話なのに植物栄養学、という表記をすることもあるのです。

 年明け、もう一年生も間もなく終了ですね。貴重な一年でした。うちの娘は人生で一番忙しいと言っていました。この場合は受験勉強を全くしていないからそうなのでしょうが。

 さて、また続きの報告お待ちしています。

 ラボスタッフ・オガタ