東北大学大学院生命科学研究科 植物分子育種分野 渡辺研究室

10.瀬戸際のミックス収穫(農:佐々木美園)

2020年12月21日 (月)

こんにちは、農学部の佐々木美園です。前回の記事でそろそろ初雪が降りそう、と書いた次の日に雪が降り、しかもうっすら積もってしまって驚いています。去年が暖冬だったのもありますが、今年はいつもより寒く感じますね。実家の福島もなかなかに寒いらしく、キビちゃんはストーブと人間の両方で暖を取るために、写真のような新たな技を編み出しました。果たしてリラックスできているのかどうかは謎ですが、バランス感覚がいいことだけは分かりますね。

さて、植物についてですが、この寒さでも2度目の収穫が訪れ、(ぎりぎり)実食することができました!ということで、今回は放置ぎみだったイトウミックスの生長と収穫まで一気に書いていきたいと思います。



〜目次〜


1.生長過程
2.実食
3.まとめ


1.成長過程

20201221222339-a5b60870e4ce2fdf648fd640dbfbe11b80e9eb44.jpg

11月20日 9:23 気温11℃ 26日目

前回まで遡ったところ、イトウミックスの最終投稿が11月2日だったことが発覚しました。およそ一ヶ月半放置していたため、どこをどう取り上げれば良いか分からなくなっています、、。とりあえず、最終的に残した下部の本数が写真になります。この段階ですでに、本葉の形に違いが見られるようになってきました。だいたい縁がギザギザになっているものと丸いものの二種類に分かれています。実際は四月しろ菜、コマツナ河北、小瀬菜大根、CR雪あかり、の4種類の作物が混ぜられているはずなのですが、今のところは2つしか見分けは付きません。葉の形的にギザギザのものがCR雪あかりかな、という感じです。そもそも、かなり適当に間引いているのでもしかしたら2種類しか残っていなかったのかも知れません。(後で全種類残っていたことが分かりますが)

20201221222352-597e7dda0e86bec9c9c9746b78a6d626927c6af1.jpg

12月12日 10:07 気温10℃ 48日目

上の写真はさらに3週間ほど経ってそろそろ収穫時になってきた頃の写真です。本葉が一本あたり2枚ほど出て、3cmほどに広がっています。この段階で収穫しておけば良かったのですが、もう一枚くらい葉が出てもいいのでは、と欲を出してしまい収穫を先延ばしにしてしまいました。

20201221222646-f28cb88fb948c319f4d19a8d38f099b48231897f.jpg

12月20日 9:33 気温0℃ 56日目

欲を張った結果がこれになります。どうやら最近の寒さに耐えきれなかったらしく、しおしおになってしまいました。この日の三日前位からこんな感じだったのですが、しばらくすれば元気になるだろうと思い放置してしまいました。結果、全く元に戻らず、それどころが縁の方から破れ始めていたので、駄目になってしまう前に急いで収穫・実食となりました。予定とは全く違う形での収穫になってしまいましたが、とりあえず食べられただけ良しとしたいと思います。


2.実食

20201221222910-354d6777f52173ba917f6ab189e81a5770cc59b0.jpg

上の写真が収穫したものの全量になります。思っていたより少ないですね、、、残念、、。本当はしっかり観察し、種類ごとに分けて写真を撮りたかったのですが、いじればいじるほど葉がチリチリになっていったので、水洗いをして葉を一枚ずつにバラすのが精一杯でした。かくなる上は味で見分けるしかありません。

さて実食、と行きたいのですが今回もせっかく食べるので、まずはそれぞれの作物の成分を調べてみたいと思います。さすがに品種ごとの栄養成分表は無かったため、野菜としての種類で見ていきたいと思います。なので、四月しろ菜は白菜、コマツナ河北はコマツナ、小瀬菜大根は葉大根、CR雪あかりはカブ(葉)としての成分になります。また、今回も前回同様、比較項目は無機物とビタミンに絞ってみてきます。

エネルギー ナトリウム  カリウム カルシウム リン ビタミンA ビタミンE ビタミンC
kJ mg mg mg mg mg μg mg mg
四月しろ菜 14 6 220 43 33 0.3 99 0.2 19
コマツナ河北 14 15 500 170 45 2.8 3100 0.9 39
小瀬菜大根 25 41 340 170 43 1.4 2300 1.5 49
CR雪あかり 20 24 330 250 42 2.1 2800 3.1 82

 調べた結果がこちらです。全部同じような葉っぱなのに大分違いがありますね!そして悲しいぐらいに四月しろ菜(白菜)が見劣りしています、、。まあ、それはともかくとして詳しく見ていくと、同じアブラナ科でも大分違いが見られます。まず気になったのはナトリウム含量が小瀬菜大根(葉大根)だけ飛び抜けて多いということです。過剰というわけではないのですが、他の作物の倍近く含んでいます。植物によりナトリウムの吸着度に違いがあるのでしょうか?そのほかに目を引くものはコマツナ河北(コマツナ)のカリウムとビタミンA、CR雪あかり(カブ)のビタミンCでしょうか。以前テレビで、コマツナが大量に処分されている、というのを目にしましたが、この栄養価の高さが世に知れ渡れば消費量増大に役立てられないでしょうか?免疫力向上に持って来いなのでは?

 さて、成分の詳細も分かったところで早速食べていきたいと思います。今回は量がとても少なかったので、水で洗った後、何もつけずにそのまま食べました。さて、その味なのですが、意外なほどに違いがありました!案外、味覚で見分けるのも馬鹿にならないですね。

 まず、形で見分けが付いていた、葉の縁がギザギザのCR雪あかりですが、食感、匂いともに甘くないリンゴの皮のような印象です。こんな風に書くとおいしくなさそうですが癖も無く、ベビーリーフとして適しているような印象です。

 次に、縁が丸く、最も大きい葉を食べてみました。すると、舌の奥に残るような独特のえぐみがあります。匂いもなかなかに青臭く、コマツナ河北であるということが分かりました。こんなに小さい葉でもしっかりコマツナの味をしていることに感動しました。

 その後、小さいものを食べていったのですが、見た目には分からずともしっかりと他の2種類も味に違いが出ていました。本当は、四月しろ菜はよく分からなかったのですが、コマツナ河北と小瀬菜大根の癖がかなり強かったため、区別が付いたという感じです。小瀬菜大根も、大根らしい、若干苦いような風味が鼻を抜け、しっかりと大根らしさを持っていました。辛みは無かったため、カイワレ大根の辛みが苦手な人向けかも知れません。違いを意識して食べる、というのはなかなか面白い経験でした。


3.まとめ

 カイワレ大根に続き2回目の収穫を行うことが出来てほっとしています。しかも、一度失敗したミックスだったため、感動もひとしおです。しかし、寒さに負けてしまうとは思いもよらず、自分の危機管理の甘さを感じました。他の作物ではこうならないように気をつけたいと思います。とはいえ、実際に食べる段階まで持って行けたことは喜ばしく、作物らしい見た目や味になるまで育ったことを実感できたのは良い経験で他の作物でも頑張ろうとエネルギーをもらえました。あと2種類も収穫目指して最善を尽くそうと思います!(2,553字)

コメント

佐々木さんこんにちは

 この写真を見ると「ネコは液体」というのが分かりますね。奇特なものです。ただしネコも年を取ると身体機能が衰えてくるらしく、うちのネコも若いうちはぴょんとどこでも跳ねて乗ったものですが、この頃(5歳=人間換算で36歳)は跳ねて失敗し、叩き落ちるという無様なことをやってます。見込み通りに体が動いていないのですね。

 さて今回はベビーリーフのまとめでしょうか。先ずは見分けですが、いずれもアブラナ科であり、似たような双子葉植物なので全てを見分けるのは難しいものです。

 収穫時期には萎れていましたか。まあこの寒さでは仕方ないですね。植物も馴れというものがあり、急激な変化には多少弱いものです。葉も傷むかもしれませんが根の機能が衰え、吸水が追い付かなくなったのでしょう。

 しかしまあ栽培時期としては長いのですが大きさとしてはちょうどくらいになりました。

 収穫物は並べて見やすくしていますね。よく頑張りました。

 そして栄養価! 私も意外な点が多くありました。似たようなアブラナ科なのに差があるものはあるんですね。ハクサイ系はこの表では見劣りするのですが、白い部分が多いので仕方なく、しかしうまみ成分はあるものと思います。そしてこういう表で比べる際にはあまり細かなものは見ず、倍以上違うものに着目しましょう。コマツナは確かに優れていますね。食味がハクサイより劣り使い出がないとされていますが、栄養的にはいいものです。さすがに春の七草のレギュラーメンバーです。ここ最近まで暖かい日が続いて野菜価格が暴落し、廃棄処分になる野菜があったようで、単価の安いコマツナなどはそうだったらしいですね。もったいないことです。しかしこの寒さで野菜も値上がりするかもしれません。

 こういう葉物野菜を何百グラムも食べることはないと思うのですが、鉄で言えば一日必要量は10mg、ビタミンEは6mg、ビタミンCは100mgです。まともに摂ればその多くの部分が摂れそうです。

 さあ今回の報告で一番面白いのが食レポ、味の違いが面白くしかも有用な知見でした。これは来年度からのミックスに使える知見です。意外なことにコカブの食味が良かったのですか。通常捨ててしまうコカブの葉の部分、それが幼植物では繊維も目立たず、ベビーリーフとして有用とは驚きです。コマツナは本来加熱して食べる葉物なので青臭さがあったかもしれません。ダイコンのベビーリーフは高評価のようでカイワレのバージョン違いのようだったとは。ハクサイ系はクセがない、それもまた分かりました。

 ともあれ一つの目的を達成し、そして他はどうなるか...... 実家のビニールハウスの効果が楽しみですね。

 ではまた報告お待ちします。

 ラボスタッフ・オガタ

20201222133209-5d678a37287586b2075d1bd05f23d2b007ef8d3d.JPGこれは二年前に娘の帰省に合わせて作った、豪華二段クリスマスケーキです! といっても型の大きさの違うシフォンケーキを重ねただけですが。クリームも途中でちょっと多いかな、というわけで中途半端になりました。