東北大学大学院生命科学研究科 植物分子育種分野 渡辺研究室

11 白菜の比較 ー生育速度・葉開度ー(農:小島蒼太)

2021年12月23日 (木)

今年最後の投稿(おそらく)になりました。今までタイトルの先頭に①、②とまるで囲んだ数字を入れてきたのですが、11からはそれができないようです。統一感がなくなってしまう... ですが、毎週休まずに記事を投稿できたのは私の自信になっています。さあ、今回も元気にやっていきましょう。

TOPの写真は昨年行った妙義山(群馬県)で撮った写真です。急峻な山々が連なっている景色と光の色合いが神々しいです。

今回はミニ白菜の観察です。間引き後に植え替えと水耕栽培にも挑戦しているため、それぞれの比較をしていこうと思います。(撮影日:12月23日 気温:5.0℃)

 

 

目次


1. 3つの比較

2. 葉開度について

3. まとめ


1. 3つの比較

①通常栽培

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直径(短):31cm・直径(長):34cm・葉の枚数:21枚

 

②植え替え栽培

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直径(短):22cm・直径(長):26cm・葉の枚数:21枚

 

③水耕栽培

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直径(短):17cm・直径(長):20cm・葉の枚数:21枚

 

通常の、植え替えをしていない白菜が一番大きく、次に植え替えをしたもの、一番小さいのが水耕栽培の白菜となっています。植え替えと水耕は鉢を移したときに1度萎凋が起きており、その影響も生育の速度に影響して小さくなっている可能性があります。ただ、植え替えと水耕でも生育に差が出ていることから、植えている鉢自体の大きさが影響を及ぼすより大きなファクターになっているのではないかと考えています。

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面白いのは、3つの直径を比較したときに長径と短径の差が①通常栽培:3cm ②植え替え栽培:4cm ③水耕栽培:3cm と3つとも同じような値になっていることです。3つの写真を比較するとわかりますが、サイズは違うものの3つとも葉のつき方は同じであり、全体的な形は同じです。これは葉の枚数が全て21枚ということからもわかります。葉ができる速度は3つの間で違いはなく、葉一枚一枚の生育速度の違いが全体のサイズの違いを生み出しているということです。


2. 葉開度について

先日、野菜園芸学という授業で「葉開度(ようかいど)」という概念を習いました。葉のつき方には「植物によって新しい葉と一枚前の葉の間の角度は一定」という法則があるらしく、その植物固有の葉の間の角度のことを「葉開度」というとのことでした。ネットを調べると「葉序」とも言うようで、これについては山田和輝君が詳しく観察・説明をしてくれています。

ということで、せっかく習ったものなので私も白菜の葉開度を調べてみようと思います。

まずは、(ほぼ)重なり合っている葉を探します。そして、その葉を0番目、次に出てきた葉を1番目として何番目の葉で重なったか、また重なるまでに何周したかを数えます。そのかかった周数に360をかけ、重なった葉の番号で割ることで分度器がなくとも葉開度を求めることができます。

観察してみると、どの白菜も2周(=720°)、5番目の葉で再び下の葉と同じ位置に重なるようになっていました。つまり、白菜の葉開度は720÷5=144°であると考えることができます。

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濃い青で囲んだ0と5の葉が、今回重なっていると判断した葉。薄い青で囲んだ葉が0が出来てから5ができるまでに生えた葉。出てきた順に番号を振ってある。0から順に追ってみるとほぼ均等な角度で葉が出てきているのが分かる。これは①通常栽培の白菜だが、他の白菜でも同様の結果となった。

ここで、「葉開度 白菜」と検索してみると、トップにヒットしたのが2016年のこの講義の記事(沼澤さん)でした。この記事のコメントで、渡辺先生が「アブラナ科植物の葉開度は2/5ではないか」とコメントしており、その次の記事で沼沢さんもそのようであるということを記録しています。葉開度が2/5というのは、つまり144°ということですので、私の観察結果も過去のものと一致したことになります。


3. まとめ

植え替え当時は萎凋が見られ心配になった白菜でしたが、現在は元気に育っています。3つのサイズの差はあるものの、葉の枚数や全体の形、葉開度に違いはなく、ただ葉の生育速度に違いが出てくるのは面白いなと思いました。

また、葉開度の観察では思いがけず過去の記事ともリンクすることができました。この講義が続けられる限り、データの積み重ねが増えていくのもやはり面白いです。私の記事もいつか誰かの参考にしてもらえるよう、頑張って中身の濃い記事を書いていきたいなと思います。

それではみなさん、良いお年をお迎えください。最終発表の記事作りももぼちぼち進めていきます!(1902文字)

コメント

農学部・小島さん

生長点から葉が形成されるスピードが同じ品種(同じ遺伝的背景)であれば同じであって、播種時期が同じであれば、葉の枚数は同じ。葉の面積だけが変わる。ここまでの発見と、論理の展開はなかなかです。というか、農学部で学んでいるのがよくわかります。では、葉の面積が増えたのは、葉を構成する「細胞」が大きくなったのか、数が増えたのか。今の実験環境では明らかにするのは困難かと思いますが、次なる問題に発展させることができるのではないでしょうか。もちろん、実験環境が整った研究室であればその次ができると思います。そのためにも、一歩先を考えるトレーニングをしてみてはどうでしょうか。

今は野菜園芸というのですか。渡辺の頃は、蔬菜園芸と言っていました。学部の渡辺のノートにも書いてあったような記憶があります。葉序を使っていたような。ここに書いてあるとおりで、過去記事との連携をとっているのがよいですね。この展開ゼミも8年目。その分の蓄積があるわけです。うまく検索すれば、過去に調べていた受講生がいたりします。そんな先行研究に当たること、これも大事なことです。

最後に書かれてあった最終発表の記事作りももぼちぼち」と言うのがよいことです。来年も先手、先手を大事にして下さい。よいお年をお迎え下さい。というか、年末年始の雪の被害の対策をしっかりとして帰省などして下さい。


わたなべしるす